還付金が受け取れると思い確定申告書を提出したけど、実際に還付された金額が少なかったり、還付金額がなかった経験をしたことのある人もいるかもしれません。
還付金が発生しないのは、申告内容の誤り以外に3つのケースが想定されます。
今回は還付金が戻らない3パターンについて解説します。

目次
パターン(1) 先に納めている源泉徴収税額がない
還付申告は、納め過ぎた税金を戻してもらう手続きです。
たとえば所得税の納税額7万円の人が、会社の給料から事前に10万円の所得税が天引きされていれば、差額の3万円を多く納めていたことになります。
年末調整をしていない会社員の方なら、その3万円は確定申告手続きをすることで還付されます。
しかし事前に支払っている所得税がない場合、還付される所得税はありません。
そのため確定申告で住宅ローン控除などを適用したとしても、所得税の還付金額がゼロのケースもあります。
パターン(2) 年末調整ですでに還付金を受け取っている
年末調整は、会社が本人の代わりに所得税の精算をしてくれる手続きです。
自営業や年末調整をしていない人は、確定申告で税金の精算をするため、申告すれば多くの税金の還付が受けられるケースもあります。
年末調整では給与所得から、配偶者控除や扶養控除、生命保険控除や住宅ローン控除(適用2年目以降)などを計算し、実際に納める所得税額を算出します。
事前に納めた所得税が多かった場合、年末調整を行えば納め過ぎた所得税は還付されるため、確定申告をする必要はないです。
一方で、年末調整ですでに所得税の計算が完了している人は、年末調整と同じ内容の申告をしたとしても所得税の精算が終わっているので還付金は発生しません。
パターン(3) 所得控除・税額控除の適用漏れ
私が税務署職員時代、確定申告相談会場の相談対応をしていた時によく見受けられたのが、所得控除や税額控除の適用漏れです。
確定申告書には、扶養控除や生命保険控除などを漏れなく記載する必要があり、1つでも記載漏れがあれば正しい申告書にはなりません。
扶養控除などの適用漏れがあれば、医療費控除を適用するために確定申告書を作成しても、所得控除の合計金額が少なくなってしまい、その結果還付申告ではなく納税申告になることも考えられます。
また年末調整でいろいろな控除を適用して計算していても、確定申告書を提出する際には年末調整で適用した控除も漏れなく記載する必要があります。
もし還付金額が見込みよりも少ない場合や、納税申告になった際は、申告内容の計算誤りや控除の適用漏れがないか確認してください。
2か所以上の会社から給料をもらっている場合は要注意
所得税は1年間の所得に対する税金です。
2か所以上の会社から給料をもらっている場合、確定申告により所得税の精算をします。
収入を合算した場合に還付申告になるか、納税申告になるかは、事前に納めている所得税額によって変わります。
そのため複数の会社からの収入がある人は、1度所得税の申告書を作成して、還付・納税申告のどちらになるか確かめてください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)