保険金・給付金というものは受取人からの請求がなければ支払われません。保険会社は受取人からの請求があって、初めて保険事故を認識できるからです。
保険金・給付金の不払いや未払いは過去に何度か問題視されてきました。
その都度、個々の保険会社は防止策などの新しい制度を作って不払いや未払いをなくすように努めてきましたが、個々の保険会社の対応だけでは難しい面がありました。
しかし、今月1日から生命保険業界全体を網羅できる画期的な制度がスタートしました。その制度についてお話しします。
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目次
高齢化による未請求件数の増加が懸念
未請求問題については、
・ 受取人が保険加入を知らないケース
に分かれるものと思われます。どちらも主な原因については高齢化があると想定できます。
受取人が死亡しているケース
受取人の変更手続きをしなくてはなりませんが、契約者が高齢になってしまっていてそれもままならない、または、契約者・受取人双方が死亡してしまっていることなどが考えられます。
受取人が保険加入を知らないケース
契約者が死亡もしくは認知症になってしまい加入していたことさえ知らない、または、保険証券がみつからずに加入保険会社が分からないなどということが考えられます。
どの保険会社も年1回はハガキや封書などで契約内容の確認は行っているものの、上記のようなケースでは完全に防止できるものではありません。
また、契約者側の関係者からの問い合わせについても、加入の存在すら知らずに加入状況や保険会社もわからないという状態では手続き等の煩雑さは並大抵ではありません(金融庁に免許登録されている生命保険会社数は42社もあります)。
今後ますます高齢者が増え併せて認知症者も増える状況では、未請求件数が増加することは容易に想像できますのでその対策が求められてきました。
生命保険業界全体を網羅できる制度が開始
前述の懸念から生命保険業界全体での対応が求められておりましたが、その制度がいよいよ始まりました。それが、今月1日から始まった「生命保険契約照会制度」です。
この制度は、生命保険協会がお客様に代わって生命保険会社各社に生命保険契約の有無を確認する制度です。(下図参照)
災害時・平時を問わず利用でき、さらに死亡だけではなく認知判断能力が低下している場合にも対象であるという画期的な制度です。
オンライン・郵送どちらでも照会を申し出ることができます。ただし、照会できるのは生命保険会社各社における契約有無のみです。
契約の存在が判明した場合、契約内容の確認や保険金・給付金の請求については、当該契約に基く権利を有する方から別途、生命保険会社に直接連絡していただく必要があります。
制度を利用するにあたって押さえるべき内容
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この制度を利用されるにあたっては、下記の点を押さえておきましょう。
制度の利用事由
本人が次の状態に該当しており、生命保険契約の有無が分からない場合
<平時>
(1) 死亡
(2) 認知判断能力が低下 ※1
<災害時>※2
(3) 死亡もしくは行方不明
※1 認知判断能力の低下・障害が見られることについて、生命保険協会所定の診断書による医師の診断がなされることが必要です。
※2 災害救助法が適用された地域等において被災し、家屋等の流失または焼失等により生命保険契約に関する請求が困難な場合とします。
制度を利用できる方
それぞれの場合において、以下の方からの照会を受け付けます。
<平時>
1. 照会対象者が死亡している場合
(1) 照会対象者の法定相続人
(2) 照会対象者の法定相続人の法定代理人または任意代理人 ※3
(3) 照会対象者の遺言執行人
2. 照会対象者の認知判断能力が低下している場合
(1) 照会対象者の法定代理人または任意後見制度に基づく任意代理人
(2) 照会対象者の任意代理人((1) において定める任意後見制度に基づく任意代理人を除きます。)
ただし、法定代理人または任意後見制度に基づく任意代理人が選任されている場合には、この規定で定める任意代理人からの照会申出は受け付けません。※3
(3) 照会対象者の3親等内の親族およびその任意代理人 ※3
※3 任意代理人の範囲は、弁護士、司法書士その他照会対象者の財産管理を適切に行うために照会対象者にかかる生命保険契約の有無を照会するにふさわしいと本会が認めた者とします。
<災害時>
1. 照会対象者が災害により死亡もしくは行方不明となっている場合
(1) 照会対象者の配偶者、親、子または兄弟姉妹
(2) 照会対象者の配偶者、親、子または兄弟姉妹の法定代理人または任意代理人
制度の利用料
1回の照会につき3,000(税込)です。支払方法は次の通りです(ただし、災害時には利用料できません)。
・ コンビニエンス払い
その他の詳細については、一般社団法人生命保険協会ホームページ内の「生命保険契約照会制度のご案内」をご参照ください。
故人の生命保険加入の有無を調べるのに利用価値の高い制度
この制度はまだ始まったばかりで全く認知されていませんが、これまで故人の生命保険加入の有無などを調べるのにご苦労された方にしてみれば、非常に利用価値の高い制度だと言えます。
この記事で制度の存在を知っていただき、保険金・給付金の未請求の減少に少しでも役立てば幸いです。
せっかく支払ってきた保険料が無駄にならないこと、また何より故人の思いが無事に果たせることを願います。
なお、保険金請求時効3年が経過していても大丈夫なケースがありますので、あきらめないようにしましょう。(執筆者:CFP認定者、1級FP技能士 小木曽 浩司)