葬儀が終わるとホッとできるのは束の間です。次に相続が待っています。
特に、借金などの「負の財産」が「もらえる財産」よりも多くある場合には「相続放棄」をしたほうがお金を節約できます。
相続放棄するには相続が発生して3か月以内に手続きしなければなりません。葬儀が終わったら、すぐに相続手続きの準備に取り掛かりましょう。
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目次
いらない・売れないお宝は寄付してお金を節約
貯金や現金は価値がはっきりとしているので相続割合にそって分けやすいと言えます。
一方で「古い掛け軸」や「誰が描いたかわからない絵画」そして「先祖代々の仏壇」など価値の分かりにくいものは相続しにくいものです。
特に、芸術品の類は素人目には判断できません。
価値の分かる相続人から「私はこの絵、あなたはその絵、お互い1枚ずつで平等よ」と言いくるめられてしまう可能性もあります。
ところが、価値の分かりにくい芸術品も立派な相続財産です。後になって「あっちの絵をもらえばよかった」と後悔することがないようにしましょう。
相続の場合、芸術品や骨とう品は時価で評価されます。1点の価格が5万円以下であればタンスやイスと同じように家具として扱われます。
それ以上の価値がある場合には鑑定士に「評価鑑定書」を書いてもらって相続財産に含めます。
しかし、中には「価値はあるだろうけれど売れないだろう」「相続税が高そう」と思われて誰も欲しがらない芸術品もあります。
そのようなときには寄付をしましょう。相続後に相続税の申告をする前に寄付をすれば相続税を支払う必要はありません。
芸術品がたくさん遺されている場合には「鑑定士による鑑定で入るお金が多くなる」可能性はあるのですが、品数が少ない場合には、鑑定料のほうが高くついてしまうことがあります。
「多少の価値はあるだろうけれど鑑定料のほうが高くなる」と思うならば寄付することで赤字を回避できるかもしれません。
上がりそうな株は売らずに相続できる
株が遺されていることもあります。相続が発生した時点で、きれいさっぱり売ってしまうこともできます。
しかし、「これから上がりそうな株だ」と思うのであれば、相続人で相談(協議)して株の引継ぎをしましょう。
株を全く知らない人には遺された株の価値が分かりません。「知らないからいらない」ではもったいない話です。
株が遺されていたら証券会社に残高証明書を請求しましょう。
残高証明書には
「相続が発生した日の最終価格」
「相続が発生した月の最終価格の平均」
「相続が発生した前月の最終価格の平均」
「相続が発生した前々月の最終価格の平均」
の中で最も低い価格が書かれます。
残高証明書に書かかれた価格を参考にして相続人で分けます。
金額が株の値動きのようにクルクルと動かずに示されているので株が苦手な人でも分かりやすいことでしょう。
株が苦手な人は、相続するための口座を開いて名義変更してから売ればよいのです。
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「出生から最期までの戸籍」は自分で取り寄せられる
相続につきものの「名義変更」にはさまざまな書類の提出が求められます。
中でも被相続人(相続財産を遺した人)の「出生から最期までの戸籍」は人によっては手間がかかるかもしれません。
戸籍集めを専門家に依頼すると戸籍取得の実費を含めて2万円以上するのが一般的です。しかし、戸籍集めを自分でするのは手間がかかっても難しいことではありません。
戸籍は本籍地の役所にあります。引っ越しを繰り返した人でも本籍地を1回も変えていなければ戸籍は1か所から取り寄せるだけで終了です。
何らかの理由で本籍地をコロコロと変えていたのであれば、最後の本籍地からスタートしてさかのぼる必要があります。
戸籍の取り寄せは簡単です。最初は最後の本籍地の役所に戸籍の請求しましょう。請求用紙は役所のホームページからダウンロードできます。
印刷して必要事項を記入したら返信用封筒と必要な印紙を同封して郵送します。
請求する戸籍に請求者の名前が書かれていない場合にはほかに必要な書類があります。
必要な書類は役所によって違いがあるため、申請前に電話で聞いてみるとよいことでしょう。
戸籍が届いたら、戸籍に書かれているひとつ前の本籍を確認します。次はひとつ前の本籍地の役所に戸籍の請求をします。
これを出生にたどりつくまで繰り返すだけです。自分で戸籍を取り寄せれば出費は戸籍代の数百円と郵送料だけです。
名義変更は相続税のように期限がないため時間と手間さえ惜しまなければ自分で取り寄せられるのです。
戸籍や登記という聞きなれない言葉を耳にすると「多少のお金がかかっても専門家にお願いしよう」と思うかもしれません。
しかし、役所にしても裁判所にしても「教えてください」と言えば詳しく教えてくれます。戸籍や住民票の知識は知っていて損はありません。
自分で取り寄せれば手数料を節約できるだけではなく、戸籍の知識を無料で教えてもらえるのです。
相続が発生すると名義変更や登記が多く発生します。すべてを専門家に依頼するのではなく、「不動産登記だけは司法書士に依頼しよう」と的を絞ることでお金は大きく節約できることでしょう。(執筆者:クリエイティブな節約家 式部 順子)