令和3年度(2021年度)与党税制改正大綱が令和2年12月10日に決定されましたが、個人所得課税の改正で大きなものは住宅ローン控除の改正です。
住宅ローン控除の改正については、関連記事にて単独で取り上げております。
それ以外にも注目すべきものとして、問題視されていたベビーシッター助成金の雑所得課税問題が是正に向けて動き出したことや、退職金課税の強化、カジノから得られる所得について検討課題となったことも挙げられます。
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目次
ベビーシッター助成金を非課税へ
東京都のベビーシッター支援事業により、ベビーシッター代が1時間150円で利用できることが話題になりましたが、ベビーシッター事業者が1時間あたり2,000円補助を受けていたとすれば、2,000円に年間の利用時間をかけて雑所得が計算されます。
年末調整が行われる給与所得者の場合、1円以上20万円以下であれば確定申告不要でも住民税の申告が必要になり、住民税の標準税率は10%のため最大2万円税額が増加します。
20万円を超えると所得税も増え、2万円超の住民税のほか、5%~45%と所得に応じた形で所得税率が適用されて増加します。
この取り扱いは国民からの批判が多く、国会の財政金融委員会などでも質問があったため、子育て環境の改善のため法令で非課税規定する方向となりました。
税制改正大綱には非課税の適用時期を明記しておりませんが、一部新聞では令和3年より適用されると報道されています。
5年以内退職者に対する退職金課税の強化
退職所得の計算式は、退職金-退職所得控除額=Aとして、A × 1/2です。ただし勤続5年以内の役員に関しては、1/2をかけずAとなる場合もあります。
この1/2をかけない要件が、令和3年度税制改正においては追加されました。
役員を除く勤続5年以内の退職者に関して、A>300万円となる場合は、退職所得はA × 1/2ではなく、A-150万円です。
300万円を超える部分には1/2をかけないため、(A-300万円)+300万円 × 1/2 が退職所得の金額として計算されます。
1/2をかけない措置は、本来給与として払う分を退職金に付け替えて税軽減を図り、短期で退職するケースを封じるためにとられたものです。令和4年の退職所得より適用される方向です。
外国人のカジノ儲けは非課税へ(翌年度で具体化)
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統合型リゾート施設(IR)の開業に向けて、カジノから得られる所得についての扱いも検討されました。現状では、競馬の馬券払戻金と同様に一時所得に該当します。
しかし海外では非課税の扱いが多いというIR事業者の言い分もあり、外国人旅行客(非居住者)については、法令で非課税規定されることが検討されました。なおこの改正は検討課題として税制改正大綱には記載されており、正式決定は令和4年度以降の改正となる方針です。
なお日本国内居住者のように一時所得として課税される場合も、馬券払戻金やふるさと納税返礼品とあわせて年間50万円を超えなければ、一時所得は0円です。
令和3年4月より確定申告書・年末調整書類の押印廃止
最後に現政権において目玉政策とも言える各種書類の押印見直しですが、確定申告書・年末調整書類については、令和3年4月1日以降提出分について認印の押印義務をなくす方向です。
税制改正は12月に大筋の方向性が決まるものの、関連法案は通常国会の審議を経て翌年3月末になって参議院で可決・成立するためと考えられます。
このため、令和2年分の年末調整で令和3年分の扶養控除等申告書を事前に提出する場合は押印が必要ですし、令和2年分の確定申告期間(令和3年3月15日まで、消費税は3月31日まで)内の申告書・届出書提出も押印が必要です。
一方で令和2年分の確定申告書であっても、還付申告のため4月1日以降に提出するような場合は押印が不要になると想定されます。(執筆者:石谷 彰彦)