パートやアルバイトで働いている人も、一定の要件を満たせば社会保険に加入できます。
社会保険に加入すると給料の手取りは減りますが、老後にもらえる年金が増えるなどのメリットがあるため、加入を希望する人も増えています。
しかし、パートやアルバイトを社会保険に加入させてくれない会社も少なくはありません。
この記事では、そのようなときの対処法を解説します。

目次
社会保険への加入条件
まずは、社会保険への加入条件を確認しておきましょう。社会保険に加入したくても条件を満たしていなければ加入できません。
厚生年金保険・健康保険の加入条件
パート・アルバイトの方も次の条件をすべて満たす場合には厚生年金保険・健康保険に加入する義務があります。
「加入できる」のではなく、「加入しなければならない」ということにご注意ください。
社会保険に加入したくない場合には、次の条件を1つでも満たさなければよいということです。
(2) 賃金が月額8万8,000円以上
(3) 雇用期間の見込みが1年以上
(4) 学生でない
(5) 勤務先の従業員数が501人以上
より詳しくは、厚生労働省のホームページをご覧ください。
雇用保険の加入条件
次の2つの条件を満たす場合には、パート・アルバイトの方も雇用保険に加入する義務があります。
(2) 雇用期間の見込みが31日以上
こちらも、厚生労働省のホームページにより詳しい説明が記載されています。
会社の社会保険への加入義務
人によっては、社会保険に加入したくても勤務先の会社自体が社会保険に加入してくれないという場合もあることでしょう。
しかし、会社が一定の条件を満たす場合には社会保険の「強制適用事業所」となるので、会社にも加入する義務があります。
会社が強制適用事業所となる条件は、以下のとおりです。
厚生年金保険・健康保険が強制適用となる条件
・ 法人の事業所はすべて
・ 個人事業主の事業所は、常時5人以上の従業員を使用すること(一部のサービス業等は対象外)
雇用保険が強制適用となる条件
・ 1人でも労働者を雇用しているすべての事業所
違反した事業所には刑事罰がある
上記の条件を満たすにもかかわらず社会保険・雇用保険に加入しない事業所は、6か月以上の懲役または30万円以下の罰金という刑事罰の対象です。
社会保険・雇用保険に入れてもらえないときの対処法

では、社会保険・雇用保険に加入させてもらえない場合や、会社自体が加入してくれない場合にはどうすればよいのでしょうか。
1. 会社に申し出る
まずは、事業主や人事部・総務部などの担当者に申し出て、社会保険に加入したいことを伝えることです。
必要に応じて、加入義務に違反すると刑事罰があることも説明するとよいことでしょう。
個人の事業所や小規模の会社においては、単に事業主が法律を知らないために違反が行われているケースが多く見受けられます。
事業主に悪気がない場合には、正しく説明して希望を伝えれば善処してもらえることでしょう。
2. 管轄の機関に相談する
会社に希望を伝えても応じてもらえない場合には、管轄の機関に相談しましょう。
保険の種類に応じて、次の機関に相談すれば会社に対して加入手続きをするように働きかけてもらえます。
「健康保険」:全国健康保険協会
「雇用保険」:ハローワーク
3. 社労士や弁護士に相談する
社会保険・雇用保険への加入義務を知っていても、どうしても加入したがらない事業主も中にはいます。
厚生年金保険料と健康保険料については半分、雇用保険料については2/3を会社が負担したなければならないため、従業員を加入させることによる経費の負担を嫌うのでしょう。
そのようなときには、会社に顧問弁護士がいればその弁護に相談してみるのがよいと言えます。
顧問弁護士がいない場合には、会社と関わりのある社会保険労務士や弁護士に相談するのも1つの方法です。
理屈的には、警察に訴えて事業所を摘発してもらうことも可能ですが、実際には警察に相談したところで動いてもらえることはまずありません。
弁護士への依頼もできますが費用がかかりますし、どうしても会社と対決するような構図になってしまいます。
顧問弁護士のように会社に対して指導やアドバイスを行う立場の専門家から会社に意見を伝えてもらうのがよいと言えます。(執筆者:元弁護士 川端 克成)