離婚時の財産分与の割合は原則として2分の1であり、専業主婦の方も基本的に夫婦共有財産の半分をもらえます。
財産分与の「2分の1ルール」と呼ばれています。
しかし、財産分与の割合は必ずしも2分の1と限られているわけではなく、さまざまな事情によって配分が左右されることがあります。
財産分与で損しないよう、詳しく解説します。

目次
2分の1ルールが修正されるケース
財産分与とは、婚姻中に夫婦が共同で築いた財産を分け合うことです。
財産を分ける割合は、財産形成に貢献した割合に応じて公平に分けるべきと考えられています。
いまでは専業主婦の家事労働も夫の仕事と同等の価値があると考えられているので、基本的には夫婦共有財産を折半するのが公平だとされています。
ただ、夫婦の財産形成への貢献度に明らかに差がある場合は、財産分与にその差を反映させなければ公平ではありません。
具体的には、以下のようなケースで2分の1ルールが修正されることが多くなっています。
1. 共働きの場合
妻が家事・育児全般を一手に引き受けながら夫とほぼ同等に働いて収入を得ていた場合には、妻の方が財産形成への貢献度が大きいといえます。
このような場合には、「妻6:夫4」や「妻7:夫3」などの割合で財産分与が認められることもあります。
2. 特別な才能によって資産を形成した場合
夫婦の一方の特別な才能によって資産を形成するような場合もあります。
例えば、夫が医師や弁護士、会社の経営者などで、妻が専業主婦といったような場合が典型的です。
夫が高収入を得ている場合、妻の家事労働に見合う以上の収入を夫が自己の特別な才能によって得ていると考えられます。
したがって、このような場合は「夫9:妻1」のような割合になることもあります。
3. 一方の特有財産が資産形成に寄与している場合
夫婦の一方が結婚前から持っていた財産などは「特有財産」として、財産分与の対象にはなりません。
そのため、例えば夫が結婚前から貯めていたお金をマイホームの購入代金に充てたような場合は、財産分与の際にその分を差し引いて計算することになります。
4. 一方に浪費があった場合
夫婦の一方に著しい浪費があり、浪費によって夫婦共有財産が減少したと認められるような場合にも2分の1ルールが修正されることがあります。
例えば、夫が最低限の生活費は家計に入れていたものの残りのお金は浪費していた一方で、妻が倹約して貯蓄していたような場合には妻に多めの財産が分与されるべきです。
5. 夫婦財産契約を結んでいた場合
夫婦財産契約とは、日本ではあまり行われていませんが、夫婦間の財産関係をどのようにするのかを結婚前に決めて契約しておくことをいいます。
海外では、夫婦財産契約の中で離婚する際の財産分与の割合も決めている例が多いようです。
財産分与の割合は夫婦の話し合いでお互いに合意すれば自由に定めるられるので、夫婦財産契約がある場合は基本的にその内容に従うことになります。
6. 慰謝料的財産分与が支払われる場合
慰謝料的財産分与とは、夫婦の一方が離婚原因を作った場合、財産分与の割合や金額について慰謝料的要素を考慮して決められる財産分与のことです。
この点については、項を改めて詳しくご説明します。
夫婦の一方に浮気などの有責性がある場合
夫婦の一方が浮気をするなどして離婚原因を作った場合、その問題については慰謝料で解決することになります。
財産分与はあくまでも夫婦共有財産を公平に分ける制度なので、夫婦のどちらが離婚原因を作ったのかに関係なく「2分の1ずつ」が基本となります。
ただ、実際には夫婦の一方が離婚原因を作ったものの、その事実が民法上の「不法行為」にまでは該当せず、慰謝料請求が認められない場合もあります。
例えば、不倫の慰謝料請求が認められるためには配偶者が他の異性と性交渉を持ったことが基本的に必要です。
性交渉がなければ、他の異性と親しくしていても基本的に慰謝料請求は認められません。
しかし、このことが原因で離婚に至った場合、財産分与は2分の1で慰謝料はなしということでは公平とは言いがたいでしょう。
このような場合に、慰謝料の代わりに財産分与で不倫された側の配偶者の取り分を多くすることが認められることもあります。
財産分与の割合は夫婦間で自由に決められるので、まずは納得できるまで話し合いましょう。
話し合いがまとまらない場合や、話し合いができない場合は、調停や審判で根気よく主張して、証拠も提出することが大切になります。(執筆者:元弁護士 川端 克成)