新型コロナウイルスの現在感染者数は、2020年8月前半にピークを迎えた後に減少傾向になっています。
一方で9月に入ってから増加傾向にあると報道されたのが、新型コロナウイルスに関連した経営破綻です。
新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから半年ほどが経過し、感染拡大の初期に実施された政府や自治体の支援策による資金繰り緩和効果が薄れてきたからのようです。
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目次
雇用保険に加入しているか否かで生活が変わる
もし、勤務先が経営破綻した場合には、雇用保険に加入しているか否かで生活が変わってくると思います。
雇用保険に加入している場合には、次のような名称の失業手当を受給できる可能性があるからです。
・ 65歳以上の方を対象にした「高年齢求職者給付金」
後者の高年齢求職者給付金は、
1年以上だと「50日分」
になるため、同じ勤務先で長く働いてもその分だけの金額が増えるわけではないというデメリットがあります。
一方で、高年齢求職者給付金は、原則65歳から支給される老齢厚生年金や老齢基礎年金と併給できるため、併給調整について心配する必要がありません。
また、一時金で一括支給されるため、手続きのためにハローワークへ行く回数が基本手当を受給する場合より少なくてすみます。
会社都合による退職にはさまざまなメリットがある
経営破綻などの会社都合による退職であっても、自己都合による退職と同じように、離職票の提出を行った日から通算して7日の「待機期間」があります。
しかし、会社都合による退職の場合、待機期間が満了した後に3か月程度の給付制限がないため、自己都合による退職よりも早期に基本手当や高年齢求職者給付金を受給できます。
すぐに受給できるというだけで大きなメリットだと思いますが、会社都合で退職した場合にはさらに次のようなメリットも生じます。
・ 基本手当の給付日数が最大で330日(自己都合で退職した場合は最大で150日)になる
なお、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年5月26日以降に会社都合で退職した場合には給付日数が60日(一部は30日)延長されるという特例措置が実施されているため、該当する方にはチェックしていただきたいところです。
短時間労働者でも雇用保険に加入する場合がある
法人(株式会社など)か個人かを問わず労働者を1人でも雇っている事業所は、農林水産の事業の一部を除き、労働保険(労災保険、雇用保険)に加入する必要があります。
また、パートやアルバイトなどの短時間労働者でも次のような加入要件を満たしている場合には、本人や事業主の希望の有無にかかわらず雇用保険に加入します。
加入要件 (1) 1週間当たりの「所定労働時間」が20時間以上である
所定労働時間とは実際の労働時間ではなく、雇用契約書や就業規則などに定められたあらかじめ働くことが決定している労働時間です。
加入要件 (2) 31日以上の雇用見込みがある
期間の定めなく雇用される場合や雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めが明示されていない場合には雇用保険の適用対象です。
また当初は31日以上の雇用見込みがなくても、その後に31日以上雇用される見込みになった時にはその時点から雇用保険の適用対象です。
加入要件 (3) 学生ではない
通信、夜間、定時制の学生や休学中(事実を証明する書類が必要)の学生は、雇用保険の適用対象です。
また、卒業見込証明書を有する学生が、卒業する前に就職し、卒業した後も同一事業所に勤務する予定の場合には雇用保険の適用対象です。
以上の通りですが、雇用保険の加入要件はシンプルであるため、これを満たしているか否かを判断するのは決して難しくはないと思います。
雇用保険の保険料は社会保険より遥かに安い
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給与から控除されている雇用保険や社会保険(健康保険、厚生年金保険)の保険料は、給与の金額を基にして算出します。
社会保険料の事例1:月給10万円の場合
たとえば、月給(基本給+各種手当)が10万円の場合、ここから控除される2020年9月時点の保険料は次の通りです。
・ 健康保険(40歳以上で東京都の協会けんぽに加入):5,713円
・ 厚生年金保険:8,967円
社会保険料の事例2:月給20万円の場合
月給(基本給+各種手当)が20万円の場合には、ここから控除される2020年9月時点の保険料は次の通りです。
・ 健康保険(40歳以上で東京都の協会けんぽに加入):1万1,660円
・ 厚生年金保険:1万8,300円
これらを比較してみると、雇用保険の保険料は健康保険や厚生年金保険の保険料より遥に安いということが分かります。
また、保険料が安いにもかかわらず、失業手当以外の保険給付(たとえば育児休業を取得した時の「育児休業給付金」)も充実しているため、雇用保険はかなりコスパの高い保険だと思います。
雇用保険に遡って加入できると失業手当がもらえる
また、給与から雇用保険の保険料が控除されていたことが給与明細や賃金台帳などで確認できた場合には、これより前まで遡って加入できます。
退職した後でも遡って加入できますので、上記の加入要件を満たしている場合には、まずは退職した会社に対して加入手続きを依頼してください。
勤務先がこれに応じなかった場合には、「雇用保険の被保険者となったこと(被保険者でなくなったこと)の確認請求(聴取)書」という書類をハローワークに提出します。
これらにより遡って雇用保険に加入できたけれども、給与から雇用保険の保険料が控除されていなかった場合には、2年分の保険料を納付しなければなりません。
ただし、雇用保険の保険料は前述の通り決して高くはないので、加入後に失業手当を受給できれば納付した分を取り戻せると思います。
なお、給与明細などを破棄してしまって自分が雇用保険に加入していたのかが全く分からない場合には、「雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票」という書類をハローワークに提出すると雇用保険の加入記録が分かります。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)