競馬で大儲けすれば確定申告は必要ですし、110万円を超える贈与を受ければ贈与税の申告・納税をしなければなりません。
納税は国民の義務である一方、
と、頭の中で悪魔がささやく人もいるかもしれませんので、今回はその疑問にお答えします。

目次
すべての無申告を調査するのは不可能
私は元税務署職員ですが、無申告の人を全員調査するのは人数的な問題を含め、不可能との認識です。
たとえば令和元年分の所得税の申告書提出件数は2,204万件もあり、贈与税の申告書も48万8,000件提出されています。
国税組織の人員は約5万5,000人ほど在籍する一方で、税務調査をする職員はその中の一部です。
税務調査は申告内容を間違えている人に対しても行うため、申告していない人に対しての調査件数は限られています。
税務調査を受けていないのは確率の問題
税務署の税務調査は、悪質な脱税や申告漏れの金額が大きい案件を優先的に行うため、所得の少ない人が申告内容を間違えたとしても、実際に調査を受けるケースはあまり多くありません。
ただ調査を受ける確率が低いだけで、所得金額が少ない人に対しても調査は行われています。
時として税務署は、回収できる税金以上のコストをかけて税務調査を実施することもあり、1万円を納税してもらうために税務調査を実施することもあります。
したがって「少額の脱税なら税務署から指摘は受けない」との認識は、間違っていますのでご注意ください。
税務署が本気を出せば何でも調べられる
税務署には強力な権限が付与されており、税務調査で必要となれば、銀行口座から水道光熱費の支払額まで何でも調べられます。
たとえば銀行振り込みで贈与した場合、銀行の取引履歴を調べれば贈与事実はすぐに確認できます。
また住んでいない物件に対して住宅ローン控除を適用した場合、水道光熱費を調べたり、物件周辺に聞き込みをして居住実態を調べることも可能です。
人員的な部分で、すべての納税者の申告内容を調べているとは言い難いですが、1度税務署の目に止まれば、財産を隠し通すことは極めて難しいです。

申告をしなかった場合の後処理の方がもっと面倒
「1万円程度なら申告しなくてもいいのでは」と思う気持ちも理解できます。
ただ1万円でも100万円でも意図的に税金逃れをすれば、それは脱税行為です。
法律の範囲内で節税したり、申告不要制度を活用することは、まったく問題ありません。
ただ1万円の納税をごまかす人が1万人いれば、税務署からすると1億円の損害になります。
無申告者を増やさないために、見せしめや牽制する意図も踏まえてとして、1万円の脱税でも税務調査を実施することもあります。
確定申告手続きは面倒ですが、申告をしなかった場合の後処理の方がもっと面倒です。
申告が必要になった際は期限内に手続きを済ませてください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)