年金が減る一方で、生活保護世帯よりも少ない額ですが、これ以上減らされたら生きていけません。
この先まだ減らされるのでしょうか。

年金の減額はこの先も続いていきますが、今後の日本の経済状況によっては、年金の減額が実施されない年度もあります。
また生活保護より年金が少ないという欠点を補うため、手続きすると受け取れるお金や、無料で利用できるサービスを、うまく活用した方が良いと思います。
この回答についての詳しい解説は、次のようになっております。
目次
公的年金は「賦課方式」で運営されている
公的年金(老齢年金、障害年金、遺族年金)の財源は、
「国庫負担(税金)」
「年金積立金の取り崩し」
の、3種類になっております。
ただ財源の大部分(7割程度)は、現役世代から徴収した保険料になるため、公的年金は現役世代から集めた保険料を、その時点の年金受給者に配分するという仕組みで、成り立っています。
こういった子供から親への仕送りのような仕組みは、「賦課方式」と呼ばれています。
賦課方式で公的年金を運営する場合、年金受給者が増え、仕送りする現役世代が減っていく局面では、現役世代から徴収する保険料を引き上げしないと、バランスが取れなくなります。
実際のところ、現役世代から徴収する保険料は、年金制度を維持していくために、何度も引き上げされました。
年金額は保険料で賄える範囲内になる
これからも継続的に、現役世代から徴収する保険料が引き上げされると、例えば会社員であれば、給与の手取りが減っていくため、生活が苦しくなります。
そこで2004年に法改正を実施し、現役世代から徴収する保険料に、上限を設定するとともに、この上限に達するまで、毎年少しずつ保険料を引き上げていきました。
また「マクロ経済スライド」という制度を導入し、年金受給者に配分する年金が、この上限で賄える範囲を超えそうになったら、年金額を減らすようにしました。
これを家計に例えるなら、収入(現役世代から徴収する保険料)の伸びが止まるので、この範囲内で生活できるように、支出(年金)を減らすような感じです。
2004年から始まった保険料の引き上げは、国民年金は2017年4月で、厚生年金保険は2017年9月で終わったため、現役世代から徴収する保険料は上限に達しました。
そのため今後は保険料の引き上げではなく、マクロ経済スライドによる年金の減額で、年金制度を維持していく必要があります。
年金を減額する「スライド調整率」
公的年金は賃金や物価の変動率を元にして、毎年4月に金額が改定されるため、年度が変わると年金額が変わります。
そのため従来だと、例えば賃金や物価が上昇していれば、その上昇率に応じて、4月から年金額が増えました。
しかしマクロ経済スライドが導入されてからは、賃金や物価の上昇率から、現役世代の減少や平均寿命の伸びを元に算出された、「スライド調整率」が控除されるため、この分だけ年金額が減ってしまいます。
つまりマクロ経済スライドによる年金の減額は、スライド調整率によって実施されます。
ただスライド調整率による年金の減額は、永遠に続くわけではなく、年金財政の均衡を図ることができると見込まれたら、終了する予定になっております。
また当初は2005年度から、スライド調整率による年金の減額が始まり、2023年度で終了する見通しでした。

年金の減額を実施できない年度もある
例えば賃金や物価の変動率がマイナスの場合には、スライド調整率による年金の減額を、実施できないというルールがあります。
また2005年度以降の日本は、このような状況が多かったため、スライド調整率による年金の減額を、ほとんど実施できませんでした。
実際のところ、スライドの調整率による年金の減額を実施できたのは、2015年度(0.9%)、2019年度(0.5%)、2020年度(0.1%)だけになります。
このように3回だけしか、年金の減額を実施できなかったので、現在の年金額は当初の想定より、かなり高くなっています。
そのためスライド調整率による年金の減額は、当面は続いていくと予想され、2019年に実施された年金財政検証では、2046年度~2058年度という終了の目安が示されました。
ただ今後の日本の経済状況によっては、上記のように賃金や物価の上昇率から、スライド調整率を控除できないので、スライド調整率による年金の減額は、毎年必ず実施されるわけではありません。
住宅扶助や医療扶助に近いものを探してみる
生活保護を受けると定められた額の範囲で、「住宅扶助」が支給されるため、家賃の負担が軽減されます。
また「医療扶助」が支給されるため、診療などを受けた時に、原則として自己負担がありません。
この辺りが年金受給者と生活保護を受けている方の、大きな違いではないかと思います。
また年金受給者が住宅扶助や医療扶助に近いものを利用できれば、両者の格差を縮められる可能性があります。
住宅扶助に近いものとしては、「特定優良賃貸住宅」や「高齢者向け優良賃貸住宅」があります。
なぜこれらが住宅扶助に近いのかというと、家賃の一部が補助される場合があるからです。
また無料か低額な料金で、一時的に診療を受けられる、全日本民主医療機関連合会が実施している「無料低額診療事業」は、医療扶助に近いと思います。
これらの他にも手続きすると受け取れるお金や、無料で利用できるサービスがあります。
住所地の自治体のウェブサイトなどを確認してみましょう。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)