近年の日本では、毎年のように大型台風などの災害が発生し、自宅の浸水や倒壊などの損害を受ける方もいます。
災害による損害は所得税の雑損控除の対象となりますが、住宅や家財の損害額がその時価の2分の1以上になる場合、所得税の税額控除を受けることも可能です。
本記事では災害減免法による所得税控除の内容と、適用要件について解説いたします。

目次
災害減免法による税額控除の要件
災害減免法による税額控除を適用する際は、以下の要件をすべて満たす必要があります。
・ 災害を受けた年分の所得金額が1,000万円以下
・ 損害額が住宅と家財の価額の2分の1以上
・ 雑損控除を適用していない
雑損控除とは、災害や盗難被害を受けた際に適用できる所得控除です。
所得金額が1,000万円を超える方や、損害額が2分の1以上にならないケースでは雑損控除の適用を検討してください。
また災害によって受けた住宅や家財に対し、補てんする保険金がある場合は、補てんされた金額は損害額から除いて計算します。
税額控除対象となる住宅・家財の種類
災害減免法による税額控除の対象となる財産は、住宅および日常生活に通常必要な家庭用動産(家電製品、衣服、書籍など)をいい、納税者と生計を一にする親族が所有する財産も含まれます。
一方、別荘や書画・骨董など日常生活で必要と思わる程度を越える財産は、対象外となりますのでご注意ください。
なお生計を一する親族でも、その年の総所得金額等が48万円を超えている人の所有財産は、税額控除の対象財産に含められません。
税額控除による減額される所得税
災害減免法による税額控除は、適用する人の合計所得金額によって控除内容が異なります。
たとえば所得金額が500万円以下の方は、所得税が全額免除されます。
災害減免法による税額控除の控除内容
・ 合計所得金額:500万円以下 → 所得税額を全額免除
・ 合計所得金額:500万円超~750万円以下 → 所得税額の2分の1
・ 合計所得金額:750万円超~1,000万円以下 → 所得税の額の4分の1
一方で、雑損控除を適用した場合、控除しきれなかった金額があれば、翌年の所得からも差し引くことも可能です。
雑損控除の計算式
次のいずれか多い方を雑損控除の金額とする。
・ 差引損失額-総所得金額等×10%
・ 差引損失額のうち災害関連支出の金額-5万円
※「災害関連支出の金額」とは、災害により住宅、家財などを取壊したり除去する際に支出した金額などをいいます。
差引損失額の計算
損害金額(※)-保険金などにより補てんされる金額=差引損失額
※災害等に関連したやむを得ない支出の金額を含みます。
制度を利用したら「確定申告手続き」必須

災害減免法による税額控除を適用する際は、確定申告手続きが必要です。
所得税の申告書にその年の所得内容と、被害の状況および損害金額を記載し、所轄税務署に申告書を提出します。
また確定申告期間は、翌年2月16日から3月15日です。
被害を受けた年に、その年分の申告書は提出できませんのでご注意ください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)