2020年早春から騒がれた新型コロナウイルス感染拡大、緊急事態宣言、外出自粛、の影響を最も受けた業種の1つに「旅行」があります。
国内、国外の観光客が消えた2020年春から初夏にかけて、壊滅的な打撃を受けてしまいました。
そこで、旅行業界救済のため7月から始まったのが国の施策「Go Toキャンペーン」ですが、この取り組みにより、旅行業界の業績は回復するのでしょうか。
今回は、優待株で「Go Toトラベル」キャンペーンに関係する企業の現状と業績予測を見て行きたいと思います。
株価その他の情報は10/28終値時点でのYahoo!ファイナンスから引用しています。
目次
(1) エイチ・アイ・エス

「エイチ・アイ・エス(9603)」は海外旅行に強みを持つ大手旅行会社であり、長崎県にあるハウステンボスの運営も行っています。
新型コロナの影響により主力の海外旅行需要が消滅、ホテルやハウステンボスの業績も厳しく、2020年10月期の売上高は前年比57%の4,600億円、営業赤字を見込んでいます。
そして四季報によれば、2021年10月期については五輪ホテル需要を見込んで売上高6,100億円を予想しています。
「エイチ・アイ・エス」の株価の動きについて、2020年1月前半には3,000円台でしたが、コロナショックにより急落、日経平均がコロナショック前の水準まで回復している2020年10月現在でも、1,500円台と半分近くに値を下げています。
「エイチ・アイ・エス」では株主優待を実施しており、保有株数により、旅行代金が割引になる株主優待券を進呈しています。
1万2,000円以上の旅行商品で1人につき1,000円の優待券が利用できるので、最大8.3%の割引を受けられます。
・ 株価 1,502円
・ 最低購入代金(100株)15万200円
・ 権利日 10月末日・4月末日
株主優待
(1)株主優待券(1枚1,000円)
100株以上 2,000円相当
500株以上 4,000円相当
1,000株以上 6,000円相当
(2)ハウステンボス500円入場割引券
100株以上 1枚(1枚で最大5名まで利用可)
(3)ラグーナテンボス500円入場割引券
100株以上 1枚
(2) KNT-CTホールディングス

「KNT-CTホールディングス(9726)」は近鉄系の大手旅行会社であり、国内と団体旅行に強みを持つ企業です。
2013年に「近畿日本ツーリスト」「クラブツーリズム」が統合し発足しました。
2020年春には新型コロナ感染防止のため店舗の休業を余儀なくされ、2020年4~6月の第一四半期売上高は、前年比より97%減と大打撃を受けました。
また、自己資本比率も2020年3月期の20%から、2021年第一四半期には11%と急落しています。
四季報の予想によれば「Go Toキャンペーン」の施策むなしく後半の回復も鈍いと予想されていますが、どうなりますでしょうか。
「KNT-CTホールディングス」の株価の動きについて、2020年年始までは1,500円台であったのが2月にかけて600円台まで急落しました。
上昇、下落を繰り返し2020年10月現在は1,000円台まで回復していますが、三たびの底値打ちはあるのでしょうか。
「KNT-CTホールディングス」では株主優待を実施しており、100株以上保有する株主に対し「メイト」「ホリディ」「クラブツーリズムの旅」で利用できる割引券を進呈しています。
割引額はツアー本体価格により異なるとのことです。
・ 株価 1,062円
・ 最低購入代金(100株)10万6,200円
・ 権利日 3月末日・9月末日
株主優待
旅行優待券
100株以上 2枚
「メイト」「ホリデイ」「クラブツーリズムの旅」で利用可。
割引額はツアー本体価格により異なる。
【ツアー本体価格】
3万円以上(1,500円引)
5万円以上(2,500円引)
10万円以上(5,000円引)
20万円以上(1万円引)
30万円以上(1.5万円引)
40万円以上(2万円引)
30万円以上は優待券2枚利用の割引
(3) グリーンズ

「グリーンズ(6547)」はビジネス型「コンフォートホテル」やシティホテル「グリーンズ」を全国90店舗以上展開するホテルチェーンです。
地方のホテルについては近距離旅行などで前年並みに回復したものの、都心部のホテルでは新型コロナの影響により客足の戻りが鈍いようです。
10月には東京都内でもGo Toトラベルキャンペーンの適用となったので、今後の回復が期待されます。
2020年6月期の売上高は、新型コロナの影響や人件費・賃借料などの高騰により前年比25%減の229億円で営業赤字、また四季報によると翌2021年6月期も売上高は240億円での営業赤字が予想されています。
「グリーンズ」株価の値動きですが、コロナショック以前から下落傾向にあり、2019年7月には1,500円台でしたが、2020年10月現在では400円台です。
「グリーンズ」では株主優待を実施しており、自社運営ホテルで利用できる優待券を進呈しており、保有株数によりいただける金額が異なります。
100株保有の場合、2,000円相当の優待券がいただけるので、優待利回りに換算すると4%超えの高利回りです。
・ 株価 474円
・ 最低購入代金(100株)4万7,400円
・ 権利日 12月末日
株主優待
自社が運営するホテル、レストラン、宴会場で利用可能な割引券(1,000円券)を進呈。
100株以上 2,000円分
200株以上 3,000円分
500株以上 8,000円分
1,000株以上 1万円分
1万株以上 2万円分
(4)共立メンテナンス

「共立メンテナンス(9616)」は独立系の寮運営会社で、ビジネスホテルチェーン「ドーミーイン」を全国展開する企業です。
温泉の大浴場があり、夜食ラーメン「夜鳴きそば」のサービスなどで人気のホテルです。
利益柱の寮が安定収入源でありますが、ホテル業は新型コロナの影響により休業発生などを余儀なくされ、2020年4~6月の第一四半期の売上高は前年比44%減の236億円でした。
7月以降は「Go Toキャンペーン」による売上増を見込んでいますが、四季報では影響は限定的と予想されます。
「共立メンテナンス」株価の動きですが、2020年1月の50万円代から4月には20万円代に落ち込んだものの、10月現在では約40万円まで回復しています。
「共立メンテナンス」では株主優待を実施しており、保有株数に応じて、宿泊時などに利用できる優待券を進呈しています。
・株価 3,985円
・最低購入代金(100株) 39万8,500円
・権利日 3月末日・9月末日
株主優待
(1)株主優待割引券(1,000円券)<3月末・9月末>
(2)リゾートホテル優待券<3月末・9月末>
(3)3年以上継続保有:株主優待割引券(1,000円券)<3月末>
100株以上 (1) 1枚 (2) 2枚 (3) ―
200株以上 (1) 3枚 (2) 2枚 (3)+ 1枚
500株以上 (1) 8枚 (2) 3枚 (3)+ 3枚
1,000株以上 (1)10枚 (2) 4枚 (3)+ 4枚
2,000株以上 (1)25枚 (2)10枚 (3)+10枚
5,000株以上 (1)35枚 (2)10枚 (3)+14枚
1万株以上 (1)60枚 (2)10枚 (3)+24枚
業績予測は依然として厳しい
「Go Toトラベル」キャンペーンは、ともすると「旅行業界を救う魔法の施策」のような印象を受けます。
今回旅行業界銘柄を調べてみると、キャンペーンの恩恵は限定的と予想され、業績予測は依然として厳しく立てられていることが読み取れました。
また、東京オリンピック開催の可否も今後大きな影響を与えそうです。
筆者が外出した際も、以前と比べ高齢の方々をあまり見かけないと感じました。
積極的に旅行に行くであろうアクティブシニアの方々が安心して外出できる環境、さらに訪日客の戻りがないと、旅行業界の業績もなかなか回復しないと感じました。
VRが発達した現代ですが、実際に現地を訪れての体験には代えがたいものかと思うので、旅行業界もいつかは回復するのではないかと考えます。
といっても現在が株価の底なのか否なのか、判断はできません。
株価その他の情報は今後変更される可能性がありますので、投資をお考えの際はご自身でご確認の上、お願いいたします。(執筆者:取得優待は120以上 吉井 裕子)