長年にわたって夫の両親の介護をしてきたが、夫の両親の相続では遺産を一銭ももらえなかった。
従来はこのようなケースが多く、相続における親族間の紛争の一因となっていました。
今回の相続法の改正により、このようなケースでも「特別寄与料」として遺産の一部をもらえるようになりました。

目次
「特別寄与請求権」とは
妻が夫の両親の介護をするのは、どこの家庭でもよく目にする光景だと思います。
改正前の民法では、たとえ介護で被相続人に貢献したとしても相続人でなければ寄与分の主張は認められませんでした。
そのため、介護に従事した家族とそうではない家族との間で不公平感が生じることになり、遺産分割でもめる場合がありました。
しかし、今回の相続法改正により、相続人ではなくても貢献に応じた寄与分が認められることになりました。
「特別寄与者」になれるのは誰なのか
「特別寄与者」として「特別寄与料」を請求できるのは、以下の要件を満たす者です。
(ア)被相続人の相続人でない親族であること
親族とは、配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族を言います。
夫の両親の介護をしてきた妻は、この要件を満たします。
(イ)被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたこと
相続人を対象とする寄与分制度とは異なり、特別寄与の制度は「療養看護」を対象としていることがポイントです。
「特別寄与」が認められる「療養看護」としては、要介護2以上で、介護に1年以上従事していたことが1つの目安です。
(ウ)無償の療養看護や労務の提供により被相続人の財産が維持又は増加したこと
妻が夫の両親の介護をする場合、通常は無償で行われていますし、それによって本来受けるはずであった有料の介護サービスを受けずに済んでいますので、通常は財産の維持又は増加も認められます。
「特別寄与料」の金額はどのくらいか

では、「特別寄与者」にあたるとされた場合には、どのくらいの金額を請求できるのでしょうか。
「特別寄与者」が寄与分として受け取れる金額は遺産分割協議で決めます。
遺産分割協議において
です。
目安となる金額は「療養介護の日当分 × 日数」を基準として計算します。
多くの事案では、数百万円程度になることでしょう。
「特別寄与料」を請求するには証拠が重要
「特別寄与料」を認めてもらうには、被相続人の療養介護で貢献したことの証明が必要です。
証拠として、次のものを残しておくのがよいしょう。
・ レシートや領収書(薬代やおむつ代、タクシー代など)
・ 手紙・メールなどの記録
家庭裁判所への申立には期限がある
「特別寄与料」の制度は、2019年7月からスタートしました。
「特別寄与料」の請求を家庭裁判所に申し立てる場合には期限があり、相続開始及び相続人を知った日から6か月以内又は相続開始の時から1年以内にしなければなりません。
そのため、相続が開始した場合には、すぐに請求をする準備を始めるようにしましょう。(執筆者:弁護士 山本 静人)