今回は、調整局面で上下を繰り返す米国市場の動向と、景気敏感株へのリバランスが終了するかを判断するうえでのポイントについて解説していきたいと思います。
目次
調整局面を続ける米国株式市場
現在、米国株は調整局面をなかなか抜け出せない状況であり、特にハイテク株で構成されているナスダック総合指数の値動きに注目が集まっています。
今回の下落の原因であるのがソフトバンクグループによる米国株売却、米国企業の内部者による自社株売りです。
これが落ち着いたと思った矢先に起こったのが米国によるファーウェイへの輸出規制強化です。
これにより、ハイテク株売り及びドル売りが加速してしまったことが相場の足かせとなってしまっています。
その反面、現在、バリュー株が見直される動きが起こっていて、セクター別騰落率を見ても銀行株などの景気敏感株が上昇し、上位に並んでいる状態が続いています。
景気敏感株へのリバランス終了を読み解くカギ

1. ナスダックとS&P500のネットポジションの動向に注目
こういった状況下で重要となってくるのが
ナスダックとS&P500の需給関係を読み解く際に重要なのが、それぞれの投機的ネットポジションの推移であり、
ことが必要です。
このネットポジションは1週間ごとに更新されており、現状ではナスダックの売りポジションが大幅に積み上がっている状況が1か月ほど続いています。
その反面、S&P500のネットポジションは買い越しに転じており、このことからハイテク売り・バリュー株買いの構図がまだ見て取れません。
そのため、このネットポジションが逆転し、
ので、その動向には注目が集まるものと思います。
また、ネットの売りが増えているということは、ここから下げても買い戻しが入りやすくなるので、下げはよほどの悪材料がない限り限定的となる可能性が高いです。
このネットポジションの変化は、機関投資家が最も重視する指標であるため、今後欠かさずに見ておく癖をつけておいた方がよいと言えます。
2. 為替の動向に注目
ハイテク株の上昇局面では、「ドル高=グロース株買い」の構図が何度も見え隠れしていたため、このローテーションの終了には為替市場全体がドル高となる必要があるものと思われます。
そこで見ておかなければならないのが、ドル円の値動きはもちろんですが、ドル指数の値動きにも注目しておく必要があります。
ドル指数の構成上位は、ユーロ60%、日本円13%、ポンド10%ほどであり、ユーロの影響を受けやすいという特徴はありますが、全体のドルの推移を把握するために重要な指数だと言えます。
そのため、今後のハイテク株買いの動きを予測するうえでもこのドル指数の値動きには注目しておく必要があります。
さらに、ドル指数の構成比の大部分をユーロが占めていることから、ユーロのネットポジションの推移も確認しておく必要があります。
現在このユーロのネットポジションは買いに大きく積み上がっているため、このリバランスの初動を確認できた場合にドルが一気に買われる可能性も視野に入れておく必要があります。

3. 中国市場の動向に注目
ナスダックへの資金回帰を予測するうえで重要なのが、ナスダックと連動性の高い株式市場を見つけることであり、その動向に注目しておく必要があります。
そこで見ておかなければいけないのが、中国のハイテク株式市場である深セン総合指数の値動きです。
現在の世界経済の中心は米国と中国であり、米中関係の問題も考えるとその動向には注目しておく必要があります。
特に、2020年に入ってからのナスダックと深セン総合指数の連動制は非常に高く、ある興味深い特徴が見受けられます。
その特徴は、深セン総合指数が先に動いて、ナスダックがその後を追って値動きをするという点にあります。
従って、深センが上昇に転じた場合にはナスダックが追随して上昇する可能性が高くなりますので、その動向には今後注目しておいたほうがよいことでしょう。
注目点を参考にマーケットの変化を予想する
現在のセクター別騰落率やナスダックのネットポジションを見ると、まだローテーションが続いている可能性は非常に高く、その変化を今後確認する必要があります。
しかし、ネットポジションは遅れて出てくるデータであるため、その変化を事前に察知するには、ドル指数の値動きや深セン総合指数のトレンド転換を確認したほうがよいものと思われます。
現状の相場環境は決して悪くなく、その変化は近いうちに来る可能性が考えられるので、上記の注目点を参考にマーケットの変化を予想していくことが重要とります。(執筆者:現役証券マン 白鳥 翔一)