株の売却利益は譲渡所得の対象ですが、FX取引や仮想通貨取引で発生した利益の課税所得の区分は、譲渡所得ではありません。
またFX取引と仮想通貨取引の所得区分も違いますので、確定申告する際は所得区分誤りにご注意ください。
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FX取引の利益は分離課税の雑所得

FX取引(外国為替証拠金取引)により発生した利益は「先物取引にかかわる雑所得等」として、分離課税の雑所得に該当します。
金融商品取引業者以外と行っている一部の取引については、総合課税の雑所得の対象です。
通常の雑所得は、分離課税ではなく総合課税の対象で、給与所得など他の所得と合計した金額に対して所得税が課されます。
それに対し先物取引にかかわる雑所得等は、税率が固定されており、所得税15.315%(※)・住民税5%です。
※所得税には復興特別所得税も含まれます。
先物取引にかかわる雑所得等内の損益通算は可能ですが、先物取引にかかわる雑所得等以外の所得との損益通算はできません。
しかし損失額は一定の要件を満たすと、翌年以後最大3年繰り越すことができ、繰り越した損失額は、翌年以後に発生した先物取引にかかわる雑所得等の金額から控除できます。
仮想通貨取引の売却益は総合課税の雑所得
仮想通貨取引で発生した所得は、原則総合課税の雑所得に該当します。
総合課税の所得税の最高税率は45.945%(※)ですので、FX取引と同じ利益を得ても所得税を3倍納めなければならないケースもあります。
※復興特別所得税も含めた税率です。
損失が発生した場合、雑所得同士の損益通算は可能ですが、給与所得など他の所得との損益通算はできません。
また損失額を翌年に繰り越すことはできないため、FX取引よりも税制上の扱いは厳しいです。
なお、仮想通貨取引を、生計を立てるための事業として行っていることが、客観的に明らかであると認められる場合については、雑所得ではなく事業所得の対象となります。

FX取引と仮想通貨取引の税金の取り扱いが異なる理由
FX取引と仮想通貨取引の利益に対しての所得区分が異なるのは、FX取引に関する税金関係の法整備が行われたためです。
現在のFX取引の課税区分は、平成24年1月1日以後に行われたFX取引が対象です。
ただFX取引が始まった当初は、仮想通貨取引と同じ総合課税の雑所得として課税されていました。
また雑所得は、雑所得以外の9種類ある所得区分のいずれにも当たらない所得が対象となります。
仮想通貨取引のような新しい取引で発生した所得は、従来の所得区分に当てはまらないため、総合課税の雑所得に区分されています。
この先仮想通貨取引が一般化し、税金関係の法整備が行われれば、FX取引のように分離課税となるかもしれません。
しかし法律が改正されるまでは、現行制度に基づき総合課税の雑所得で申告してください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)