所得税の確定申告のうち還付申告の割合は約60%と、申告書を提出した半数以上の人は還付金を受け取っています。
しかし、還付金をもらう予定で確定申告書を作成したつもりが、計算すると納税申告になっていたという経験をした人もいるかもしれません。
そこで今回は、会社員の方が確定申告をする際に還付申告ではなく納税申告になってしまうケースを解説します。

目次
ケース1. 会社の給料以外の収入を得ていた
会社員の方は年末調整をしていれば、基本的に確定申告をする必要はありません。
しかし、不動産所得や仮想通貨の利益など、会社からの給料以外の所得があった場合には、その所得に対する所得税は確定申告により計算して納税しなければなりません。
所得税は所得金額に応じて税率が上がる仕組みなので、複数の所得を合計すると所得税の税率が高くなることもあるため、医療費控除や住宅ローン控除を適用しても所得が増えたことで税金が還付されなかったり、反対に納税申告になってしまうケースもあるのです。
ケース2. 複数の会社から給料をもらっている
給与所得は、給与収入から給与所得控除額を差し引くため、給与収入と給与所得の金額は異なります。
複数の会社から給料をもらっている人の場合、会社ごとの給与収入から給与所得控除を差し引いていることもあります。
しかし、給与所得控除額は、年間の給与収入の金額によって適用される控除額が変わるため、複数の会社から給料を得ている場合には確定申告をしないと正しい給与所得控除額は計算できません。
過剰に給与所得控除を適用していても確定申告手続きをすれば問題ありませんが、その場合には納税申告になる可能性が高いと言えます。

ケース3. 所得控除や税額控除の適用漏れがある
確定申告書は、納税者が年間の所得や控除額を記載して所得税の算出するため、所得控除や税額控除の適用漏れがあると多くの税金を納めることになりかねません。
また、年末調整で配偶者控除や扶養控除を適用していた場合でも、確定申告書を提出する際には年末調整の内容を再度記載する必要があります。
申告書への記載漏れがあると、その控除額は適用されませんので注意しましょう。
なお、配偶者控除・扶養控除などを判断するタイミングは、その年の12月31日です。
年末調整をした時点で扶養控除対象の所得以内だったとしても、年末時点で扶養控除の対象となる所得の上限を超えていれば、扶養控除は適用できなくなります。
申告内容に疑問点があれば税務署に確認する
私が税務署職員として確定申告対応をしていた際、所得控除の記載漏れは意外と多く見受けられました。
税務署は、年末調整で適用していた所得控除が確定申告書に記載されていなかったとしても、指摘しないこともあります。
申告書を提出した後に申告内容の違いに気づいたら、提出した申告書の控えを持参して税務署にお尋ねください。
なお、所得控除漏れや計算誤りにより、所得税を余計に納めていた場合、更正の請求書を提出することで納め過ぎた税金が戻ってきます。
更正の請求書を提出できる期間は申告期限から5年以内なので、忘れないうちに手続きしてください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)