社会保険料は給与の約15%であり、年に一度の改定や固定賃金の変更による大幅な報酬額の変更時のみ保険料が変わります。
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業で報酬が下がってしまった場合、以前の報酬額に対して徴収されては手取り支給額が少なくなり生活するのが大変です。
そこで、現在は、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業で著しく報酬が下がった場合に、健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額を翌月から改定する特例改定の手続きができるのです。
今回は、特例改定について解説していきます。
目次
標準報酬月額の特例改定とは
新型コロナウイルス感染症の影響により休業し、休業によって報酬が著しく下がった方が一定の条件に該当する場合に、健康保険料・厚生年金保険料の標準報酬月額を通常の随時改定(4か月目に改定)によらず、特例により翌月から改定可能になるのが特例改定です。
ただし、本特例措置は同一の被保険者について複数回の申請をすることはできません。

対象者
次の(1) から(3) のすべてに該当する方が対象です。
(1) 新型コロナウイルス感染症の影響による休業(時間単位を含む)があったことにより、令和2年4月から7月までの間に報酬が著しく低下した月が生じた方
(2) 著しく報酬が低下した月に支払われた報酬の総額(1か月分)が、既に設定されている標準報酬月額に比べて2等級以上下がった方
通常の月額変更と違い、固定的賃金(基本給、日給等単価等)の変動がない場合も対象です。
(3) 本特例措置による改定内容に本人が書面により同意している
被保険者本人の十分な理解に基く事前の同意が必要です。(改定後の標準報酬月額に基づき、傷病手当金、出産手当金及び年金の額が算出されることへの同意を含む。)
対象となる保険料
令和2年4月から7月までの間に休業により報酬等が急減した場合に、その翌月の令和2年5月から8月分保険料が対象です。
令和3年1月末日までに届出があったものが対象ですが、遡及しての給与計算の複雑化や年末調整等への影響を最小限とするため、できるだけ速やかに提出しましょう。
標準報酬月額の特例改定 Q&A
ここからは特例改定についてQ&A方式で説明します。
Q1. 休業のため、給与を支給していない場合や支援金(新型コロナウイルス感染症対応休業支援金)を受ける場合でも、特例改定の対象となるのか
A. 給与を支給していない場合や支援金を受ける場合でも特例改定の対象です。
実際の給与支給額に基き標準報酬月額を改定することとなり、報酬が支払われていない場合には、今回の特例改定に限り、最低の標準報酬月額(健康保険は5.8万円、厚生年金保険は8.8万円)として改定します。
なお、支援金は給与支給額には含みません。
Q2. 固定的賃金に変動がない場合でも特例改定の対象となるのか
A. 今回の特例改定に限り、固定的賃金の変動の有無に関わりなく要件に該当する場合は改定の対象です。
Q3. 通常の随時改定と特例改定による改定月が同月になるような場合(両方の届出が可能な場合)、特例改定が優先することになるのか
A. 特例改定は本人が同意したうえで届出した場合に行われるものであるため、いずれかが優先するものではありません。
通常の随時改定と特例改定の要件をいずれも満たしている被保険者については、いずれかの届出を選びます。
随時改定とは
随時改定とは、被保険者の報酬が、昇(降)給等の固定的賃金の変動に伴って大幅に変わった時に標準報酬月額を改定することです。
Q5. 休業が回復した場合には、届出が必要か
A. 特例改定後に、固定的賃金が変動し、随時改定の対象となる場合には、随時改定(月額変更届)の届出が必要です。
7月または8月に特例改定が行われた方には定時決定が行われないため、今回の特例改定に限り、休業回復した月から継続した3か月間の平均報酬が2等級以上上昇した場合には、固定的賃金の変動の有無に関わりなく、必ず随時改定(月額変更届)の届出が必要です。
休業回復した月とは
実際の報酬支払の日数が17日以上となった月のことです。
該当しているかを確認
新型コロナウイルス感染症の影響による休業があったことにより、令和2年4月から7月までの間に報酬が著しく低下した月が生じた方については、社会保険の標準報酬月額の特例改定に該当している可能性が高いと言えます。
特例の改定ですので、事業主さんが把握していない場合もあります。
社会保険料は会社と被保険者が折半して負担していますので、会社にとっても有益な情報です。
標準報酬月額が下がることにより保険料が下がりますので、ぜひ確認してくださいね。(執筆者:社会保険労務士 望月 葵)