近年、SBI証券や楽天証券など取引手数料の安いネット証券の人気が高まっています。
これから投資を始める人は問題になりませんが、これまで別の証券会社を使っていた場合にはネット証券に移行するのにいくつかのステップが必要です。
今回の記事では、筆者も実際に行った証券会社の乗り換えのステップと注意点を紹介します。
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目次
証券会社を乗り換えるメリットとデメリット
証券会社を乗り換えることにどのようなメリットがあるのかと言うと、
「投資信託などの取扱商品の種類が変わる」
「複数の証券会社に分かれていた資産をひとまとめにできる」
「インターフェースが使いやすいものになる」
などの点が挙げられます。
もちろんこれらのメリットの有無は乗り換え先の証券会社にもよりますので、実際にその証券会社を使っている人やネットなどからよく情報収集をする必要があります。
また、デメリットとしては
「移管に手数料がかかることもある」
「一部の銘柄は移管できない」など
が考えられます。
証券会社を乗り換える2つの方法
いま現在取引している証券会社から別の証券会社に乗り換える場合、その方法には大きく次の2つがあります。
【乗り換え方法1】保有している株式を売却してしまう
非常にシンプルなやり方ですが、現在保有している投資商品を全て売却して現金化してしまい、全てを引き出して別の証券会社での取引にまわしていくという方法です。
1~2銘柄しか持っていない場合などにはそこまで手間ではないかもしれませんが、銘柄数が多くなるほど面倒に感じられるかもしれません。
また、売却のタイミングが最適かどうかの問題もあるので、今が売却時期として適切ではないと思われる場合には次にあげる株式移管の方法を取るほうがベターです。
【乗り換え方法2】保有している株式をそのまま別の証券会社に移管させる
現在保有している株式を「移管手続き」することで別の証券会社に移す方法で、証券会社を乗り換える際にはこちらの方法の方が一般的です。
手続きの方法はどの会社でも大差はなく、移管のための書類を移管元の金融機関に提出します。
ただし、この移管手続きにはいくつかの重要な注意点があるので、次項で1つ1つ解説していきます。

移管手続きの詳細と注意点
株式移管をする場合の手続きは、移管元(現在使っている証券会社)から移管のための依頼書を取り寄せ、必要事項を記入して提出(返送)することで完了します。
この依頼書は取引している口座が一般口座であれば「口座振替依頼書」、特定口座であれば「特定口座内上場株式等移管依頼書」という名前の書類です。
この手続き自体は単純ですが、株式移管に関しては次の6つの注意点があります。
【注意点1】移管できない銘柄がある
ETFやREITを含む国内上場株式および外国株式のは移管が可能ですが、単元未満株式や整理銘柄、監理銘柄、移管先の証券会社で取り扱いのほとんどない銘柄など一部の商品は移管できないことがあります。
移動させたい銘柄が移管可能かどうか不明な場合には担当者に確認してみてください。
【注意点2】移管手続き中には売却ができない
依頼書を提出してから実際に移管手続きが完了するまでには一定のタイムラグが生じます。
この間にその銘柄の売却はできないので、大きく値動きする可能性がある決算期付近の時期などは避けたほうがよいことでしょう。
実際に移管手続きが完了するまでの時間はケースバイケースですが、筆者の場合はおおむね1週間~2週間で完了しました。
【注意点3】特定口座と一般口座をまたぐ移管はできない
株式移管が可能なのは
一般口座 → 一般口座
の移管に限られていて
特定 → 一般
の移管は制度上の問題でできません。
「移管元でどの口座を使っているのか」、「移管先に同様の口座を開設してあるかどうか」をよく確認してから手続きをする必要があります。
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【注意点4】一般口座から一般口座へ移管する場合、取得日・取得価額が引き継がれない
さらに重要な注意点として、一般口座から一般口座へ株式移管をした場合には、取得日と取得価額のデータが引き継がれないということです。
つまり、売却時に利益を確定させる基準となる取得価額が不明となり、売却代金の5%相当が取得費として扱われることになるのです。
取得費が売却代金の5%以下であることはなかなかまれなケースだと思われますので、多くの場合、取得費のデータが引き継がれないことは税金の観点で大きな損失です。
一方で、実際の取得費が売却代金の5%相当額を下回る場合にはある意味で節税につながるとも言えます。
一般口座の銘柄を移管させる際には「取得費の観点から損をしないかどうか」をよく考慮する必要があります。
【注意点5】移管(出庫)に手数料がかかる会社もある
移管には手数料がかからない証券会社が多いものの、一部の会社では移管手続きに手数料を設けているケースがあります。
手数料がかからない、または取引手数料の観点で得をする金額と照らし合わせて十分に安い場合には移管するメリットが大きいのですが、手数料のウエイトが重くなる場合には移管しない選択をするようがよいこともあります。
【注意点6】投資信託の移管は会社によって対応が異なる場合も
投資信託の移管の場合には依頼書が「投信口座振替依頼書」という名前の書類になるくらいで、基本的には同様に「一般 → 一般」あるいは「特定 → 特定」の同種口座間の移管が可能です。
しかし、株式以上に商品の取り扱いの有無が証券会社によってさまざまなので、「該当のファンドが移管先で取り扱いがあるかどうか」をよく確認する必要があります。
また、会社によってはそもそも投信の振替サービスに対応していない場合もあります。
手続き中には売買できないことも株式移管と同様なので、これらの点に留意しつつ、移管元/移管先の担当者によく確認してから実行することをおすすめします。
「NISA」や「つみたてNISA」口座の場合
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NISA口座をA証券で開設して取引しているけれど、手数料の安いB証券に移したいというケースがあったとします。
結論から言うと、NISA口座の場合にはこれまでに述べた移管手続きに相当する制度がないので、A証券のNISA口座で保有している銘柄をB証券に移管するといった手続きはできません。
NISAは年単位の管理なので、その年のNISA口座内での取引がまだない状態であれば年に1回は金融機関を変更できます。
しかし、これも「B証券で新たなNISA口座を開く」ことになり、前年までにA証券のNISA口座で買い付けた商品をB証券に移すことはできません。
この手続きをした場合、前年までのA証券でのNISA口座と、翌年からのB証券でのNISA口座の両方が存在することになります。
この場合に特に注意が必要なのは、A証券のNISA口座で持っている商品をロールオーバーしたいと思った時に、B証券のNISA口座にはロールオーバーできないという点です。
それでもNISA口座を別の証券会社に変えたいという場合には、変更元に「金融商品取引業者等変更届出書」を提出し、「勘定廃止通知書」を受け取って、その通知書とNISA口座開設届出書を変更先に提出することで手続きが完了します。
筆者がこの手続きをした際には、手続きが完了するまでトータルでおおむね3週間程度かかったと記憶していますので、余裕を持って手続きをする必要があります。
ネット証券は使いやすい
近年台頭していきているネット証券では、手数料の安さや使いやすさが格段に進化しています。
今後長く取引をするのであれば早い段階でそういった会社に乗り換えるのが得策だと言えます。
移管には少々面倒なこともありますが、どこかのタイミングで整理するとスッキリするかもしれません。(執筆者:趣味は貯金と投資 島村 妃奈)