雇用保険制度は、失業した時のいわゆる失業保険(正式名称は「基本手当」)のイメージがありますが、それだけではありません。
今回、紹介する「教育訓練給付金制度」は1998年に創設された制度でご存じの方も多いとは思いますが、当時よりも制度内容が拡充されています。
今後のスキルアップの一助になる可能性もあることから、ぜひ確認しておきたい制度です。
目次
3種類の「教育訓練給付金制度」
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「教育訓練給付金制度」は、働く方の主体的な能力開発の取組みや、中長期的なキャリア形成を支援するため、教育訓練受講に支払った費用の一部を支給する制度です。
また、雇用保険の給付制度の1つで、
(2)「特定一般教育訓練給付金」
(3)「専門実践教育訓練給付金」
があります。それぞれに支給対象者や対象講座、給付額、さらには申請方法も異なります。
ただし、「給付が貰えるから受講しよう!」という考えではなかなか続きません。
そうではなく、「自分の学びたい分野ではどのような給付が受けられるのか?」で考えてみてください。
また、「あの時の講座は給付の対象だった」となっては後の祭りです。
何らかの講座を受講する際には、事前に確認しておきましょう。それでは、それぞれの制度の概略を見ていきます。
(1)「一般教育訓練給付金」
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支給対象者
・ 雇用保険の加入者期間(被保険者期間、支給要件期間)が3年以上(初めて支給を受ける時は当分の間は加入期間が1年以上)あること、または、加入者期間を満たす離職後1年以内である人
・ 前回の教育訓練給付金受給から3年以上経過している
などの要件を満たし、かつ厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講し修了した場合に支給されます。
支給額
教育訓練のために要した費用の2割(支給上限額10万円)が支給されます。
ただし、支給額が4,000円を超えない場合には支給対象外です。
対象となる講座(一例)
宅地建物取引士、社会保険労務士、行政書士、ファイナンシャル・プランニング技能士、介護福祉士、ケアマネジャー、福祉住環境コーディネーター、医療事務、介護事務、歯科助手、インテリアコーディネーター、旅行管理者、通関士、気象予報士、マンション管理士・管理業務主任者、第一種電気工事士、第二種電気工事士、危険物取扱者、電験三種、1級土木施工管理技士、2級土木施工管理技士、二級ボイラー技士、社会福祉士、保育士、ITパスポートなどです。
(2)「特定一般教育訓練給付金」
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支給対象者
雇用保険の加入期間(被保険者期間・支給要件期間)は、一般教育訓練給付金と同じです。
それに加えて、講座の受講開始1か月前までに訓練前キャリアコンサルティングを受けてジョブ・カードを作成し、ハローワークにおいて受給資格確認をすることが必要です。
支給額
教育訓練のために要した費用の4割(支給上限額20万円)が支給されます。
ただし、支給額が4,000円を超えない場合には支給対象外です。
対象となる講座(一例)
大型自動車第一種・第二種免許、中型自動車第一種・第二種免許、普通自動車第二種免許、玉掛け・フォークリフト運転、けん引免許、介護職員初任者研修、介護支援専門員実務研修、登録販売者、宅地建物取引士、社会保険労務士、税理士、行政書士、司法書士、弁理士、通関士、ファイナンシャル・プランニング技能士、自動車整備士、電気主任技術者など です。
※「一般教育訓練給付金」と「特定一般教育訓練給付金」の両方に記載されている講座が一部あります。
訓練前キャリアコンサルティングを受けてジョブ・カードを作成するなどの手続き要件も含めて「特定一般教育訓練給付金」の適用要件に満たした場合には「特定一般教育訓練給付金」の対象です。
対象とならない場合には「一般教育訓練給付金」の対象です。
(3)「専門実践教育訓練給付金」
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支給対象者
・ 雇用保険の加入者期間(被保険者期間、支給要件期間)が3年以上(初めて支給を受ける時は当分の間は加入期間が2年以上)あること、または、加入者期間を満たす離職後1年以内である人
・ 前回の教育訓練給付金受給から3年以上経過しているなどの要件を満たし、それに加えて講座の受講開始1か月前までに訓練前キャリアコンサルティングを受けてジョブ・カードを作成し、ハローワークにおいて受給資格確認をすること
・ 厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講し修了していること
上記を全て満たした場合に支給されます。
支給額
受講費用の5割(年間上限40万円。3年間で最大120万円)が支給されます。
専門実践教育訓練の修了後1年以内に目標として設定した資格を取得等し、雇用保険の加入者(被保険者)となる就職をした場合には、教育訓練経費の70%(年間上限56万円。3年間で最大168万円)で「専門実践教育訓練給付金」を再計算し、既支給分との差額が支給されます。
ただし、支給額が4,000円を超えない場合には支給対象外です。
対象となる講座(一例)
介護福祉士、看護師、美容師、歯科衛生士、保育士、調理師、社会福祉士、はり師、精神保健福祉士、准看護師、栄養士、柔道整復師、助産師、理容師、理学療法士、あん摩マッサージ指圧師、言語聴覚士、臨床工学技士、キャリアコンサルタント、歯科技工士などです。
制度の内容はハローワークまたは受講する学校に確認
最後に、受講しようと思う講座や自分自身はどの制度に該当するのか、どのような手続きや書類が必要なのかといったことについては、「教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座」検索システムやハローワーク インターネットサービスの「教育訓練給付制度」のページでも確認できます。
しかしながら、細かい要件もありますので、ハローワークまたは受講する学校に確認されるほうが確実です。
今は必要ないという場合でも、今後のスキルアップの際に利用できるかもしれません。その際には制度が変更になっていることもありますので「教育訓練給付金制度」のことだけでも頭の片隅に置いておきましょう。(執筆者:CFP、FP技能士1級 岡田 佳久)