厚生労働省の「2019年雇用均等基本調査」によると、男性の育休取得率は7.48%、そしてその中で1週間以内の短期での取得が7割占めているいう依然低い状態が続いています。
女性の育休取得は進んでいるのに、なぜでしょう。
やはり、職場の風土が関係しているのではと政府は考えて、育児・介護休業法を改正しました。
果たして、男性の育休取得は進むのでしょうか?
そこで、男性にとって取得しやすくなったのかどうかを改正育児・介護休業法についてみていきましょう。

目次
改正育児・介護休業法
改正育児・介護休業法は、2021年6月3日に成立しました。
この改正に合わせて、政府は男性の育休取得率を2025年までに30%への引き上げ目標を掲げています。
どれほど取得しやすくなったのかを男性の育休にスポットをあててその改正点を確認していきます。
参照:厚生労働省(pdf)
1. 出生時の育児休業の新設
出産時及び生まれたばかりの子どもは手がかかり、配偶者の負担が大きいです。
そこで出産日から8週間の間に合計4週間の育児休業が取得できるような制度が新設されました。
女性の産休制度に合わせているため、「男性版産休制度」とも呼ばれています。
4週間の育休は、2回に分けて取得することが可能で、「あまり長く仕事を休むことは難しい」という職場でも取得しやすくなります。
もちろん、休業中は育児休業給付金が雇用保険から支給されます。
施行予定は、まだ確定ではありませんが、早くて2022年10月からです。
2. 育児休業取得促進の義務化
男性も女性と同じように育児休業を取得することは、以前から可能でした。
しかし職場環境により、なかなか取得が難しいのが現状でした。
そこで、男性社員が気兼ねなく育児休業を取得できるように職場環境を整備することを、企業の義務としました。
具体的には、企業は配偶者が妊娠している男性社員に、まずは育児休業の制度について説明をし、さらに育児休業を取得するかどうかを個別に意思確認することが義務となります。
一般的に男性社員の多くは「うちの会社では、育児休業は取得できない」とはなからあきらめていて、制度を知らない社員がほとんどでした。
ところが、法改正により、企業は育児休業制度についてきちんと説明をします。
さらに取得について個別に確認するため、男性社員にとっては「法律的にこの制度は労働者の権利なんだ」と取得することにためらいがなくなるだろうと思われます。
実は、ここが重要で、個別の意思確認で取得させないように圧力をかけた場合や、取得した社員の人事評価を悪くした場合等は、マタハラに該当します。
会社の制度に対する誠意を十分確認する必要があります。
施行は、2022年4月からです。
3. 育児休業取得率の公表
2023年4月から、社員が1万1人以上の大企業においては、男性社員の育休取得率の公表が義務となります。
まずは、大企業から育休の推進を進めていき、それとともに男性の育休に対する知識の普及を図られます。
社会全体に男性の育休に対する認識が広まっていけば、自然と制度の普及が遅れている中小企業もイメージアップ等で積極的に制度を進めていくと思われます。

4. 出生時の育休も含めて育休の申請期限が2週間前までに
これまでは、育休を取得する場合、「1か月前」までに会社に申請をすることが必要でした。
改正後は「2週間前」に変更されます。
申請期限が短くなったことにより、男性にとっては職場の状況を見極めて申請できるので、助かるのではないでしょうか。
5. 通常の育児休業が2回の分割可能に
従来からの育児休業も2回に分けての分割が可能となります。
したがって出産時の育休と合わせて最大4回の分割ができますので、仕事の繁閑等に合わせることで自分なりに柔軟に活用することができるようになります。
回数と期間の組み合わせを十分考えて、職場にはなるべく迷惑をかけないように計画を立てることが重要です。
施行は出産時の育休と同じで早くて2022年10月からです。
なにより事前の職場に対する準備が必要不可欠
今回の法改正は、男性の育休取得が義務化されることではありません。
取得しやすい職場環境を形成することに主眼が置かれています。
そのため、企業が男性社員に対して育休が取得できることを説明しそれを推進し、さらに本人が取得するかどうかの意思確認までを義務付けました。
ただし、いくら義務付けをしても、職場の風土というものはなかなか変わらないものです。
そこで、職場の風土が変わらないのであれば、自分が率先して変えていこうという気概が育休を取得するためには必要です。
まずは、職場において、配偶者が妊娠をしたことを話し、そして育休を取得すること宣言するのです。
上司にはしっかり話しておきましょう。
そうすることで、仕事の段取りを上司と計画的に考えることができ、職場の同僚にも協力をお願いできます。
育休を取得するためには、なにより事前の職場に対する準備が必要不可欠です。(執筆者:特定社会保険労務士、1級FP技能士 菅田 芳恵)