まだまだ世界的に感染が広がっている新型コロナですが、震源地である中国は感染も抑え込まれ経済が急回復しています。
G20では唯一、2020年のGDP成長率がプラスになる勢いで、中国起点の需要で日本の一部企業も恩恵を受けています。
社会主義国家だからこその感染対策が今後も維持できれば、欧米経済が停滞している間に中国が台頭するシナリオも考えられ、その動向に注目が集まっています。
ここではIMF(国際通貨基金)の経済レポートを元に、中国経済の急回復状況と、恩恵を受けている日本企業をご紹介します。
目次
コロナ禍で急回復する中国経済の現状
世界の感染拡大を横目に経済正常化がじわじわと進んだ中国では、今年5月頃から景気指数が回復し、貿易戦争中の米国ではなくアジア諸国にその恩恵が回ってきました。
大局的に見た中国経済の現状と、日本にも届き始めた恩恵を検証してみます。
急回復する中国経済の現状
今月発表された最新のIMF世界経済の見通し(2020年10月)では、2020年世界全体のGDP成長率は▲4.4%と減速し、日本は▲5.3%、アメリカは▲4.3%の予測です。
ユーロ圏諸国やインドなど2ケタのマイナス成長の予測もあり、新型コロナ感染症拡大により大きく減速したことが分かります。
そんなコロナ禍にあって、中国だけは+1.9%と国家計画を下回るもののプラス成長予測となりました。

具体的には外需(=輸出)はマスクやパソコンの輸出が伸び、内需(=国内消費、輸入)は9月小売売上高が前年比プラスに転じました。
特に高級ブランドなどの高額消費が回復しており、仏LVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)の中国を含むアジア売上高が7~9月期で前年比13%増となり、高級乗用車も売れている様子です。
海外旅行に行けない中国国民が、国内旅行で消費を回していることもGDP成長率プラスに貢献している状況です。
皮肉にも、震源地である中国が最も早く感染終息傾向にあることで、経済正常化に向かっていると思われます。
財政の余裕度もある中国
現在コロナショックに対応するため、世界各国が空前の財政出動に乗り出しており、経済や生活を守っています。
日本でも国民全員への10万円支給や事業者向け給付、GoToトラベルなどコロナ対策に、100兆円超の財政出動(=政府債務)を行っています。
世界全体ではその規模1,000兆円に達し、第2波が来た時に更なる対策が打てるか心配する声もあります。
そんな中にあって中国は、政府債務の対GDP比率で主要国でも最下位レベルであり、まだ政府主導でアクセルを吹かす余力を持っています。

※筆者作成(IMF Global Financial Stability Report:Sovereign-Debt-to-GDP Ratios)
これを見ると日本の債務残高の高さが怖くなります。
日本の工作機械受注が回復基調
この中国経済回復に伴い、これまでコロナショックの影響を大きく受けていた日本の製造業に明るい光が差し込むようになりました。
こちらは工作機械受注の統計で、今年に入ってからの動きを表しています。

※日本工作機械工業会受注統計より、筆者作成(2020.1~8の前年同月比)
※中国は外需の内枠
参照:日本工作機械工業会
8月時点では内需外需ともに100%まで回復しないどころか、日本の国内需要は61%と低迷を続けています。
それと比べ中国は落ち込んだ需要を取り戻すべく、前年比1.5倍の生産スピードで走っていることが分かります。
日本国内需要が乏しい中、外需である中国の製造、設備投資の回復が、日本の製造業にとってコロナショックが底打ちしたシグナルだと認識され、機械メーカーの株価は上昇に転じました。
TOPIX機械株指数も回復基調

※筆者作成(年初来騰落率の終値ベース、10/22まで)
33業種あるTOPIX業種別指数のうち、機械は9月に年初来水準を回復。
正に中国経済回復に支えられての、株価上昇となっていますね。
これら要因を踏まえ、中国関連株でおすすめする銘柄を3つ挙げてみましょう。
おすすめ関連株
【6981】村田製作所
世界トップのセラミックコンデンサーが主柱の電子部品大手です。
4~6月期は業績計画通りの進捗率だったが、7月以降の中国経済回復によって上方修正が期待できます。
2015年上場来高値を更新し、5G普及とシリコンサイクルにも乗る機械銘柄の本命です。
【6869】シスメックス
検体検査機器・試薬を中国・米国など世界的に展開です。
国策で医療分野強化を進めている中国・米国など海外需要を取り込み、2018年以来低迷していた株価も上場来高値を更新見込みです。
2020年度も前年同様の収益が見込まれるほど、安定した収益力が魅力です。
【4911】資生堂
化粧品国内大手で、コロナショックによりインバウンド需要が崩壊し、2020年12月期は赤字転落見込みです。
そのため株価も2年ぶりの低水準ながら、中国事業回復で、悪材料出尽くしたので、コロナワクチン開発などを起点に好転が期待できます。
アフターコロナを見据えた投資
日本国内の需要が急落する懸念が遠のき、海外需要が回復すれば株価には好材料となるので、回復基調に乗るこれら業種・企業は年末ラリーの期待が持てます。
ただしコロナ禍ではどの企業も株価上昇が期待できる訳ではなく、二極化するK字回復を予想します。
この二極化を見誤らないよう、アフターコロナを見据えた投資を今から仕込んでおきましょう。