コロナ禍での減収や失業により、生活に困窮する人が増えています。
いまはさまざまな支援制度を活用して持ちこたえているものの、やがて資金が底をついて追いつめられる人は今後も増加すると予想されます。
どうしても生活ができない場合はセーフティネットとして生活保護制度を利用できますが、実際のところ、生活保護を申請するといくらもらえるのでしょうか。
目次
生活保護費の計算方法は非常に複雑

生活保護費の計算方法は、いっけん単純なように見えて実は非常に複雑です。
保護費の内訳は次のようになっています。
「生活扶助」 → 日常生活に最低限必要な費用
「住宅扶助」 → アパートなどの家賃(上限あり)
この2つは全員に支給されます。
その他にもさまざまな種類の保護費があり、該当する場合に支給されます。
4種の「加算額」
「加算額」には母子加算・児童養育加算・妊産婦加算・障害加算の4種類があり、該当する場合に支給されます。
これだけをみるとそれほど複雑でもありませんが、「生活扶助」の計算方法が非常に複雑なのです。
とりあえず目安を知りたい場合は、ネットで紹介されている自動計算ツールを使うとよいでしょう。
具体的な計算方法は厚生労働省のホームページ内の「生活扶助基準額について(pdf)」という資料で確認できます。
生活保護費のシミュレーション
生活保護費のイメージを持っていただくために、いくつかのケースに分けて受給できる保護費の計算結果をご紹介します。
保護費の基準は世帯員の人数や年齢、住んでいる地域(級地)によって異なります。
お住まいの地域の級地は厚生労働省のホームページ内の「お住まいの地域の級地を確認(pdf)」という資料で確認できます。
シミュレーション結果を見ていきましょう。
ケース1:単身世帯(20~30代)

いずれも「生活扶助」+「住宅扶助」の合計額で、住宅扶助は上限額としています。
ケース2:単身世帯(70代以上)

世帯員の年齢が高くなると、保護費が少し低くなります。
ケース3:夫婦2人(2人とも41~59歳)の世帯

夫婦2人世帯の場合も、高齢世帯になると保護費が少し低くなります。
ケース4:夫婦と子ども2人の世帯
夫50歳、妻45歳で高校生と中学生の子どもがいる世帯で計算してみましょう。

中学生の子どもが1人いるので、児童養育加算1万円が含まれています。
小学校・中学校・高校などの入学準備費用については、必要に応じて支給されます(上限あり)。
ケース5:シングルマザーの世帯
母30歳で2歳の子どもがいる世帯で計算してみましょう。
母子加算として2万2,790円と、児童養育加算1万5,000円(3歳未満の児童)が含まれています。
生活保護の受給は悪いことではない
すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活が憲法で保障されているのですから、生活保護を受給することは悪いことでも恥ずかしいことでもありません。
本当に生活に困ったときは、思い詰めずに生活保護を申請するべきです。
ただし、保護費で借金を返済することは認められていないので、借金を抱えている場合は基本的に自己破産をする必要があります。
生活保護にはさまざまなデメリットもありますが、また収入が得られるようになったら生活保護を打ち切ればいいので、どうしても苦しいときは選択肢のひとつとして検討してみるのもよいでしょう。(執筆者:元弁護士 川端 克成)