ここ数年、スルガスキームやシェアハウス「かぼちゃの馬車」、レオパレス問題などサブリースによるトラブルが散見されました。
サブリース業者が借地借家法を盾に、賃料の減額や解約などオーナーに不利な契約を行っていたことが原因です。
プロであるハウスメーカーやサブリース業者が素人であるオーナーを騙して契約していたわけです。
この問題を受け、6月12日、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(管理業法)」が参院本会議で可決、成立しました。
今回は、賃貸住宅管理業法成立で何が変わるのかについてお話しいたします。
目次
サブリース契約とは

まずは、サブリースについて簡単に説明させていただきます。
例えば、皆さんもご存知の大手ハウスメーカーでアパートを建築するとします。
その際に、管理委託契約にするか、サブリース契約にするかを選ぶ必要があります。
管理委託契約の場合
管理委託契約は、
・ 家賃の集金
・ クレーム対応
などについて、賃貸管理会社に委託する契約です。
管理料として、集金家賃の3%~7%程度を賃貸管理会社に支払います。
サブリース契約の場合
サブリース契約では、オーナーとサブリース業者がマスターリース契約で、一括借り上げをしてもらいます。
一般的には、相場家賃の8割~9割で一括借り上げの家賃を設定します。
サブリース業者は、入居者に転貸(サブリース)し、入ってくる家賃と一括借り上げの支払い家賃との差額が儲けとなります。
そのため、賃貸管理が面倒なサラリーマン大家さんや高齢者には非常にメリットのある契約と言えます。
サブリース問題とは
メリットの多いサブリース契約ですが、昨今ではトラブルが非常に多くなっています。
それは、プロであるサブリース業者が借家人となっているにもかかわらず、借地借家法が適用されることが原因のひとつです。
かぼちゃの馬車のシェアハウス問題では、30年間家賃減額はしないという覚書を書いていましたが、いきなり減額通知があり、最後は支払い不能となりました。
サブリース業者が破たんすれば、本来得られるべき家賃を得られないことになります。
他にも、オーナーからの解約は建て替えなど相当な理由がないとできないので、サブリースの解約は難しいといった問題もあります。
契約書はサブリース業者が作るので、業者に有利な条件で書かれていることが多いです。
サブリース業者に有利な条件の例
例を挙げると、
・ オーナー側からの解約は6か月前、早期解約したい場合は違約金何か月分
・ 2年ごとに家賃の見直しをします
といったものがあります。
営業の言葉を信じてトラブルとなるケースも

本来は、オーナーがきちんと契約内容をチェックしないといけません。
しかし、営業の段階では「家賃の値下げはない」と言われており、「サブリース業者に特に問題ないのでサインだけしてもらえばいいですよ」と言われれば簡単にサインしてしまうと思います。
しかし、数年後に家賃の減額を言われ、解約しようと思ったら6か月後、違約金が必要となってトラブルが発生するわけです。
賃貸住宅管理業法成立で何が変わる
今回の賃貸住宅管理業法案のポイントは、このサブリース問題への対策と賃貸住宅管理業者登録制度の法制化です。
賃貸住宅管理業者登録制度では、賃委託を受けて賃貸住宅管理業務を行う事業を営む場合は、国土交通大臣の登録が義務付けられます。
管理戸数が一定規模未満の者は対象外(200戸未満を予定)となり、5年ごとに更新が必要です。
そして、登録業者については、
2. 管理受託契約締結前の重要事項の説明
3. 財産の分別管理
4. 定期報告
が義務付けられています。
業務管理者の配置については、賃貸管理経営管理士または管理事務に関し、6年以上の実務経験者となっています。
登録業者は、これらの要件を満たす賃貸住宅管理業者ということで信頼度が増します。
サブリース契約などの管理受託契約においても重要事項の説明が義務付けられることで、「説明を聞いていない」ということがなくなります。
不利な条件についてもきちんと説明を行わないといけませんので、サブリース業者も無茶な内容の契約は難しくなると思います。
賃貸住宅管理業法の施行によって、これまでのようにサブリース業者有利な取引が減るといいですね。(執筆者:山口 智也)