固定期間選択型とは、特約により借入当初の3年や5年、10年の金利を固定する住宅ローン金利です。
金利の固定期間終了後は変動金利に自動的に移行しますが、特約再設定手数料を支払うと再び金利を一定期間固定できます。
金利の固定期間中は、変動金利並みの低金利で返済していけます。
しかし固定期間選択型を選ぶときに、借入当初の金利だけに目を向けるとのちのち返済負担が家計を圧迫しかねません。
本記事では固定期間選択型を選ぶときに、注目すべきポイントを解説します。

目次
固定期間選択型は「優遇金利」と「基準金利」を確認しよう
固定期間選択型を検討するときは、利息計算に用いられる適用金利だけでなく、優遇金利と基準金利も確認する必要があります。
優遇金利とは、適用金利を決めるときに基準金利(店頭金利)から差し引かれる金利です。
例えばauじぶん銀行の10年固定金利は、0.55%です。
しかしこの値は、基準金利2.50%から当初期間引下げ幅(優遇金利)1.950%を差し引いて算出されたものです。
しかし固定期間終了後は、金利の優遇幅が0.8%と半分以下になります。
固定期間終了後は、優遇金利の値が変わり適用金利が上昇して返済負担が変わる可能性があります。

固定期間終了後の返済額をシミュレーション
固定期間の終了後の返済額がどれほど変わるのかを、auじぶん銀行の住宅ローンで確認してみましょう。
借入条件は、以下の通りです。
・ 借入額:3,500万円
・ 借入期間:35年(元利均等方式)
固定期間特約中の返済額は、以下の結果となりました。
・ うち利息負担:1万6,042円
・ うち元金充当額:7万5,589円
上記の利息負担と元金充当額は、返済第1回目の金額です。
返済が進むほど、利息の割合が減って元金充当額が増えていきます。
固定期間終了後に変動金利に移行した場合の返済額
固定期間終了後に変動金利に移行する場合の適用金利は、基準金利2.341%から優遇幅である0.8%を差し引いた1.541%です。
計算すると、固定期間が終了し変動金利に移行した第1回目の返済額は、以下の通りとなりました。
・ 利息負担:3万2,974円
・ 元金充当額:7万215円
金利の固定期間中と比較して、返済額が増えただけでなく利息負担は2倍になりました。
つまり借入当初より金利が上昇していなくても、金利の固定期間が終了すると返済負担と利息負担が増えてしまいます。
合計利息負担額を他の金利タイプと比較
もし返済10年目から返済終了まで金利がまったく変動しなかった場合、固定期間選択型の利息負担は合計で695万2,320円です。
同じ借入額と返済期間でauじぶん銀行の変動金利型住宅ローン(金利0.41%)を組んでいた場合は257万7,259円で、固定期間選択型の半分以下です。
しかし、35年間金利が全く変動しないというのは現実的ではないため、返済15年目から以後5年ごとに0.4%ずつ金利が上がっていくと想定して利息負担を再計算します。
同条件で、全期間固定型であるフラット35(金利1.31%)を借り入れた場合も含めて、利息額の合計を確認しましょう。
・ 変動金利型:422万5,651円
・ 全期間固定型:865万3,530円
返済途中で金利が上昇した場合、固定期間選択型の利息額がもっとも高くなりました。
同じく金利変動の影響を受けている変動金利型の利息額よりも、2倍以上高い金額を支払わなければなりません。
ちなみに返済10年目で再び金利を10年間固定した場合の利息額は、874万4,533円です。
よって、返済10年目で変動金利を選択した場合と利息額はほぼ変わりません。
固定期間選択型を選んでも良い人
固定期間選択型が適しているのは、最初に設定した固定期間の終了後に残債を一括返済できる見込みのある方です。
先程のシミュレーションの条件でいえば、固定期間の10年が終了したあとに約3,032万円の残債を一括返済できる人は、固定期間選択型を選んでも良いと考えられます。
ただし金融機関によっては、固定期間終了後も優遇金利があまり変わらない場合もあります。
固定期間選択型で借り入れるときは、金利の固定期間終了後の返済負担や利息合計額のシミュレーションを確認したうえで慎重に判断しましょう。(執筆者:品木 彰)