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年金の減額が2021年度で終わらない理由と、減額対策の2つの選択肢

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年金の減額が2021年度で終わらない理由と、減額対策の2つの選択肢

厚生労働省の発表によると、2021年度(2021年4月~2022年3月)に支給される年金は、前年度より0.1%減額するそうです。

20歳から60歳までの40年間、国民年金の保険料(厚生年金保険の保険料の一部は、国民年金の保険料として使われる)を、1度も未納なく納付すると、原則65歳になると国民年金から、満額の「老齢基礎年金」が支給されます。

また厚生年金保険に加入して保険料を納付した期間が1か月以上ある、老齢基礎年金の受給者に対しては、この上乗せとなる「老齢厚生年金」が、厚生年金保険から支給されます。

前者の満額の老齢基礎年金は、前年度より66円減額して、1か月あたり6万5,075円になるそうです。

また次のような想定になっている、「モデル世帯」に支給される年金(夫婦2名分の老齢基礎年金+夫の老齢厚生年金)は、前年度より228円減額して、1か月あたり22万496円になるそうです。

同じ年齢の夫婦2名で構成されている

・ 夫は40年間、厚生年金保険に加入して保険料を納付し、その間の平均収入が、厚生年金保険に加入する男性の平均収入と同額であった

・ 妻は40年間、国民年金に加入する専業主婦であった

年金は原則として偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)に、その月の前2か月分がまとめて支給されるので、前年度より減額した年金が支給されるのは、4月分と5月分が支給される6月からになります。

年金の減額が2021年度で終わらない理由

賃金の変動率を優先するというルールが厳格化される

原則として67歳到達年度までの「新規裁定者」は、賃金の変動率(正確には「名目手取り賃金変動率」)で、4月から年金額を改定します。

一方で68歳到達年度以降の「既裁定者」は、物価の変動率(前年の全国消費者物価指数)で、4月から年金額を改定します。

2021年度の年金に適用される両者のデータを調べてみると、賃金の変動率は「-0.1%」で、物価の変動率は「0%」でした。

このように賃金の変動率が、物価の変動率より低い時は、例外的に新規裁定者か既裁定者かを問わず、賃金の変動率を優先するのです。

ただ2020年度までは、賃金の変動率を優先するといっても、マイナスまでは踏み込まなかったのです。

つまり前年度の金額からマイナスになるのではなく、前年度と同額が支給されます

しかし2016年に法改正が実施され、賃金の変動率を優先するというルールが厳格化されたので、2021年度からはマイナスまで踏み込むようになったのです。

そのため2021年度に支給される年金は、新規裁定者か既裁定者かを問わず、前年度より0.1%減額するという結果になったのです。

賃金や物価が上昇するとマクロ経済スライドが発動される

新型コロナウイルスにより景気が悪化しているため、賃金の変動率が物価の変動率より低く、かつ賃金の変動率がマイナスという状況は、今後も続く可能性があります。

そのため年金の減額は2021年度で終わらず、しばらくは続くと予想するのです。

ただ新型コロナウイルスのワクチンの接種が、数か月後に始まるため、景気が急速に回復し、賃金や物価の変動率が上昇するという、楽観的な予想もできます。

そうなると賃金や物価の変動率が上昇した分だけ、年金が増えそうな気がするのですが、微増か前年度と同額の可能性が高いと思います。

このように考える理由として、賃金や物価の変動率が上昇すると、財源の範囲内で給付水準を自動調整する「マクロ経済スライド」が、発動されてしまうからです。

実際にマクロ経済スライドが発動されると、賃金や物価の変動率から、「スライド調整率」が控除されます。

例えば2019度の年金に適用される改定率は、賃金の変動率が「+0.6%」で、物価の変動率が「+1.0%」でした

賃金の変動率が物価の変動率より低かったため、新規裁定者か既裁定者かを問わず、賃金の変動率の「+0.6%」が優先されたのですが、2019度に支給された年金は前年度より、「+0.1%」しか増額しなかったのです。

その理由としては「+0.6%」から、2019度のスライド調整率である「0.2%」と、過去から繰り越したスライド調整率の「0.3%」が控除されたため、「0.6%-0.2%-0.3%」により、改定率が「+0.1%」になったからです。

この先に賃金や物価の変動率が上昇すると、同じような状況になると推測されるので、景気の見通しが悲観的か楽観的かを問わず、年金減額の対策を考えた方が良いと思います。

70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務になる

2021年4月から70歳までの就業機会を確保するのが、企業の努力義務になります。

そのため各企業は、次のいずれかの「高年齢者就業確保措置」を講じるよう、努める必要があるのです。

・ 70 歳までの定年の引き上げ

・ 70 歳までの継続雇用制度(勤務延長制度、再雇用制度)の導入

・ 定年制の廃止

・ 業務委託契約を70歳まで締結できる制度の導入

・ 70歳まで「事業主が自ら実施する社会貢献事業」、または「事業主が委託や出資する団体が実施する社会貢献事業」に、従事できる制度の導入

これを受けて70歳まで、収入を得られるようになれば、年金の減額をカバーできるだけでなく、リタイア後に使う老後資金の準備ができます。

また65歳から70歳になるまでの間に、年金の減額対策になる次のような2つの選択肢を、実施しやすくなるのです。

厚生年金保険に加入しない時の選択肢:繰下げ受給

原則65歳になっている老齢基礎年金や老齢厚生年金の支給開始を、1か月繰下げる(遅くする)と、「繰下げ受給」の制度により、これらの金額が0.7%の割合で増えていきます

例えば繰下げできる上限の70歳から、老齢基礎年金や老齢厚生年金の受給を始めた場合には、「5年 × 12か月 × 0.7%」により、増額率は42%になります。

また2022年4月から繰下げできる上限が、75歳に引き上げされるため、最大の増額率も現在より倍増して、84%(10年 × 12か月 × 0.7%)になるのです。

ただ企業の努力義務になるのは、上記のように70歳までの就業機会の確保になるため、引き上げが実施された後も70歳までの範囲内で、繰下げした方が良いのです。

また例えば65歳以降に、業務委託などの雇用ではない契約形態で働くため、厚生年金保険に加入しない方は、次に紹介する在職定時改定より、繰下げ受給を選んだ方が良いと思います。

繰下げ受給を選んだ方が良い場合

厚生年金保険に加入する時の選択肢:在職定時改定

厚生年金保険は所定の加入要件を満たしていると、契約社員、パート、アルバイトなどの非正規雇用者であっても、70歳になるまで加入し、給与の金額に応じた保険料を納付します。

そのため厚生年金保険から支給される老齢厚生年金は、65歳以降も増えていくため、年金の減額対策になるのです。

ただ65歳以降に納付した厚生年金保険の保険料が、老齢厚生年金の金額に反映されるのは、退職して1か月が経った時、または70歳到達時になるため、退職しないで70歳まで働くと、なかなか年金額に反映されません

こういった欠点を軽減するため、「在職定時改定」が作られたので、2022年4月からは毎年10月に、直近1年間に納付した保険料を元にして、老齢厚生年金の金額が改定されるのです。

この制度が年金の減額対策になる理由としては、4月から賃金や物価の変動率によって、年金が減ったとしても、その後の10月まで待てば、減額した分が回復するからです。

また例えば65歳以降に、厚生年金保険の加入要件を満たす労働条件で働く方は、繰下げして年金の増額を待つより、65歳から受給して在職定時改定の増額を受けた方が良いと思います。

なお老齢基礎年金の支給開始だけを70歳まで繰下げ、老齢厚生年金は65歳から受給して、在職定時改定の増額を受けるというような、第3の選択肢も考えられるので、厚生年金保険に加入すると減額対策の選択肢が広がるのです。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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