贈与の対象となる財産は現金や預金だけでなく、不動産や株式を渡した場合も贈与税の対象です。
贈与財産の合計金額が110万円までなら、贈与税は非課税になりますが、贈与財産の種類を変えるとさらに節税することも可能になります。

目次
課税対象金額は贈与時点の時価
贈与税の対象となる課税価格は、原則贈与が行われた時点の金額です。
現金100万円を贈与すれば、100万円が課税対象金額になりますし、50万円の借金を免除した場合、債務を免除してもらった50万円が贈与税の課税価格となります。
一方で、上場株式を贈与した場合や土地を贈与した場合、贈与した時点の時価が必ずしも課税価格とはなりませんのでご注意ください。
上場株式は4つの時期から評価額を選択する
上場株式の贈与税を計算する場合、次の課税時期における評価額のうち、最も低い金額を評価額として採用します。
・ 課税時期の月の月中平均額
・ 課税時期の月の前月の月中平均額
・ 課税時期の月の前々月の月中平均額
たとえば1株1,000円の上場株式を2,000株贈与した場合、贈与時点の価値は200万円です。
しかし贈与税の計算上の株価が1株800円だった場合、贈与税の対象となる金額は160万円(800円 × 2,000株)と、40万円分安く財産を贈与することが可能です。
なお負担付贈与により上場株式を取得した場合は、課税時期を選ぶことができず、課税時期の最終価格が課税価格です。

土地は贈与する年分に注意すること
土地の贈与税評価額は時価評価ではなく、路線価(または倍率表)を用いて計算し、1月1日から12月31日までの間に発生した相続税・贈与税においては、同じ路線価を使用します。
路線価は各地域の時価相場が金額に反映されるため、節税を考えるなら贈与する年分に気をつけてください。
また路線価の金額は毎年変更され、毎年人気のある地域の価額は上昇し、景気が悪くなると価額は下落します。
路線価の金額が上がれば、土地の贈与税評価額も高くなるため、贈与税の納税も増えます。
そのため路線価が上がりそうなエリアの土地は年末までに贈与し、路線価が下がると見込まれるエリアの土地は、贈与する時期を翌年以降に延期することで、納税額を抑えることも可能です。
なお土地を贈与する際は、贈与税以外に登録免許税と不動産取得税の対象です。
贈与税の非課税範囲内の贈与でも、登録免許税と不動産取得税の支払いが発生する可能性はありますのでご注意ください。
毎年コツコツ贈与する方法が最高の節約術
贈与税の基礎控除額110万円は毎年利用できますが、利用しなかった控除金額を翌年に繰り越すことはできません。
そのため1度に多額の財産を贈与するのではなく、控除額以内の財産を毎年贈与した方が贈与税の支払いを抑えられます。
また贈与税の特例制度は期間限定のものが多いため、利用する際は特例が適用できる期間に注意して贈与手続きをしてください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)