付加年金は雑誌やテレビなどで公的年金の受給額を増やすテーマの時には、必ずといっていいほど登場します。
秘策や裏ワザとして取り上げられますが、どのぐらいの秘策や裏ワザなのか検証してみましょう。
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目次
付加年金とは
付加年金は、国民年金第1号被保険者ならびに65歳未満の任意加入被保険者(※)の方が、国民年金保険料に付加年金保険料を上乗せして納めることで、受給する年金額が増える制度です。
国民年金第2号・第3号被保険者は付加年金の対象外です。
したがって、個人事業主・個人事業主の配偶者の方が中心となる制度です。
会社員・公務員、会社員・公務員の被扶養配偶者は対象外になります。
(※)任意加入被保険者:60歳までに老齢基礎年金の受給資格を満たしていない場合や、40年の納付済期間がないため老齢基礎年金を満額受給できない場合などで年金額の増額を希望した人は60歳以降でも国民年金に任意加入できる制度。
申し込み先は、市区役所(町村役場)の窓口です。
付加年金保険料の月額は400円となっており、付加年金保険料の支払いを途中で止めることも可能です。
将来、老齢基礎年金に上乗せされる付加年金の年金額は、「200円 × 付加保険料納付月数」で計算されます。
・ 付加年金を40年間(480月)支払った場合
「200円 × 480月」=9万6,000円(年間の上乗せ額)
・ 付加年金を30年間(360月)支払った場合
「200円 × 360月」=7万2,000円(年間の上乗せ額)
・ 付加年金を20年間(240月)支払った場合
「200円 × 240月」=4万8,000円(年間の上乗せ額)
・ 付加年金を10年間(120月)支払った場合
「200円 × 120月」=2万4,000円(年間の上乗せ額)
・ 付加年金を5年間(60月)支払った場合
「200円 × 60月」=1万2,000円(年間の上乗せ額)
よく、「毎月400円の付加年金保険料を支払ってもらえる年金額は200円だけだと損ですね!」と誤解される方もいらっしゃいます。
しかし、1回400円の保険料を支払うことで、一生涯の年金額に対して、毎年200円ずつ年金が加算されますので、納めた保険料は2年間でモトが取れることになります。
公的年金は終身(一生涯)で支給されますので、公的年金受給後、3年目以降は長生きすればするほど得する制度になっています。
今後、物価が上昇しても付加年金額には反映されない
では、この付加年金のデメリットの部分はないのでしょうか。
老齢基礎年金や老齢厚生年金などの公的年金は、物価の変動により年金額が増額や減額がされる物価スライドが採用されていますが、この付加年金は物価の変動に関係なく、年金額は定額です。
したがって、もし、将来、大きく物価が上昇することがあっても、付加年金の年金額は年間
のままで結果として目減りすることになります。
昨今、デフレにより物価は大きく上昇していませんが、将来は過去の延長線上にあるとは限りません。
将来の物価上昇リスクの心配がある方は、付加年金は加入しない選択肢になります。
次に、将来、障害基礎年金や遺族基礎年金を受給すると、老齢基礎年金は受給できません。
その場合は、付加年金保険料を納付していた場合でも付加年金も受給できません。
付加年金の保険料が掛け捨てになってしまいます。
また、老齢基礎年金の繰上げ支給を選択すると受け取る年金額が減額されますが、付加年金も同じ割合で減額されます。
繰下げ支給を選択する場合には受け取る年金額が増額されますが、付加年金も同じ割合で増額されます。
付加年金保険料は全額が社会保険料控除の対象
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毎月支払った付加年金保険料は国民年金保険料と同じように、保険料の全額が支払った年の社会保険料控除の対象となり、所得税や住民税はわずかですが低くなります。
なお、iDeCo(個人型・確定拠出年金)と付加年金の両方に加入することは可能です。
ただし、個人型・確定拠出年金と付加年金の掛金(保険料)の合計額は個人型・確定拠出年金の掛金の上限額までとなっています。
第1号被保険者の場合のiDeCoの掛金の上限額は月額6万8,000円です。
付加年金の保険料が月額400円になりますので、iDeCoの掛金は6万7,600円が上限となります。
しかし、iDeCoの掛金は1,000円単位の設定ですので、月額6万7,000円がiDeCoの掛金の上限になります。
また、国民年金基金と付加年金の両方に加入できません。
付加年金はどのように活用するのか
付加年金に加入することで、将来の年金額を増額できます。
保険料も手頃ですが、将来の増額される年金額も微々たる金額ですので、秘策や裏ワザとまでは言い難いでしょう。
20代や30代で付加年金に加入し継続することで、上乗せされる年金額もその分だけ増えます。
一方で、物価スライドの対象外ですので、もし、物価が上昇していくことになると、目減りしてしまうリスクもその分だけ背負うことになります。
40代後半や50代であれば、物価が上昇しても目減りしてしまう部分は限られてきますので、40代後半や50代の方であれば検討してみる価値はあるでしょう。
いつでも、付加年金の支払いを途中で止めることが可能ですので、選択の幅は広いと言えるでしょう。
なお、付加年金だけにこだわるのではなく、他の制度と比較して検討することをお勧めします。(執筆者:CFP、FP技能士1級 岡田 佳久)