おひとりさま市場が活況のようです。
コロナ禍で「密」を避けるという側面もありますが、未婚率の増加や核家族化の影響を受けて、単独世帯は増加しています。
総務省によると、2040年には単独世帯の割合は約40%に達すると予測されています。
特に、65歳以上の単独世帯数は増加しています。
こんな事情も背景なのでしょう。
先日、ご相談にこられた女性Aさん(44歳)も、目下は利用できるサービスの増加でシングルライフを満喫しているということですが、やはり心配は老後だといいます。
このままでは老後が不安なのでなんとかしたいということでした。
老後のために今からできることを考えてみましょう。

目次
正社員として働いているAさんの場合
Aさんは、大学卒業後就職した会社で正社員として働き続けています。
このまま定年の60歳まで働き続け、以降は継続雇用で65歳まで働く予定です。
年収は、現在380万円で、60歳までは平均410万円の予定、その後は320万円くらいになりそうです。
老後は多くの人が公的年金を主な収入源として、退職一時金やそれまで貯めてきた貯蓄を取り崩して生活することになります。
そのため、まずは公的年金がいくらくらいもらえるのか、見通しを立てることで、老後への闇雲な不安から解放されるでしょう。
「人生100年時代」ということで、長い老後、お金が持つのか心配だという人が多いですが、公的年金は、たとえ何歳まで生きようが、亡くなるまで受け取れます。
ねんきん定期便で確認
まずは、毎年お誕生日の月に届く「ねんきん定期便」をご覧ください。
50歳以上の人は、これから働き方が変わらないという前提で、65歳以降に受け取れる年金額が記されています。
50歳未満の方は、これまで払った保険料に応じて、現時点で受け取れる額が記されています。
これから働き続けることで、受給できる年金額は増えていきます。

Aさんの年金見込み額
Aさんの場合は、「ねんきん定期便」から1階部分の基礎年金額が44万円、2階部分の厚生年金が38万円でした。
今後働き続けることで増える年金を含めると、年金額は約160万円の見込みです。
月額約13万4,000円です。
現在Aさんは、貯蓄を除いた生活費が19万円ほどですから、老後生活比率は、現役時代の約7割程度となりそうです。
将来の受給額は、「ねんきんネット」でおおよその金額をしることができますので、みなさんも1度確認してみてください。
受給額を増やすことも視野に
ただ、年金は、受給開始年齢を繰り下げたり(65歳以降に遅らせること)、65歳以降70歳まで、短時間でも厚生年金に加入して働くことによって受給額を増やすことができます。
「ねんきんネット」では、年金を受け取り始める年齢を遅らせると、金額がどう変動するかも確認できます。
現在、高齢者雇用安定法では高年齢者雇用確保措置として、
(1) 65歳まで定年引き上げ
(2) 65歳までの継続雇用制度の導入
(3) 定年制の廃止
のいずれかの実施が義務付けられています。
21年4月からは、高年齢者就業確保措置として70歳までの就業確保が努力義務となりました。
義務ではなく努力しましょうと企業に促しているということですが、70歳まで働くことができれば、老後の安定につながります。
Aさんが70歳まで働いた場合
仮に、Aさんが70歳まで働くことで、65歳から5年間、年金を繰り下げるとすると、42%増えます。
年金改正で22年4月からは、上限年齢が75歳までに引き上げられますので、増額率は最大84%になります。
Aさんたち1980年生まれ前後の人たちが65歳以降90歳まで生きる確率は、女性で約7割に上ります。
5人に1人は100歳まで生きると予想されています(厚生労働省「完全生命 表」「簡易生命表」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(2017年推計)」より試算)。
長く生きる可能性のある女性は、一生もらえる年金を繰り下げるのが1番の「保険」です。
70歳まで厚生年金制度に加入して働くことでさらに年金額が増えます。
長生きリスクに備えよう
そもそも公的年金は、長生きリスクをヘッジする「保険」です。
けがや病気(障害年金)、死亡(遺族年金)もカバーされます。
「公的年金保険」は、自分だけでは準備しきれないことを社会全体で支え合い備えていく制度です。
これからできることとして、なるべく長く働けるようにスキルアップや資格の取得、心身の健康にも努めたいものです。
「じぶん年金」を作りましょう
資産運用などの自助努力ももちろん大切です。
今の収入の中から一部を将来の自分に仕送りする、いわゆる「じぶん年金」を作ることです。
お金の置き場所は、税制優遇の大きいイデコ(個人型確定拠出年金)やつみたてNISA(小額投資非課税制度)などを優先的に使いましょう。
「人生100年時代」、老後の安心を作るなら、「長く働いて受け取れる公的年金をなるべく増やす」と「自助努力で資産形成をする」を両輪で進めましょう。(執筆者:CFP® 認定者 岩城 みずほ)