トラック運転手は、仕事に長距離移動を伴うため労働時間が他の職種よりも長くなる傾向があります。
それにもかかわらず、「残業代をきちんともらえていない」という方が少なくありません。
トラック運転手の場合には歩合制や固定残業代の給料体系が導入されていることが多く、そのために残業代の請求を諦めているからかもしれません。
しかし、歩合制や固定残業代が導入されていても、残業代を請求できる場合があるのです。

目次
歩合制と残業代
歩合制とは、個人の成績や売り上げによって給料が決定する給料体系のことを言います。
トラック運転手の場合、歩合制がとられていることがあります。
歩合制の給料体系には次の2つのパターンが考えられます。
(2) 固定給 + 歩合給:固定給と成績に応じた歩合給が支払われる給与体系
しかし (1) については最低賃金を下回ることがあるため、違法となる可能性があるのです。
したがって、通常は (2) の固定給と歩合給の複合制度を採用しているところが多いことでしょう。
歩合制の場合にはそもそも残業代はないと誤解されやすいのですが、歩合制であっても法定労働時間(1日8時間もしくは週40時間)を超えて働いた場合には、普通の会社員と同様に残業代が発生します。
なお、歩合制のトラック運転手の残業代の計算は次のとおりです。
固定残業制と残業代
固定残業代とは、一定時間分の時間外労働などに対して定額で支払われる割増賃金のことをいいます。
たとえば、「基本給を20万円として、20時間分の残業代5万円を別途支給する」といったものがこれにあたります。
固定残業代を支払っていたとしても、固定残業代として予定していた残業時間を超えた場合には、固定残業代とは別途残業代を支払わなければなりません。
トラック運転手の荷待ち時間にも給料が発生
トラック運転手の場合、荷待ち時間が労働時間から除かれていることもあります。
しかし、労働基準法の労働時間の定義を前提とすると、荷待ち時間であっても使用者の指揮命令下にある時間だといえるので、労働基準法の労働時間にあたります。
したがって、トラック運転手の荷待ち時間も労働時間に含まれますので、荷待ち時間に相当する賃金も請求できます。

残業代請求の時効に注意
在職中は会社に対して残業代を請求しづらいと感じる方が多いと思いますので、実際に請求するとしたら会社を退職するタイミングが想定されます。
会社を退職した際にしっかりと残業代を請求できるように、在職中から証拠を集めておくようにしてください。
なお、残業代の請求には時効があるので注意してください。
労働基準法が改正されたため、従来は2年間が時効期間でしたが、令和2年4月1日以降の残業代については3年間に延長されました。(執筆者:弁護士 山本 静人)