働き方改革の広がりやクラウドソーシング利用者の増加もあって、フリーランスという働き方の認知度も高まってきました。
新型コロナウイルスの影響で解雇された人も大勢いると思いますが、これを機にフリーランスとして働くことを選ぶ人も現れるかもしれません。
今回は、フリーランスが自分で準備する退職金についてお話しします。
目次
フリーランスには「退職金」がない
フリーランスには、定年退職はありません。
従って、いつ仕事を辞めて「退職(廃業)」するか、いつからいわゆる「老後」の生活をはじめるかは、自分の意思で選べます。
いつ「退職」するにしても、フリーランスは会社員とは違って「退職金」をもらえません。
会社から「退職金」をもらえないフリーランスには、自分で「退職金」を準備するという選択肢があります。
フリーランスが準備できる「退職金」
では、フリーランスはどのような手段で「退職金」を準備することができるのでしょうか。
2つ紹介しましょう。
1. 個人型確定拠出型年金
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「iDeCo(イデコ)」という通称のほうがなじみがあるかもしれません。
「iDeCo(イデコ)」とは、自ら金融商品を選び、掛金を積み立てて運用することで、将来「老齢給付金」を受給できる制度のことです。
毎月の掛金の額は、現在は5,000円から、1,000円単位で自由に決められます。
上限金額は、国民年金の第1号被保険者であれば6万8,000円、第3号被保険者であれば2万3,000円です。
老齢給付金を受給できるようになる年齢は、60歳になった時点で「通算加入者等期間」が何年あるかによって異なります。
気になる人は、イデコ公式サイトをチェックしてみてください。
老齢給付金の受け取り方は、次の3つのなかから選べます。
・ 年金として受け取る
・ 一時金と年金を組み合わせて受け取る
確定拠出型年金という名称ではあるものの、退職金のように一時金として受給することも可能です。
また、一定の要件を満たせば「脱退一時金」として、お金を受け取れますが、基本は途中解約できず、60歳から受け取れます。
口座管理費用は、定額で年間約2,000円~7,000円程度、信託報酬は割安にはなっていますが貯蓄高に対して0.1%~2%程度かかり、投資先によっては運用益がマイナスになる点は注意してください。
2. 小規模企業共済
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「小規模企業共済」は、国の機関である「中小企業基盤整備機構」が運営しています。
自らが掛金を積み立てることで、将来、廃業した際に「共済金」を受給できる退職金制度です。
毎月の掛金は1,000円から7万円まで、500円単位で自由に決められます。
共済金の受け取り方は、次の3つの中から選べます。
・ 分割受取り
・ 一括受取りと分割受取りの併用
ただし、「分割受取り」、「一括受取りと分割受取りの併用」を希望する場合には、定められた要件を満たしていなくてはなりません。
年収が低い場合や、加入期間が短いと損をすることもあるので、ご注意ください。
いずれも節税効果あり
個人型確定拠出型年金、小規模企業共済ともに掛金は所得控除の対象です。
青色申告などの確定申告の際には、掛金を全額「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引くことができます。
その分、課税される所得金額が減るわけですから、それに基いて算出される所得税、住民税の金額が減ります。
つまり、前項で紹介したフリーランスの「退職金」準備には節税効果もあります。
将来の「退職金」を確保しつつ現在の税金を減らせるわけですから、それに基いて算出される所得税、住民税の金額が減る可能性があります。
「退職金」を自分で準備して将来に備える
「ねんきん定期便」が届いたら、「自分は老齢年金をいくらもらえるのか」をかならず確認するようにしましょう。
もしかしたら、そこに印字されている年金額を見て「たったこれだけ?」と、がっかりするかもしれません。
しかし、それはあくまでも現時点での予定額です。
いずれにしても国民年金だけでは将来が不安という人は多いことでしょう。
収入が不安定な傾向にあるフリーランスであれば、なおさらです。
むやみに不安がる必要はないかもしれませんが、何事も備えあれば憂いなしです。
「退職金」を準備するために自分が利用できる制度にはどのようなものがあるのかを知っておくことは大切です。(執筆者:社会保険労務士 嵯峨 朝子)