賃貸住宅に居住し続けている場合、設備が故障したり性能が不足してくる場合があります。
持家であれば自身の判断で修理や設備のグレードアップといった判断を行えます。
しかし他人の所有物である賃貸住宅の場合、入居者が費用を負担して修理や更新を行ってしまっても良いのでしょうか。
またその場合の費用は誰が負担するのでしょうか。
今回は賃貸住宅の設備の劣化に伴う費用負担の取り決めである必要費と有益費および造作買取請求について解説していきます。

目次
必要費と有益費とは
必要費は賃貸物件の機能を維持するための支出で、備え付けの給湯器やエアコンなど最初からあった設備などの維持・管理に要する費用を指します。
必要費は入居者が仮に負担したとしても、大家さんに直ちに費用を請求ができます。
有益費とは畳をフローリングに変えるなどを大家さんの了承を得て自身の要望に沿うよう変更する際等に負担する費用となります。
これらの設備は入居者が所有権を有しているため費用を請求はできませんが、退去時に更新した設備の価値が残っている場合、大家さんに設備の買取を要求することができます。
このように、大家さんに請求できる費用には一定のルールがあり、必要費は直ちに支払を受けられます。
有益費については退去時に有益費償還請求権に基づき費用を請求することになります。

造作買取請求について
大家さんに取り付けた設備の費用を請求する仕組は有益費償還請求権と造作買取請求の2つがあります。
造作は入居時には存在せず、エアコンや温水洗浄便座などの取り外し可能な設備を大家さんの了承を得て導入することで、造作によって設置された設備は退去時に造作買取請求に基づいて大家さんに買取を要求できます。
有益費償還請求権との大きな違いは、造作買取請求が有効である場合は履行の義務がある点です。
しかし、どちらの権利も任意規定となっており、賃貸契約において義務を負わない様に特約が加えられている場合がありますので契約時や更新時などには注意して確認を行うようにしましょう。
勝手に手を加えるのは危険
賃貸住宅は退去時に元の状態に戻す「原状回復」が基本とされています。
賃貸物件に長年住み続ける際は設備の故障などのトラブルや、より生活しやすいように設備をグレードアップしたいと考えた際、勝手に手を加えてしまうと退去の際に修繕費として多額の費用が発生する恐れがあります。
これらの費用の取扱は賃貸住宅に居住を続けて行く上での大切な知識となります。
賃貸住宅の設備の追加や更新を行う場合は、大家さんの了承を受けた上で有価物や造作物の取り扱いや有益費償還請求権と造作買取請求が行使できるかを確認おくことをお勧めします。(執筆者:菊原 浩司)