「求職活動中の保育料を失業手当だけでは賄えない」
という方、求職活動関係役務利用費という制度をご存じでしょうか。
求職活動関係役務利用費とは、失業手当の受給期間中に、教育訓練や就職の面接などにより子供を保育施設に預けた際の費用を一部補助してくれる制度のことです。
本記事では、育児が求職活動の負担とならないための制度である「求職活動関係役務利用費」について解説します。

目次
受給対象者
(1) 保育等サービスを利用した日において受給資格者等(※補足1)であること
(2) 雇用保険の待期期間(※補足2)が経過した後に、保育等サービスを利用したこと
補足事項
受給資格者等 → 基本手当の受給資格者、高年齢・特例・日雇受給資格者を指す。
待期期間 → 離職後にハローワークへ離職票の提出と求職の申込みを行ってから、収入のなかった日を通算した7日間をいう。
また、この待期期間が終わってからでないと、失業手当は受給できない。
注意点
1. 受給資格者等とされる期間
次の期間を過ぎている場合は、受給資格者等と認められません。

2. 待期期間経過前の保育利用費の取扱い
待期期間が経過した後の利用費のみ支給対象となります。
支給対象となるのは、対象の求職活動を行った日に、保育等サービスを利用した場合に限られます。
続いては、対象となる求職活動について見ていきましょう。

対象となる求職活動等
対象となる求職活動は、面接等と教育訓練に分けられます。
それぞれ対象となるものを見ていきましょう。

以上を踏まえて、実際の支給額を計算してみましょう。
まず計算に入る前に、計算する上でのポイントを見ておきましょう。
計算のポイント
・ 支給額は、実際に本人が負担した保育サービス料の80%
・ 1日当たりの上限額は6,400円(保育等サービス料の上限8,000円 × 80%)
・ 保育等サービスの利用料が「日払い」か「月額払い」で計算方法が異なる
・ 支給対象となる日数は、面接等は「15日」、教育訓練「60日」分までが上限
保育等サービス利用費の算出方法
次は保育等サービス利用費の算出方法です。
1. 日払いの場合
保育等サービスを利用した1日のサービス利用費の80%を、1日ごとに計算します。
サービス利用費が8,000円を超える場合は、「8,000円 × 80%」が支給額となります。
2. 月額払いの場合
保育等サービス利用費=12万円 ÷ 30日 × 20日=8万円
支給額=8万円 × 80%=6万4,000円
最後に支給申請時の提出書類について見ていきましょう。

提出書類
支給申請の際は、次の(1) ~(4) および(5) または(6) の書類が必要となります。
必須書類
(1) 受給資格者証等
(2) 保育等サービス事業者が発行する保育等サービス費用にかかわる領収書
(3) 保育等サービス事業者が発行する「保育等サービス利用証明書」
(4) 対象となる子の氏名、本人との続柄を確認できる住民票記載事項証明書等
(5) 面接等の行った場合:事業主の証明を受けた「面接証明書」等の求人者との面接等を行ったことを証明する書類
(6) 教育訓練を行った場合:訓練実施者の証明を受けた「教育訓練受講証明書」等の訓練を受講したことを証明する書類
上記の書類に加えて、必要に応じて次の書類を提出してください。
その他必要書類
(7) 領収書を発行後、利用費の一部が返還された場合:保育等サービス事業者が発行する「返還金明細書」
(8) 地方公共団体等の第3者から利用費の補助を受けた場合:その額を証明する書類
申請日
申請日については基本手当の受給資格者の場合と高年齢・特例・日雇受給資格者の場合があります。
基本手当の受給資格者の場合

高年齢・特例・日雇受給資格者の場合
保育等サービスを利用した日の翌日から4か月以内に住居所の管轄のハローワークへ提出します。
キャリアアップに活用しましょう
・ 待期期間を経過した後の保育等サービス利用費が対象となる
・ 対象となる求職活動は、求人者との面接や教育訓練だけでなく、「個別相談が可能な企業説明会」や「公的機関からの求職活動の指導」なども含まれる
・ 申請先は、住居所の管轄のハローワークになる
現在の日本において、少子高齢化により、女性や高齢者などが活躍する場面が増えてきています。
しかし未だ、育児が求職活動の妨げになっているのが現状です。
そういった方を金銭面でサポートしてくれるのが、今回解説した「求職活動関係役務利用費」です。
ぜひ1人でも多くの方が活用して、キャリアアップにつなげていただければと思います。(執筆者:社会保険労務士 須藤 直也)