米ワシントン大学の研究者たちが、2050年と2100年の世界各国の人口とGDPを予測した論文(※1)を発表し、日本でも報道されました。
30年先を見据えた資産形成のためには、世界の成長市場を見極める必要があります。
間違えて低成長市場に投資すると、資産形成どころか失うことになりかねません。

目次
2050年の各国GDP予想
ワシントン大学の論文を手掛かりに、これからの成長市場を探り投資の手がかりとしましょう。
ワシントン大学論文による2050年と2100年のGDP予想

論文は2020年7月イギリスの医学研究誌THE LANCETに掲載されました。
世界のGDP予測のポイントはつぎのとおりです。
(2) 2050年までにインドが、日本、ドイツ、フランス、イギリスを抜いて世界第三位になる。
(3) 2050年までにインドネシア、ナイジェリアが着実に順位を上げる。
(4) 2100年までのスパンで見るとイスラエル、フィリピンが登場する。
BRICsのうち、ロシアとブラジルはぱっとしません。
石油、鉄鉱石など資源価格に左右されそうです。
GDP予測の多くは、労働人口の推移を算定のベースにしています。
ワシントン大学論文は、2017年時点の人口上位10か国を対象に、労働人口の推移をつぎのグラフのとおり予測しています。

総人口は、現在世界1位の中国は、14億人から7億3,000万人に減り、3位になる見通しです。
インドが11億人で1位になり、ナイジェリアが3倍以上増えて8億人で2位になる予測です。
アメリカは、移民政策などで微増の3億4,000万人となり、4位となる予測です。
日本は半減の6,000万人となる見通しです。
世界各国の人口が、増加から減少に転じる年代を色分けしたのがつぎの世界地図です。
「濃い寒色 → 薄い寒色 → 薄い暖色 → 濃い暖色」の順で、早い年代から減少に転じます。

3つの研究を比較
ワシントン大学論文だけでは、偏った見方になる懸念があります。
他に2つのレポートを参考にしましょう。
1つはイギリスのコンサルタント会社PwCが、2013年1月に出したレポート(※2)です。
参照:PwC(※2)
もう1つは2014年に日本経済研究センターが出した2060年のGDP予測(※3)です。
参照:内閣府(pdf)
3つの研究の結論をまとめるとつぎの表のとおりです。

3つの研究からの結論
(2) 日本、ドイツ、イギリス、フランス、カナダのG7メンバーが第二集団として続きますが、大きな成長は望めません。
(3) 2050年までにインドネシア、ナイジェリアの成長が見込めます。
さらにその先、フィリピン、イスラエルが圏外から上がってきます。
長期投資は定期的な棚卸しを忘れずに
結局、30年後の資産形成は、アメリカ、中国、インドが本命です。
本命だけでは投資の醍醐味は味わえません。
資金の一部はサテライト的にインドネシア、ナイジェリアに投資してはどうでしょうか。
あなたが20代の若者ならば、リスクを取ってフィリピン、イスラエルへの投資も考えましょう。
長期投資の棚卸し
長期投資は、短期の国際情勢の変動や内政の混乱に惑わされてはいけません。
しかし将来の経済成長の基礎条件が崩れる場合は、果敢な方針変更が必要です。
PwCレポート(※2)は経済成長の要因としてつぎの4項目をあげています。
(2) 人的労働の成長(すなわち教育)
(3) 資本ストックの伸び
(4) 技術進歩
これら4項目に本質的な劣化がないか注視し、投資先の定期的な棚卸しを忘れないでください。

世界共通言語英語の浸透度
将来の経済成長に欠かせないもう1つのポイントは、政府活動、企業活動、日常生活にどれだけ英語が浸透しているかです。
経済がグローバル化するなかで、庶民が抵抗なく英語を使う国は圧倒的に有利です。
注目7か国の英語事情はつぎのとおりです。

(注)筆者の個人感想による
注目7か国に投資しよう
外国株投資のため、現地で証券口座を開くことは容易でありません。
また中国本土やインドのように、外国籍者が自由に投資できない国があります。
多くの日本人投資家にとって、日本の証券会社で売買できることは必須条件です。
一般的に外国株投資は、個別株式、ADR(米国預託証券)、投資信託、ETF(上場投資信託)への投資になります。
個別株式やADRは、分散投資には向きません。
また日本の証券会社が扱っている場合も銘柄数が限られます。
投資信託は信託報酬が2%以上のものが多く、長期投資に向きません。
一方ETFはアメリカ、日本、香港などに上場された多くの商品があります。信託報酬も不要です。
投資信託に比べ経費率は低めです。
外国株投資はETFがおすすめです。
現実問題として、例えばナイジェリアに投資するなら、日本の証券会社(※4)で買えるのは米国上場の「グローバルX MSCIナイジェリアETF(NGE)」しかありません。
参照:サクソバンク証券
外国株投資のため、この他にも知りたいことはたくさんあるでしょう。
しかし習うより慣れろです。注目7か国への投資を今すぐ始めてはどうでしょうか。(執筆者:根元 直角)