会社を退職した場合、基本的には収入がなくなることが多いと考えます。
退職金があれば、当面の生活費は補填できるでしょう。
しかし退職金がない会社(退職金は法律上支払い義務はなし)や、あるものの金額が少なく、かつ家族を養う場合などは失業手当(正式には基本手当・以下失業手当)が重要な位置づけと言えます。
しかし、自己都合退職の場合、失業手当は約3か月間受給(令和2年10月1日以降2か月となる場合あり)ができません。
これを「給付制限期間」と言います。
実務上は解雇などの会社都合退職の場合、給付制限期間は発生しません。
そこで、着眼点を変えてみましょう。
今回は、以下の3点にフォーカスをあてました。
賢く失業手当を活用しましょう。
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目次
給付制限期間中にできること
まず、失業手当を受給するには、失業の認定を受ける必要があります。
失業の認定とは、失業していることの確認です。
自己都合退職の場合は離職後最初に自宅最寄りのハローワークへ訪れた日から7日間の待機期間があり、さらに約3か月間、失業手当は全く支給されません。
この失業手当が全く支給されない期間を「給付制限期間」と言います。
3か月間も全く収入がないのは困るという方も多いでしょう。
しかし、給付制限期間中に限っては、失業の認定がありません。
よって、内職収入などがあっても、失業手当は減額調整されないということです。
なお、令和2年10月1日以降は2か月に短縮されます。
懲戒解雇などの場合は現行とおり3か月となります。
失業手当受給中に内職収入があった場合
最初にハローワークへ手続きに行った際に、内職収入などがあった場合の申告方法などの説明を受けます。
昨今はリモート化が進み、説明会への出席をためらう方も多いことから、ユーチューブでの動画視聴で説明を行う取り組みがなされています。
申告方法は以下の失業認定申告書を用いて行います。
1枚目、上から2番目の「内職または手伝いをして収入を得た人は、収入のあった日、その額(何日分か)などを記入してください。」の欄に記入する流れとなります。
内職収入の定義としては、
・ 1日4時間以上:就職(失業の認定を先送り)
しかし、1日4時間未満で、かつ実際には内職収入と称していてもそれに専念するためにハローワークの職業紹介にすぐには応じられないなど、他に求職活動を行わない場合は、働く意思および能力がないとみなされ、失業手当が受給できなくなる場合がある点をおさえておきましょう。
また、4時間未満であっても、雇用保険の被保険者となる場合も就職に含まれる点は留意すべきです。
昨今は、厚生労働省がモデル副業で副業禁止の項目を削除したことも話題になりました。
副業は徐々に浸透してくることが予想されます。
失業手当受給と1日の労働時間数の関係はおさえておきたい部分です。
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失業手当受給中に就職した場合
就職の場合は、受給が後ろへずれるということになります。
よって、受給期間(原則、離職日の翌日から1年間)の終了日が先に到達してしまうと、受給できない分が発生してしまう場合があります。
また、就職は現実の収入の有無は問わないことと、週に20時間以上かつ、1日4時間以上の場合、31日以上の雇用が見込まれれば雇用保険の被保険者となります。
そうなると事実上、完全に就職していることから、失業手当は打ち切りとなります。
その場合、受給できたはずの手当が消滅することから、「損をした」と考えてしまいますが、「再就職手当」が整備されています。
再就職手当は、「安定した職業」に就いたことが前提で、失業手当の残日数が3分の1以上残っていることが条件となります。
当然、安定した職業の定義は、主観的な判断になってしまいますが、たとえ、パートで就職した場合であっても、1年を超えて雇用されることが確認できれば、対象となり得ます。
しかし、再就職手当は、3年以内に再就職手当を受けていないことが条件となる点は留意すべきです。
よくある誤りで「再就職手当を受給した場合は、失業手当と併給できるのではないか」質問もありますが、併給はできません。
再就職手当を受給すると失業手当は受給できなくなる点はおさえておきましょう。
そして、再就職手当の受給額の計算は、失業手当の支給残日数に相当する日数に10分の6を乗じた額です。(早期再就職者は、10分の7となります)
早期再就職者とは、失業手当の支給残日数を3分の2以上残して就職した場合です。
また、再就職手当は、独立起業した場合でも待期期間満了後1か月を経過すれば受給可能であることも重要な点です。
その他に、おさえておきたい点で「正社員として就職」であっても、失業手当の受給に関わっていたような「離職前の企業」に再就職するような場合は(容易に就職できることから)支給対象外です。
また、再就職手当は就職後、職場の証明を受理し、1か月以内にハローワークへ手続きしなければなりません。
再就職しても賃金が低い場合
再就職したものの賃金が低いこともあるでしょう。
その場合、「就業促進定着手当」が再就職手当に追加して支給されます。
受給額は、再就職手当の額に10分の4(早期再就職者は10分の3)を乗じた額となります。
申請期限は、再就職して6か月経過した日の翌日から2か月以内となります。
ここまでの内容となると知っている人だけが受給できてしまうこととなる点は否めなせん。
上手に活用していきましょう。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)