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葬儀費用を準備するための保険に「加入しなくても良い」と思う3つの理由

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葬儀費用を準備するための保険に「加入しなくても良い」と思う3つの理由

テレビや新聞を見ていると、葬儀費用を準備するための保険、いわゆる「葬儀保険」の広告を、よく見かけるという印象があります。

どのような保険会社が販売しているのかについて調べてみたら、「少額短期保険業者」が力を入れている分野だとわかりました。

少額短期保険業者とは

「保険料が掛け捨て」

「保険金額が少額」

「保険期間(保障を受けられる期間)が短期」

の保険のみを引受ける、2006年4月に誕生した新しい形態の保険会社です。

これが販売する保険のメリットとしては、一般の保険会社が販売する保険より、保険金額が少額になるため、保険料が全般的に安いのです。

また一般の保険会社が販売する保険より、シンプルなものが多く、保障内容を理解しやすいため、保険金の請求忘れが起きにくいのです。

一方で保険料が掛け捨てになるため、貯蓄性がないという点は、デメリットかもしれません。

ただ自動車保険に加入する時と同じように、「お金で必要な保障を買う」と捉えるなら、あまりデメリットに感じないと思います。

もう葬儀保険は 必要ないかも

節税効果と契約者を保護する仕組みに違いがある

少額短期保険業者が販売する保険に加入する際は、保険料、保険金額、保険期間以外にも、注意する点があります

それは例えば一般の保険会社が販売する保険と違って、年末調整や確定申告の際に、生命保険料控除などを受けられない点です。

つまり少額短期保険業者が販売する保険に加入して、保険料を支払ったとしても、節税効果を期待できません

また保険会社が破綻した時には、破綻会社の保険契約を引き継ぐ保険会社に対して、「保険契約者保護機構」が資金援助などを行うため、保破した後も保険契約を継続できる場合が多いのです。

それに対して少額短期保険業者は、保険契約者保護機構の対象になっていないため、このような仕組みでの保護を受けられません

この点はデメリットだと思うのですが、少額短期保険業者は業務を開始する時に最低でも1,000万円の供託金を、法務局に供託しております。

また保険料収入の増加に応じて、供託金を積み増しているため、契約者の保護を図る仕組みが、まったくないわけではないのです。

こういった特徴のある少額短期保険業者は、葬儀保険の販売に力を入れているのですが、次のような3つの理由により、無理して加入する必要はないと思うのです。

【理由1】「預貯金の仮払い制度」を利用すれば良い

家族の誰かが亡くなった場合、その方の預貯金口座は凍結されるため、遺産分割が成立するまで、出金や振り込みなどができなくなります。

一方で葬儀保険から支払われる保険金は、保険金受取人の固有の財産という取り扱いになるため、原則として遺産分割の対象になりません。

そのため遺産分割が成立していなくても、保険金受取人は単独で保険金の請求手続きができます

また葬儀保険は保険金の請求手続きを簡潔にしたり、保険金の支払いを早くしたりして、保険金受取人の利便性の向上を図っているのです。

こういったメリットがあるため、葬儀保険に加入していれば、葬儀費用を必要としている方が、確実にお金を受け取れるだけでなく、手早くお金を受け取れるのです。

ですから預貯金より葬儀保険が優位になるのですが、葬儀保険の優位性は以前より弱くなっていると思います。

その理由として「預貯金の仮払い制度」が創設され、2019年7月から施行されているため、1つの金融機関につき150万円までなら、遺産分割が成立する前に出金できるからです。

ただ現状ではこの制度を利用しても、出金できるまでに1~2週間くらいかかる場合が多いようです。

そのため葬儀保険の方が手早く、お金を受け取れるかもしれませんが、昔ほど大きな差はなくなっているため、無理して葬儀保険に加入する必要はないと思うのです。

なお葬儀保険から支払われる保険金は、契約形態によっては「500万円 × 法定相続人の数」まで、相続税が非課税になるため、税制面では預貯金より優位になる場合があります

【理由2】公的な給付金(年金)や貸付制度がある

国民健康保険に加入する家族が亡くなった場合には、3万円~7万円くらいの葬祭費が支給されます。

また原則として75歳から加入する後期高齢者医療からは、3万円~7万円くらいの葬祭費が支給されます。

亡くなった方と生計を同じくしていた一定の家族であれば、こういった葬儀に関する給付金の他に、未支給年金を受給できる場合があるのです。

原則として65歳から支給される老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)は、偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)の15日に、その月の前2か月分が支給されるため、例えば4月には2月分と3月分が支給されます。

また老齢年金は亡くなった日の属する月分まで支給されるため、たとえ4月1日に亡くなったとしても、4月分は支給されます

そのため4月1日から年金支給日までに亡くなった場合には、3か月(2月、3月、4月)分の老齢年金が、未支給年金になるのです。

この未支給年金に加えて、亡くなった方が所定の要件を満たしていた場合には、遺族年金(遺族基礎年金、遺族厚生年金など)を受給できる可能性があります

これらの公的な給付金(年金)を合わせると、けっこうな金額になるため、無理して葬儀保険に加入する必要はないと思うのです。

もちろん請求手続きをしたら、すぐに受給できるわけではないので、葬儀費用を立て替えるだけの、金銭的な余裕がない場合には、社会福祉協議会などが実施している公的な貸付制度を利用するのです。

なぜこういった公的な貸付制度を、優先した方が良いのかというと、民間の金融機関が実施しているカードローンやフリーローンより、かなり金利が低いうえに、連帯保証人がいる場合には、無利子でお金を借りられるからです。

【理由3】葬儀費用を賄えるだけの死亡保障を持っている

死亡保障を持っている場合が多い

亡くなった方が加入していた保険会社を知らないなどの理由により、保険金受取人が請求手続きをしていないため、未払いになっている保険金があります。

これは「宙に浮く保険金」などと呼ばれており、2014年頃に新聞などがよく取り上げておりました。

いくつもの保険会社で、この問題を解決するための調査が実施されたのですが、大手のある保険会社は、90歳以上の約1万1,000人の契約者を対象にして、調査を実施したのです。

これにより約2,000人は既に亡くなっているのに、1人あたり平均で約300万円の保険金が支払われていないとわかりました。

また日本人の生命保険の世帯加入率は非常に高く、60歳以上でも8割くらいはあります。

こういったデータから考えると特に男性は、葬儀費用の全国平均(約200万円)を超える死亡保障を、すでに持っている可能性があるため、無理して葬儀保険に加入する必要はないと思うのです。

もし葬儀保険に加入するなら、こういった自分がすでに持っている死亡保障を確認し、足りない分だけにするのです。

また葬儀保険に加入したのなら、宙に浮く保険金にならないようにするため、加入した保険会社の名前などを、家族に伝えておいた方が良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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