誕生月(1日生まれは誕生月の前月)に郵送される、ねんきん定期便の中を見てみると、第1号被保険者や第3号被保険者といった用語が、よく記載されております。
これは国民年金の被保険者の種別を示しており、種別ごとに保険料の納付方法などが違うのですが、具体的には次のようになります。
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目次
第1号被保険者(自営業者、農林漁業者、学生、失業者など)
日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の方で、第2号被保険者や第3号被保険者にならない方は原則として、国民年金の第1号被保険者になります。
この第1号被保険者は現金(納付書)、口座振替、クレジットカードなどにより、自分で保険料を納付するのです。
第2号被保険者(会社員、公務員など)
厚生年金保険に加入する会社員や公務員の方は、20歳以上60歳未満だけでなく、20歳未満や60歳以上の方も、国民年金の第2号被保険者になります。
つまり国民年金と厚生年金保険という二つの公的年金に、同時加入しているため、国民年金から支給される「老齢基礎年金」に加えて、厚生年金保険から支給される「老齢厚生年金」を受給できるのです。
ただ公的年金の保険料の納付済期間や、免除期間などを合わせた期間が、原則として10年以上あるため、老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている方については、65歳以降は第2号被保険者になりません。
また給与から天引きされた厚生年金保険の保険料の一部は、国民年金の保険料として使われているため、第2号被保険者の国民年金の保険料は、給与からの天引きになるのです。
第3号被保険者(専業主婦、専業主夫など)
第2号被保険者に扶養されている、年収が原則として130万円未満の、20歳以上60歳未満の配偶者は、第2号被保険者の勤務先を通じて、所定の手続きをすると、国民年金の第3号被保険者になります。
この第3号被保険者の国民年金の保険料は、独身や共働きを含めた第2号被保険者の、給与から天引きされた厚生年金保険の保険料で賄われているのです。
そのため第3号被保険者は保険料を納付する必要がないうえに、第3号被保険者であった期間は、国民年金の保険料の納付済期間になるのです。
納めすぎた国民年金の保険料が還付されるケース
第1号被保険者が納付する国民年金の保険料は、2年前納、1年前納、6か月前納を利用すると、一定額が割引になります。
この前納割引制度を使って保険料を納付した後などに、国民年金の被保険者の種別が変わると、保険料が還付される場合があるのです。
その理由としては保険料の納めすぎになるからですが、保険料が還付されるのは次のようなケースになります。
(1) 第1号被保険者 → 第2号被保険者
2021年4月時点で第1号被保険者だったため、1年分の国民年金の保険料を前納したとします。
この方が同年8月1日に就職して、厚生年金保険の保険料を納付する第2号被保険者になった場合、8月以降の国民年金の保険料は還付されます。
(2) 第1号被保険者 → 第2号被保険者 → 第3号被保険者
(1) の方が入社日と同月の8月25日に退職し、その後は第3号被保険者になり、当面は就職しなかったとします。
こういったケースで8月分の厚生年金保険の保険料が、給与から天引きされていた場合、これが勤務先から還付されます。
また自分で所定の手続きをすると、4月に前納した8月以降の国民年金の保険料も還付されます。
この理由として同一月内に、種別の変更が2回以上あった場合、その月は最後の種別の被保険者(この例では第3号被保険者)であった月とみなされるからです。
(3) 第1号被保険者 → 第3号被保険者
厚生年金保険の保険料を納付する第2号被保険者だった方が、2021年6月末に退職して、専業主婦になったとします。
この方は第3号被保険者になれる要件を満たしていたのですが、1月~6月までの合計収入が140万円だったため、第3号被保険者にはなれないと思い、同年12月まで第1号被保険者として、国民年金の保険料を納付しました。
2022年1月に入ってから第3号被保険者になるための手続きを、夫の勤務先にお願いしたところ、退職した時点まで遡って、第3号被保険者と認められたのです。
こういったケースでは第1号被保険者ではなかったことになるので、2021年7月から12月までの国民年金の保険料が還付されます。
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徴収権や還付を受ける権利の時効は2年
国民年金の保険料の納付期限は原則として、翌月の末日になるため、例えば2021年4月分の保険料は、同年5月31日までに納付する必要があります。
ただ国民年金法の第102条第4項には、次のように記載されているため、徴収権が時効を迎えるまでの、納付期限から2年以内なら、まだ保険料を納付できるのです。
「保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利及び死亡一時金を受ける権利は、これらを行使することができる時から二年を経過したときは、時効によつて消滅する。」(国民年金法の第102条第4項)
例えば2021年4月分の国民年金の保険料は、徴収権の時効が2023年5月31日になるため、この日までなら納付できます。
また第102条第4項には、徴収金の還付を受ける権利や、死亡一時金を受ける権利も、2年が経過すると時効によって消滅すると記載されているため、国民年金の被保険者にとって2年は、とても重要な期間なのです。
なお年金給付を受ける権利などの時効は5年になるため、将来に年金を受給する段階になったら、2年よりも5年を意識する必要があります。
納めすぎた国民年金の保険料が還付されないケース
(1)~(3) に該当した場合には、納めすぎた国民年金の保険料が還付されるのですが、全額が還付されないケースがあります。
それは例えば徴収権が時効を迎える2年以内に、保険料の未納期間がある場合です。
こういったケースでは納めすぎた国民年金の保険料を、未納期間の保険料に充当し、その後に余った分を還付します。
そのため未納期間が多い場合には、保険料があまり戻ってこない可能性があるのです。
また納めすぎた国民年金の保険料が、まったく戻ってこないケースもあります。
それは例えば還付請求に必要な書類が届いた日の翌日から、2年が経過したため、国民年金の保険料の還付を受ける権利が、時効を迎えてしまった場合です。
年金事務所は還付請求に必要となる、「国民年金保険料還付請求書」という書類を、原則として普通郵便で送付します。
こういった事情があるため、本人の元にきちんと届かず、いつの間にか時効を迎えてしまったケースがあるのです。
また本人の元に届いても、中身を確認するのを忘れてしまい、時効を迎えてしまったケースもあります。
ですから年金事務所から届いた書類は、きちんと中身を確認すると共に、なかなか書類が届かなかった場合には、住所地の年金事務所に連絡してみましょう。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)