新型コロナウィルス感染症による社会の混乱は、未だ治まらず、雇用情勢が今後さらに悪化することが予想されます。
政府は、雇用の維持を図るため、
・ 企業には、雇用調整助成金の上限額や給付率の引き上げ
・ 失業者には、再就職支援のための雇用保険の失業給付について、受給期限や給付日数を延長する
などの特例措置が取られています。
本記事では、コロナの影響で失業を余儀なくされた場合の失業給付金の特例措置についてまとめました。
目次
対象者
「新型コロナウィルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律」に基づき、次の対象者は失業給付金の所定給付日数が延長される特例措置が取られています。

※令和2年6月12日以後に、失業給付金の所定給付日数を受け終わる方が対象となります。
※就職困難者は対象となりません。
所定給付日数の延長
先ほどの対象者に該当する者は、特例措置として、次の原則の表の日数から60日延長されます。
一般被保険者

特定受給資格者・特定理由離職者(雇止めの場合のみ)

ただし、特定受給資格者または特定理由離職者(雇止めの場合に限る)で、次の者は延長される日数が60日ではなく、30日となります。
・ 所定給付日数が270日の者:離職時の年齢が35歳以上45歳未満、かつ被保険者であった期間が20年以上の者
・ 所定給付日数が330日の者:離職時の年齢が45歳以上60歳未満、かつ被保険者であった期間が20年以上の者
受給期間の延長について
失業給付金の受給期間は原則、離職日の翌日から1年間です。
ただ、今回の新型コロナウィルス感染症により、令和2年2月25日以降に、以下の状況の方は、受給期間を最大3年間延長の手続きを取ることができます。
・ 新型コロナウィルスに感染している疑いがある症状の方(発熱、倦怠感、呼吸困難など)
・ 感染拡大防止の観点からハローワークへの来所を控える方
・ 新型コロナウィルス感染症の影響で子の養育が必要となった方(小学校や義務教育学校などに通学する者に限るなどの一定の要件あり)など
これらの事情により、
つまり、受給期間が最長で離職日の翌日から4年を経過する日までになります。
給付制限の特例
次に該当する者は、「特定理由離職者」として給付制限がなくなり、支給開始時期が早まります。

以上の特例措置を踏まえて、基本手当の給付額を計算していきたいと思います。
基本手当の計算方法
例題に沿って給付額を算出していきましょう。
例題
被保険者:Bさん
年齢:55歳
退職理由:コロナウィルスの影響による倒産(特定受給資格者に該当)
離職日:令和2年7月31日(緊急事態宣言全国解除後)
被保険者であった期間:8年(所定給付日数240日)
被保険者期間6カ月間の賃金総額:300万円
原則の計算
・ 賃金日額 = 300万円 ÷ 180日 = 1万6,666円
・ 基本手当日額 = 1万6,666円 × 50%(給付率)= 8,333円
・ 基本手当総額 = 8,333円 × 240日 = 199万9,920円
新型コロナウィルス感染症による延長給付

・ 延長給付分の基本手当 = 8,333円 × 60日 = 49万9,980円
・ 原則の総額に延長給付を加えた合計額 = 249万9,900円
また特例延長給付は、積極的に求職活動を行っている方が対象となります。
次の方は、対象とならない場合があるのでご注意ください。
注意点
1~4のいずれかに該当する場合は、対象となりません。
1. 所定の求職活動がないことで失業認定日に不認定処分を受けたことがある場合
2. やむを得ない理由がなく、失業認定日に来所しなかったことにより不認定処分を受けたことがある場合
3. 雇用失業情勢や労働市場の状況などから、現実的ではない求職条件に固執される方など
4. 正当な理由なく、公共職業安定所の紹介する職業に就くこと、指示された公共職業訓練を受けること、再就職を促進するために必要な職業指導を拒んだことがある場合
参照:【東京労働局】求職者の皆さまへ抜粋 ページ下部の「対象とならない場合
「もしも」に備えて給付金の計算を
新型コロナウィルス感染症による失業者の数も日々増え続けています。
9月末で企業への雇用調整助成金の特例措置が期限を迎えることもあり、今後より一層失業者の数が増えることが予想されます。
今後の社会情勢がどうなるかわかりませんが、失業給付金について知っていて損はありません。
もし自分が失業した際、どのぐらい給付金が受給できるか計算してみてください。(執筆者:社会保険労務士 須藤 直也)