戸建でも、マンションでも、売却依頼のチラシは不動産仲介会社からよく入ります。
その中に、具体的な氏名・住所の印刷された郵便物に売却依頼のチラシが入っていることがあります。
これは、他人の「登記情報」が誰でも取れることを利用して、目を付けた物件に意図的に送付されたものです。
当然のことならが、不正利用ではないということがチラシに書かれてはいますが、ここまで来ると自宅の資産状況は丸見えなのではないかと不安になります。
今回は、登記をすることで、誰にでも資産状況が分かってしまうという問題点について考えます。
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目次
登記所では誰もが「登記事項証明書」を請求できる
登記所では誰もが「登記事項証明書」を請求できます。
これは登記が
ことに由来しています。
たとえば、Aさんの自宅を購入したいと考えている、まったく他人のBさんは「Aさんの自宅に変な権利が付いていないか」を確認するために「登記事項証明書」を取得して取引の安全を担保します。
これが理想的な使われ方ですが、誰でも取得できるのをいいことに、不動産仲介会社が自社のセールスに使ったり、何か欠点を探すために使われたりもします。
「登記事項証明書」は表題部と権利部からなり、
権利部(甲区)には、所有権関係
権利部(乙区)には、抵当権関係
などが記載されています。
従って、「登記事項証明書」を見るだけで、
・ 誰が所有者なのか
・ 抵当権や根抵当権などの債権者や債務者
・ 債権額
などといった情報も筒抜けになってしまいます。
住宅ローンは抵当権の登記がされますので、住宅ローンの債権額や債務者が、全くの他人にも知られてしまいます。
最近はインターネットから簡単に取得できる
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司法書士などの専門家向けのオンラインサービス以外に、最近はインターネットから不特定多数の人が「登記事項証明書」と同内容の「登記情報」を取得できます。
これは一般財団法人民事法務協会が提供していて、インターネットで「登記情報提供サービス」と検索すれば、すぐに出てきます。
どの利用形態でも登録は必要ですが、目的とする所在地を入力してクレジットカード決済するだけで「登記情報」を閲覧できるというのは、便利でもあり恐ろしくもあります。
ちなみに不動産登記情報の全部事項の情報料は1件あたり334円と、窓口交付の600円に比べて割安です(「登記事項証明書」と同等の価値はありません)。
個人のプライバシーとの両立が課題に
金融機関や不動産関係者の間では、他人の「登記事項証明書」を取得できるというのは半ば当然のことですが、普通の人はこのことをあまり知らないように感じます。
現在のところこれを改正する動きは見られないため、
しかありません。
債務額を把握されるようなトラブルに巻き込まれない
ただし、これを勝手に変更することはできないので、まずは債務額を把握されるようなトラブルに巻き込まれないように注意してください。
トラブルの相手方がこの制度を利用したとしても、この制度の存在を知っていれば誰でもが分かるものだと安心できるメリットもあります。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)