「お金を上手に貯めるコツは△△」
これらはマネーに関する記事で良く見かける見出しです。
お金を増やす秘訣を語る記事には、いくつか似た特徴があります。
しかし銀行員としてお金ばかり見てきた私には
「そのとおり、賛成です」
というものがある一方で
「それはおっしゃる通りだけど、ちょっと無理があるのでは」
と違和感を抱いてしまうものもあります。
そこで今回は「お金が集まってくる人」の記事について、銀行員目線で感じることをお話しします。
また実際に私が見てきた例もお話ししますので、ぜひ参考にしてください。
目次
お金が集まってくる人とは
お金が集まる、お金が貯まる、というキーワードで私が関連記事を検索した結果、上位にヒットしたのは以下の3つです。
1. 目的別に口座を使い分けている
2. プロのアドバイスを活用している
3. お金が逃げない工夫をしている
ここから、この3つについて銀行員としての考えと、私が出会った人の例を紹介していきます。
1. 目的別に口座を使い分けている
お金が集まる人は、目的別に口座を作り、自己管理している。
教育資金、住宅資金、レジャー資金など通帳を分けることで、目標をもって楽しみながらお金を貯めることができる、という内容です。
銀行員はこう考えます
これには賛否、どちらとも言えません。
なぜかというと、計画倒れや自己管理ができなかった人を何人も見てきた銀行員としてはむずかしい問題なのです。
目的別に口座を使い分けるのは、人によって向き不向きがある、というのが私の意見です。
個人的には1つの口座にすべて集約したほうが良いと思いますし、多くても2つ(生活口座とプライベート口座)くらいがベターだと考えています。
【例1】口座を抱えきれなくなったAさん
冒頭のように、口座を分けていた女性(Aさんとします)がいました。
私が住宅ローン融資をした人の奥さんで、頻繁に来店されるので気になっていました。
ある日きっかけがありお話を聞いたところ、通帳を「生活費」「ローン返済用」「教育費」「レジャー」「それ以外」と5つも作っていいました。
家計簿をつけるのが億劫で、その代わりに目的別で通帳をいくつも分けたとのことでした。
しかし実際にはじめて見ると、給料日には口座への振り分けでATMを占領して悪戦苦闘、しまいには自己管理ができなくなり、(それだけが原因ではないのですが)最終的に住宅ローンが返せなくなってしまいました。
ATMで四苦八苦していたAさんは、私の目にはたくさんの通帳を両手で抱えきれず、困っているように見えました。
楽しく振り分けができるなら良策
いくつも通帳を作るところは一緒ですが、Aさんとは逆に楽しみながらお金を振り分けていました。
その人はパソコンで管理表を自作し、1週間ごとに記録を更新していました。
目的をもってお金を貯めて、それが実現できているのが張り合いとなり、楽しみながらできますとうれしそうに話されました。
やはり向き不向きということでしょうが、このように自分にとって苦にならない人には良策と言えるでしょう。
2. プロのアドバイスを活用している
こちらは、資産運用に知識や自信がないので銀行員や証券マン、あるいはFP(ファン案シャルプランナー)といった「お金のプロ」のアドバイスを、上手に自分のものとして活用できる人にはお金が集まってくる、という内容です。
銀行員はこう考えます
これには条件付きに賛成で、「アドバイスはアドバイスとして活用しながらも、最終的には自分の判断でできるなら」賛成です。
いっぽうその逆に、プロに任せっきりになるようならおすすめできません。
それはなぜかというと、あなたと対峙する金融のプロにはノルマや目的があり、自分の損得勘定で提案をしてくるからです。
もちろん程度の違いはありますが、たとえば銀行員なら自分のノルマ、自社のイチ押し商品を優先してくるでしょう。
そうなると、アドバイスも損得勘定に基づいたものであり、残念ながら上手に活用することは難しいと考えます。
なぜこういった結論になるかというと、私自身が銀行員として、上記のように自分の損得勘定抜きではアドバイスできなかったからです。
【例2】マイホーム資金を運用し、失敗したBさん
これは私の銀行であった事例です。
マイホーム資金として数百万円預金で貯めていたBさんは、「もっと有利に運用できる方法はないか」と私の同僚銀行員に相談しました。
その同僚は、リターンは見込めるいっぽうで元本が変動する可能性のある個人年金を提案し、Bさんはその通りに運用を始めました。
この個人年金は、10年経過すれば元本は確保されるタイプでしたので、運用がうまくいかなくても元本は戻ってくるはずでした。
ところがBさんの自宅新築が早まり、運用開始から5年後でお金が必要になったのです。
しかし個人年金は運用期間中で、元本も割り込んでいる状態でした。
もともと住宅資金を運用していたので、どうしてもそれに手を付けないと家を建てられないBさんは、泣く泣く元本を割り込んだまま解約しました。
幸いというべきか、損失は10万円程度で、なんとかBさんは家を建てることができました。
この事例では、そもそも提案にも問題があり、最後までかなり紛糾しました。
そもそも住宅を建てるという「目的と時期が決まっているお金」を、長期間拘束される商品に勧誘すべきではありません。
たとえ顧客自身の選択であっても、良く考えるよう止めるくらいが、提案する側に求められる姿勢だと思います。
同僚の事例とは言え、この話を聞いたとき、私は忸怩たる思いでした。
ちなみにこの行員は、その後も問題となる勧誘が重なり、最終的に退職したそうです。
冷静にアドバイスだけ利用できれば有効
私が提案したお客様の中には、うまくアドバイスだけを知識として吸収し、文字通り有効活用された人もいました。
その人は私が有力な見込み先として、何度も訪問して勧誘しました。
会うたびに社会情勢から相場動向、過去の金利推移などさまざまな情報を提供し、その都度話を聞いてくださり、ただなかなか成約には至りませんでした。
そんななある日、この人が証券会社に大金を送金しようと来店されました。
うかがったところ、開口一番
「これまでいろいろ役に立つ話をありがとう、おかげで良い商品が見つかったから証券会社で購入したよ、これも君のおかげだ」
私の勧誘は全くの徒労で終わったのですが、あまりにもさわやかにお礼を言われたので、不思議と悔しくはなかったことを覚えています。
このように、アドバイスを上手に活用できる人には有効と言えるでしょう。
3. お金が逃げない工夫をしている
こちらは、自己分析をしてその人なりにお金が逃げていかない工夫をしている人は、お金が貯められるという内容です。
・ 別口座にお金を貯めて、その通帳とカードは貸金庫に預ける
など、要は自分で自分のお金を使えないようにする方法です。
こちらについては賛成、それも大賛成です。
銀行員はこう考えます
「お金を貯めるなら、使わないことが1番」
これはあるお金持ちの人から聞いた言葉です。
とはいえこれはなかなか実現できない、いわば格言的な表現なのですが、それに近づける方法はあります。
それは、使わないのではなく、使えないようにしてしまうのです。
【例3】自分でがんじがらめにして結婚資金を貯めたCさん
結婚資金を、どうしても1年間で貯めたいサラリーマンのCさんがいました。
積立でも、預金ならいつか自分で解約することができるので、自分の性格を知っていたCさんは、ただの積み立てではなく財形預金にすることで、1年間で結婚資金を貯めることができました。
Cさんは毎月の給料から、彼にしては多い金額を財形預金で貯めることにしました。
Cさんの会社は、財形預金を引き出すときには支店長にお金の使いみちを説明して、承諾のハンコをもらわないと出金できないことになっていました。
「ちょっと必要で」など、なかなか支店長に言えず、そのおかげというか、Cさんは自分で自分をがんじがらめにして、なんとか結婚資金を貯めることができたのでした。
実はこのCさんは私です。
自分の性格からこの方法を選んだので、自信をもってオススメできます。
ここで失敗例がないのは、これが正解だと思うからです。
とは言っても生活費が足りなくなるほど無理したり、解約できないのでローンを借りたりする羽目になっては本末転倒です。
自分で自分を縛るにも、無理し過ぎないようバランスは考えてください。
お金は自分で引き寄せる
「お金は寂しがり屋だからお金を呼び寄せる」
「お金持ちには自然とお金が集まってくるものだ」
こういった表現を見かけることがあります。
しかしながら、お金持ちの人は自分でお金を引き寄せる努力をしているからそこ、お金が集まってくると考えます。
ここまで賛否両論を述べてきましたが、なにもしない人にお金は寄ってきません。
やはり自助努力が必要だということは、ぜひ皆さんにお伝えしたいです。(執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二)