生命保険の死亡保険金は、どのくらい必要だと思いますか。
被保険者が専業主婦の場合は、「収入があるわけではないし」と少額設定している人も多いのではないでしょうか。
今回は、専業主婦の死亡保険金を決めるときの考え方について、くわしくお話します。
一家の稼ぎ頭の死亡保険金額については、別記事でまとめましたので参考にしてください。
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目次
主婦が亡くなった場合の「損失」とは何か
死亡保険金額は、
このことは、被保険者が稼ぎ頭であろうと専業主婦であろうと、変わりません。
では、主婦が亡くなった場合の損失とはどのようなものでしょうか。
金銭的損失をA家とB家のケースで試算
家族構成や年代の異なる2家族を例に、計算してみましょう。
妻:40代(専業主婦)
夫:55歳 年収550万円(会社員)
子:2名(19歳、17歳)
生活費:30万円/月
住宅ローン:15万円/月(あと5年で完済)
妻:30代(専業主婦)
夫:30歳 年収360万円(自営業)
子:2名(4歳、2歳)
生活費:15万/月
賃貸家賃:10万/月
【試算条件】
・対象期間は「末子22歳(一般的に大学を出て就職をする年齢)」まで
・物価の上昇、生活費の増減については、考慮しない
・税制・保障制度などは2020年6月時点
1. 収入の変化
専業主婦のため、「収入が減る」という形での損失はありません。
パートなどで収入がある場合は、当然その分がなくなります。
2. 生活の中での出費の変化
家事全般を担っていた主婦が亡くなった場合、その分を誰が担当するのかという問題が生じます。
家族の状況によっては、外食・家事代行などの外注に頼ることとなるため、新たな出費が必要です。
※以下、実家などには頼らないものと仮定します。
子が大きい場合
A家の場合は、子が大きいため、家事の分担が可能です。
また、目をかけ手をかける育児期間は終了しているため、夫もこれまで通り勤務できるでしょう。
外食が増える可能性は高いですが、その分家で作る分の食材費が減るため、家計を揺るがすほどの変動はなさそうです。
子が小さい場合
B家の場合は、子がまだ小さく、常時目も手も離せない状態です。
保育園費用
認可保育所の保育料は、収入や自治体によって異なります。
夫が健在で安定した収入があるため、収入条件による優遇措置は適用されないことが多いでしょう。
・認可保育所の保育料:長子は無償、末子は1万6,000円~約3万円(3歳より無償)
・無認可保育所の保育料:1人につき約5万~8万円程度(うち利用料の一部が無償)
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家事代行サービスを使った場合
例えば、
・ 掃除、洗濯など家事全般を月2回
頼んだ場合は、次のような費用がかかります。
・ 家事代行:3時間×月2回 約2万5,000円/月
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3. 遺族年金
専業主婦が亡くなった場合でも、国からの遺族年金が支給されます。
遺族基礎年金(国民年金)
【対象者】子のある配偶者
※子とは、19歳未満の者、あるいは20歳未満で障害年金障害等級1級・2級の者
【支給金額】
・ 配偶者:78万1,700円(年額)
・ 子加算:子1人につき22万4,900円(第2子まで)、第3子以降は、1人につき7万5,000円
遺族厚生年金(厚生年金)
専業主婦になる前に会社勤めをしていた期間がある場合は「遺族厚生年金」も支払われます。
【対象者】
・ 妻
・ 子、孫(19歳未満の者、あるいは20歳未満で障害年金障害等級1級・2級の者)
・ 55歳以上の夫、父母、祖父母
※支給開始は60歳~ ただし、夫は遺族基礎年金受給中に限り、遺族厚生年金も合わせて受給できる
つまり、夫が55歳未満でも19歳未満の子がいる場合は、子に対して支給されます。
【支給金額】
金額については、加入期間・報酬額によって異なります。
4. その他の収入
(1) A家
・ 夫の勤務先からの弔慰金(勤務年数などによって金額は変わります)
・ 社会保険からの埋葬料 約5万円(加入している健康保険によって異なります)
(2) B家
・ 国民健康保険からの葬祭費 約5~10万円(住所のある市区町村によって異なります)
その他、個別で加入している年金保険や貯蓄保険など。
損失-収入=必要死亡保険金額
専業主婦が亡くなった場合、家計における「金銭的な損失」はほとんどありません。
家計を担う夫が健在のため収入に影響がないどころか、妻の遺族年金によって収入増になるケースもあります。
(1) A家
妻の死亡保障は、ほとんど必要ありません。
葬式代などに備えて、100万円程度の死亡保険金があれば十分です。
(2) B家
状況によっては、家事や育児に関する出費が、月10万~15万円程度増加します。
遺族年金が月額約6万5,000円程のため、差額を補う程度の死亡保障があると安心です。
月5万円×12か月×(7歳-2歳)※=300万円
末子の小学校入学まで※の期間に使う300万円程度を下限として考えましょう。
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専業主婦は、死亡保障より「介護保障」が重要
専業主婦の場合、金銭的損失が最も大きいのは「動けない状態」になることです。
病気やケガの治療が長く続いたり、後遺障害で思うように動けなくなったりした場合でも、家事の外注費負担が増える可能性が高くなります。
死亡保障を減らした分、後遺障害などに対応した「介護保険」をしっかりと準備しておきましょう。(執筆者:仲村 希)