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ITバブルとは
今回は、コロナ相場が続く株式相場をITバブル時と比較しながら、その動向について解説していきます。

ITバブルは、1990年代末期に米国を中心に起こりました。
「インターネット環境の普及によるe-コマースの拡大で今後の人・物・金の流れが劇的に変化し、今までの常識が一変する」との期待からインターネット関連銘柄への投資が活発化し、「ドットコム」と付く企業の株が大きく買われたことに起因します。
しかし、当初は「ITバブル」と呼ばれてはおらず「IT革命」として相場は急上昇に転じました。
さらに、米連邦準備制度理事会(FRB)が1998年から1999年にかけて低金利政策を打ち出し、政策金利を75ベーシスポイント引き下げました。
これにより、米国経済はかろうじて景気後退局面を回避できました。
これが株式市場をさらに上昇させるドライバーとして働き、特に顕著な値動きを示したのが米NASDAQ総合指数であり、1,000ポイント前後で推移していた価格から約2年間で5,000ポイント超と時価総額が5倍まで一気に拡大しました。
しかし、その後、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げを契機に株式市場は急落し、NASDAQ総合指数は1,000ポイント台まで下落しました。
コロナショックによる情報通信革命
今回のコロナショックにより、人の流れが停止してしまったことを受け、各企業は人の移動を必要としないサービス形態への変化を余儀なくされました。
在宅勤務による事業効率化、テレビ会議で人との接触を必要としない職場、この流れに対応できない企業の多くは倒産に追い込まれてしまいました。
このような急速な事業モデル・生活様式の変化に対応するため、情報インフラ関連企業への高い需要が継続されました。
特に、顕著なのがGAFAを中心としたIT大手の動向であり、ビッグデータの大量蓄積による事業モデルが今後の世界景気のカギとなっています。
また、企業間の契約もペーパレス化させ、クラウド上で契約できるサービスを展開させる米国企業「ドキュサイン」や「弁護士ドットコム」などの企業が注目されています。
コロナショックの終焉はいつ来るのか

今回のコロナ相場の終焉はいつ来るのか、多くの投資家が予測を立てているものと思われます。
この際に重要なのが、IT革命がITバブルと呼ばれるようになったきっかけを振り返ることであり、それによってある程度の予測ができるのではないかと言われています。
IT革命の終焉は何をきっかけに迎えたのか。
それは、前述に述べたように米連邦準備制度理事会(FRB)が金利を上昇させたことにあります。
当時、FRBは低金利を維持し、金融緩和を継続していました。
それが一転して資金回収に動いた瞬間にバブルは弾けました。
つまり、
ということを押さえておかなければなりません。
このことから、今回のコロナ相場の終焉はFRBの動向次第とも言えます。
FRBは、2022年末までは当面低金利状態を維持するとしているので、その近辺で最も雲行きが怪しくなる可能性があります。
しかし、FRBはすぐに金利を上昇させるのではなく、まずは市場との対話を進め、金融緩和の縮小がどれほど市場に悪影響を及ぼすのかを推し量ります。
このシグナルが出た際に最も危険な局面になるという可能性を考えておいた方がよいと言えます。
今回の金融緩和は、米国だけではなく世界全体がコロナ対策で行っている過去最高規模です。
米国だけが緩和縮小の準備ができたとしても、新興国も同様の回復ペースを維持できるかは不透明です。
そのため、米国がいざ利上げに踏み切った場合の新興国へのダメージを想定するのが難しいと言えます。
また、この終焉には、ワクチン開発の進捗具合も大きくかかわってくるものと思われます。
これが開発・普及しない限りはコロナの脅威が去ることはないからです。
反対に、この
ということにも注意が必要かもしれません。
また、IT革命時と同様の相場が形成されるとするならば、コロナ関連銘柄以外の値動きは弱く、この急激な環境変化に伴うチャンスを逃してしまう可能性があります。
銘柄選別時には、
・IT革命時にはどういった銘柄が買われたのか、それ以外の銘柄の株価はどういった値動きをしていたのか
を正確に把握するよう心掛けておいた方がよいことでしょう。
ITバブル時の相場様相に類似する
今回のコロナ相場はITバブル時の相場様相に類似する点が多数あり、その終焉は同様の理由で起こる可能性が十分に考えられます。
また、今回のコロナ相場が本当に当時と類似相場を形成するならば、買われる銘柄と買われない銘柄の差は大きくなる可能性があるので、投資のタイミングと離脱するタイミングは慎重に検討するようにしましょう。(執筆者:現役証券マン 白鳥 翔一)