これまで何度か任意後見制度について記事にしてきました。
しかしながら、2020年8月現在においてコロナ禍がいまだ終息する気配を見せないなかで、離れて暮らす親に対する心配を減らすという意味で、もう一度そのメリットを書いておきたいと思います。

目次
任意後見制度とは
任意後見制度は、判断力があるうちに本人が誰を自分の後見人にするかを決め、あらかじめ本人と後見人となる者との間で財産管理や身上監護について任意後見契約を結んでおく法律行為です。
互いの意思が一致すればよいので、後見人は親族でも知り合いでも、司法書士や行政書士などの専門家でも構いません。
任意後見制度の後見人を誰にするか
後見人は、何かあった際にすぐ動ける距離にいることが大切です。
後見人を子にする場合
そうは言っても、子がいる高齢者が専門家に任意後見を頼むのは子に対する遠慮が働くのではないでしょうか。
具体的には、
・ 毎月の費用が発生する(移行型であれば見守り契約時も)ので、その分、子に残せる財産が減っていく
といったものです。
後見人を専門家にする場合
しかし、子が遠く離れた場所に住んでいて戻ってくる可能性がまずないのであれば、近くの専門家との任意後見契約について真剣に検討してみるのもよいかもしれません。
これまではそうだったかもしれません。
ところが、今年のお盆はゆっくりと里帰りどころか、ちょっと親の様子を見に行くことすら憚られる事態となってしまいました。
政府は「GO TOキャンペーン」を謳っていますので、実際にきちんと対策をしたうえでの移動は問題ないのでしょうが、万一への不安や近隣の目が気になることなどから、親も来いとは言えずに、子の方も行くのをためらってしまいます。
そして、最大の問題はこのような状況がいつ終わるかを見通せないことです。
このような場合に専門家との任意後見契約が非常に役に立ちます。
任意後見契約は本人の判断能力が衰えた際にすぐに後見人となる対応ができるよう、見守り契約(定期的に後見予定人が様子を見に行く)とセットにすることが多いです。
後見の専門家であれば、
と言えます。
必要に応じて親族に様子を報告することも、親族からの問い合わせに答えることも業務の一環です。
電話してもずっとつながらないといった緊急事態の恐れがある際にも、親の近くにいる後見(予定)人に連絡をすれば親族よりもずっと早く様子を見に行くことが可能です。

専門家への依頼は保険の役割も果たす
一般的に任意後見の報酬は法定後見人のそれと大きく変わらず、月額3万円前後です。
見守り契約の場合には数千円~2万円程度といったようにさらに安くなります。
ただし安価の場合見守りは電話が基本ということもあります。
子が遠方にいる親としては、一種の保険としての役割も果たすことになります。
さらに、必要業務をこなし、親族にきちんと連絡をとる専門家が親の近くにいることで、必要な事務手続きのためだけに子がしょっちゅう実家に帰るといった負担も軽減され、結果的に交通費の節約にもつながります。
子に心配をかけないために任意後見制度を採り入れる
コロナ禍はいつかは収まることでしょう。
しかし、コロナほどではなくともいつ何時親子間の行き来ができなくなる事態が発生するかは誰にもわかりません。
親として、むしろ子に心配をかけないために任意後見制度を積極的に検討してみてください。(執筆者:行政書士 橋本 玲子)