厚生年金から支給される年金額を計算するに際しては「標準報酬月額」というものがあります。
厚生年金から支給される年金は大きく分けて老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金があり、それぞれの年金額を計算するにあたっては切り離して考えることができません。
今回は標準報酬月額とはどのようなものかを確認しましょう。
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目次
標準報酬月額とは
まず、「報酬」とは厚生年金保険法3条1項3号において次のように定義されています。
賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受ける全てのものをいう。
ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。
なお、健康保険法3条5項においても同趣旨で規定されています。
報酬月額(例えば基本給・通勤手当)を1等級から上限である32等級まで分け、その等級区分に該当する金額を標準報酬月額と呼びます。
標準報酬月額は年に1度見直すこととされており、これは、報酬と保険料が実態と合致しているか否かを検証する意味も含まれています。
保険料額の決定方法
標準報酬月額に保険料率を乗じたものが保険料となります。
厚生年金保険第1号被保険者(民間企業等)の保険料率は現在、上限に達しており、法律の変更がなければ同じ等級である限り保険料率の上昇はありません。
なお、会社員の場合は、原則として毎月の給与(賞与がある場合は賞与を支払う都度)から保険料を徴収することとしています。
老齢厚生年金の年金額算出方法
【平成15年3月まで】
平均標準報酬月額 × 7.125/1,000(生年月日に応じて読み替えあり) × 被保険者期間の月数
【平成15年4月以後】
平均標準報酬額 × 5.481/1,000(生年月日に応じて読み替えあり) × 被保険者期間の月数
平成15年3月までは賞与を年金額の計算の基礎としていませんでしたが、これは平成15年4月から「総報酬制」が導入されたことにより、賞与も年金額の基礎としたために、算出方法も変更となりました。
よって、平成15年3月までは「平均標準報酬月額」とし、平成15年4月以後は「平均標準報酬額」としています。
老齢厚生年金の額については受給権者がその権利を取得した月以後における被保険者であった期間はその計算の基礎としないとされています。
平成16年の法改正後、報酬比例部分の年金額と従前の年金額算定方法による報酬比例部分の年金額を比較して従前の計算式での額の方が高い場合は従前の額が保障されます。
障害厚生年金の年金額算出方法
老齢厚生年金と異なり乗率の読み替えがない点を除き、考え方としては同じです。
しかし、被保険者期間の月数が300月未満の場合は300月とみなして計算することとされます。
これは老齢を支給事由とする年金と異なり、必ずしも65歳から支給事由が発生するとは限らず、早期に障害を負った場合に被保険者期間が少ないゆえに年金額も低額となってしまうと社会保障としての機能が発揮しないことが予想されるためです。
老齢厚生年金と異なり「障害認定日」の属する「月後」における被保険者であった期間は、計算の基礎とされません。
老齢厚生年金の場合は権利を取得した「月以後」は計算の基礎としないのに対して障害厚生年金の場合は「月後」となり、障害厚生年金の方が被保険者期間を1か月分多く反映されると言えます。
これは、障害を負った場合、1か月でも多く被保険者期間を反映させるという意図を感じます。
遺族厚生年金の年金額算出方法
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原則としては老齢厚生年金と同じ考え方となりますが、厳密には短期要件か長期要件かによって計算方法が異なります。
短期要件と長期要件で共通する部分は亡くなった方の老齢厚生年金の3/4ということです。
相違する部分として短期要件の場合は障害厚生年金と同様に被保険者期間が300月未満の場合は「300月みなし」がありますが、長期要件の場合は「300月みなし」がありません。
また、乗率の読み替えは、短期要件では行うのに対して長期要件では行われません。
短期要件か長期要件かは以下の場合で判断されます
1. 厚生年金保険の被保険者が死亡したとき
2. 被保険者であった者が被保険者の資格を喪失した後に、被保険者であった間に初診日がる傷病により当該初診日から起算して5年を経過する日前に死亡したとき
3. 障害等級の1級または2級に該当する障害の状態にある障害厚生年金の受給絵権者が死亡したとき
4. 老齢厚生年金の受給権者(保険料納付済期間、保険料免除期間、及び合算対象期間を合わせた期間が25年以上である場合に限る)または、保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合わせた期間が25年以上である者が死亡したとき
1~3を短期要件とし、4が長期要件となります。
健康保険よりも標準報酬月額の上限幅が低い
標準報酬月額は健康保険も年金も設けられていますが、範囲は健康保険の方が上限も下限も広く設定されています。
年金は健康保険と異なり、将来的に継続して給付をしていく必要があることから、あまりにも高い標準報酬月額が設定できてしまうと将来的な財政的な圧迫も無視できなくなる点は想像に難くありません。
よって、特に年金の場合では健康保険よりも標準報酬月額の上限幅が低い点をおさえておきましょう。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)