コロナ禍で実施される11月3日(当選発表は日本時間4日未明)の米国大統領選挙は、経済が失速したタイミングで行われる予想しにくい選挙となりそうです。
前回2016年の選挙も番狂わせと言われましたが、今回も接戦が予想され、現時点では5つのスイングステート(予想が難しい州)が勝敗を左右する可能性が大きくなってきました。
世論調査を中心とした現状の支持率と、優勢と報じられているバイデン候補が当選した場合の株式相場を解説します。
目次
2020年11月大統領選挙に向けた現状
8月18日に始まった民主党大会において、正式にバイデン氏が大統領候補、ハリス氏が副大統領候補に指名されました。
これを皮切りに、共和党の現職トランプ大統領との残り3か月足らずの選挙戦が本格化します。
対抗馬同士のテレビ討論会なども予定され、世界のリーダーとも言われる米国大統領を選ぶ戦いがラストスパートに入ります。
では、現在の事前予想はどうなっているのでしょうか。
現状は現職の共和党トランプ大統領が苦戦
米国大統領選挙は市民が「選挙人」を選び、その選挙人が一般投票の結果を受けて後日あらためて投票する仕組みです。
現状では民主党候補のバイデン氏が有利と言われており、現職の共和党トランプ大統領が苦戦しています。
その支持率の状況は、世論調査を中心とした「270 TO WIN」というサイトで確認できます。

選挙人の数は538と決められていて、その過半数である「270」が当選基準です。
これが、このサイト名に270の数字が入っている所以です。
8月10日時点では民主党 (Democrat) 278、共和党 (Republican) 169 となっていますね。

しかし、接戦 (Toss-up) と見られている州の動向によって、まだ分からないというのが実情です。
そのどちらに振れるか分からない州を「スイングステート」と呼び、このサイトでは5つを挙げています。

※メーン (ME)、ネブラスカ (NE) は勝者総取り方式ではなく得票率で按分する
スイングステート3州の状況
このうちの選挙人の数の多い3州の事前予想を見てみましょう。
フロリダ州

フロリダ州は2008年、2012年と民主党が獲った州でしたが、前回2016年は共和党トランプ氏が獲得した正にスイングステートです。
現時点ではバイデン候補が5ポイントのリードとなっています。
選挙人も多く、コロナ感染の広がっている州でもあり、ここを獲ったほうが当選に向けて大きく躍進することになりそうです。
オハイオ州

オハイオ州は工場の広がる地域で、前回2016年にトランプ氏が獲得した、熱狂的な支持者が多いと言われる岩盤州の1つでした。
それが、現時点ではバイデン氏にリードを許す展開になっています。
しかし、トランプ氏がリードしているというCBS Newsの世論調査結果もあり、接戦が続いています。
ジョージア州

黒人公民権運動の指導者でもあったマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの故郷としても知られるジョージア州は、5月から全米で続くブラック・ライヴズ・マター抗議行動の影響もあり、共和党岩盤支持州でも1ポイントのリードに留まっているスイングステートです。
こういった前回2016年にトランプ氏を支持した州が、世論調査においてはいくつもが民主党にリードを許しているのが実情です。
しかし、2016年には民主党クリントン候補が10月末の世論調査で12%も引き離していたミシガン州において、共和党トランプ候補が勝利したということも事実です。
では、事前の世論調査がなぜ当たりにくいのでしょうか。
世論調査が当たりにくい米国大統領選挙の仕組み
前述の通り、選挙人の270人以上を獲得することで当選が決まる米国大統領選挙においては、事前の世論調査が外れることがよくあります。
この要因は「勝者総取り方式」にあります。
「勝者総取り方式」とは、二者択一の選挙で、勝ったほうがその州の選挙人全員の数を獲得できるというものです。
2州を除く48州がこの方式を採用しています。
前回2016年の選挙では、クリントン候補が総得票数ではトランプ候補を上回っていたものの、総取り方式によって敗北したのです。
バイデン候補が当選した場合の株式相場
では、トランプ大統領再選ではなく、民主党のバイデン候補が当選した場合に株式相場はどのように反応するのでしょうか。
バイデン候補の数ある公約の中に、個人も法人も増税するということが掲げられています。
民主党は党の方針は「大きな政府」であり、富の再分配を標榜しています。
バイデン候補が副大統領を務めていた時期に成立させた皆保険制度「オバマケア」は、富の再分配を象徴する法案でした。
これらの増税公約は言うまでもなく株式相場には悪影響です。
しかし、このコロナ禍にあって就任後すぐには実行されないものと見られていて、
と言われてます。
10月末までは乱高下が予想される
コロナ対策で大きく信頼を失ったと言われるトランプ大統領ですが、11月までにコロナワクチンが完成すれば「スイングステートの1つであるフロリダ州に優先的に投入する」とも報道されています。
今のリードを容認することなく大統領権限を行使するであろうトランプ大統領の今後の動きや、バイデン候補の失言の可能性などまだまだ接戦続きであることは変わりません。
このような状況下で個人が取れる最大の対策は、討論会などの直接対決によって
ことです。
今年最大の政治イベントを通過すれば、コロナ禍が残っていたとしても日本株式相場においても年末ラリー(株価上昇)が期待できます。
選挙までの乱高下と終了後の年末ラリーをうまく捉えて、難しい舵取りだった2020年を笑って終われるようにしたいものです。(執筆者:銀行・証券・保険業界に精通するシニアプライベートバンカー 中野 徹)