今回は、調整局面入りしている日本株の現状と、今後の注目点について解説していきたいと思います。
目次
調整する日本株

日経平均は、現状少しずつ上値のラインを切り上げながら上昇を続けていますが、なかなかその抵抗ラインを越えられずにいます。
しかし、米国株は9月に急落しその高値をまだ取り戻せていないにも関わらず、日経平均はほとんど下落せず逆に高値を更新しているのです。
世界的に株式市場が急落する中、日本株だけが特殊な値動きをしたのは、他市場と比べ日本株式市場の需給関係が非常に良かったことが要因と思われます。
直近の2市場合計信用倍率を見てみると、過去の平均と比べ信用倍率は非常に低く、需給的に売り圧力が弱かったのです。
さらに、日本株は米国株と比較して出遅れていたため、そのバリュエーションの修正を狙った機関投資家のリバランスが入ったことで、米国株が急落したにもかかわらず日本株は底堅い値動きを継続しました。
特に顕著な値動きをしたのが新興市場であるマザーズ総合指数であり、2018年に付けた高値水準まで価格を大きく戻しました。
マザーズ総合指数はなぜ急騰したのか
マザーズ総合指数が急騰し、2018年の高値水準まで価格を戻した理由を知るためには、まずマザーズ総合指数構成銘柄にどういった特徴があるのかを理解する必要があります。
マザーズ総合指数の特徴
・ 内需関連の株が多いため外的要因に影響されにくい。
・ 新型コロナウイルス関連銘柄が多い。
・ IT関連企業が多い。
上記の中で特に重要なのが、IT企業が多いということであり、今回のコロナショックの恩恵を受ける企業が非常に多かったことが今回の上昇要因となっています。
さらに、米大統領選前ということもあり、主力銘柄の値動きが乏しかったことから、値動きの軽いマザーズ銘柄を売買する動きが活発化したことも原因として考えられます。
これら要因によってマザーズ総合指数は高値を更新しました。
マザーズは2018年の高値で下落に転じる
マザーズ総合指数は、相場が硬直状態であったため、投資家が値動きの軽さを狙ったことから急騰しましたが、約1,368ポイントの高値を付けた後に下落に転じました。
これにはいくつかの原因があり、第一にマザーズ総合指数が2018年の高値に達したからです。
日経平均の場合、2018年の高値に今まで何度も挑戦してきましたが、マザーズ総合指数は2020年まで下落基調が継続しており、今回やっと元の水準まで戻しました。
しかし、このラインは抵抗ラインとしてかなり意識されるところであり、日経平均と比べた出遅れ感はすでに修正されてしまったため、このラインに達した段階で下落に転じました。
日経平均にテクニカル上下落のサイン点灯
現在、日経平均は上値の抵抗ラインを切り上げるような形で上昇を緩やかに継続しています。
しかし、その一方、テクニカル分析上気を付けておかなければいけないテクニカルサインが見え隠れしています。
ここで注目してほしいのが、
です。
このMACDは、移動平均線と同じ感覚で使用することができ、
ゴールデンクロスを形成 → 上昇トレンド入り
デッドクロスを形成 → 下落トレンド入り
を意味します。
また、このMACDには、ダイバージェンス効果という特殊なチャートパターンが存在し、これが現在日経平均に点灯しています。
現状、日経平均は前述にあるように上値の抵抗ラインを切り上げながら上昇を続けています。
この場合、MACDも同じように上値の抵抗ラインを切り上げながら上昇に転じるのですが、今回は上値の抵抗ラインを切り下げながら推移しています。
つまり、この2つの抵抗ラインが「ハの字」を形成しており、このチャートパターンが現れると将来的に下落する可能性が高くなります。
日経平均とNYダウの相関性
一般的に、日経平均とNYダウの相関性は非常に高く、同じような値動きをする傾向にありますが、前述にあるように需給的な要因で、日経平均は米国株が9月に急落した際、全く異なる値動きをしていました。
しかし、直近の値動きを見ると、NYダウとの連動性はまた高まっており、もし今後米国株が大きく下落に転じた時、日本株にも下落圧力が強くなる可能性には注意が必要となります。
ドル円と金先物価格の値動きに注意

米国の追加の景気刺激策に関する協議が難航していることから、10月21日に円高が加速し、ドル円は104円台まで買われる展開となりました。
こここで注目してほしいのが、
ことです。
通常だったら金利が上がればドルが買われるのですが、今回はまったく逆の値動きをしているのです。
これは、金先物価格が上昇に転じていることから、リスク回避のための円買い、金先物買いの可能性が高いと思われます。
リスク回避の準備も忘れずに
現状のマーケット環境は比較的に顕著に推移していますが、何かしらのきっかけで急落する可能性を秘めている相場でもあるので、リスク管理には注意しておく必要があります。
さらに、米大統領選直前ということもあるので、そのヘッドラインリスクによって相場が急激に触れた場合、どういった投資判断を下すべきか事前にシュミレーションしておくようにしましょう。(執筆者:現役証券マン 白鳥 翔一)