親と離れて暮らす子供夫婦からの「実家じまい」のご相談が徐々に増えてきております。
親がまだご健在の方やお亡くなりになられた方などタイミングはまちまちですが、新型コロナ禍でその動きが加速する可能性があります。
今回は「実家じまい」についてお話したいと思います。
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目次
「実家じまい」は相続放棄をすればいいと考えていませんか?
「実家じまい」の話をしますと、「うちは実家の土地・建物以外にたいした資産はないから相続放棄をすればいいんじゃないの?」という方がいらっしゃいます。
しかし、その考えは大きな間違いです。
なぜなら、相続放棄をすれば簡単に逃げられるわけではないからです。
相続放棄をしても次のような問題が新たに起こります。
もし、相続の内容や相続放棄をしたことを知らせなければ後順位の方が迷惑を被り、身内揉めへと発展してしまう可能性があります。(そもそも後順位の方とお付き合いが残っている状況かどうかもわからない)
【問題2】相続人全員が相続放棄をしても、相続財産管理人を立てない限り、管理責任は問われ続ける。
【問題3】相続財産管理人を立てるにも手間と費用がそれなりにかかる(処分が困難、費用が支払われない可能性のある物件の相続財産管理人はなかなかみつからない)
こういった問題が起こり得ることをご理解ください。
相続放棄をしても新たな問題があなたに降りかかるのです。
「実家じまい」のタイミングは人それぞれ
「実家じまい」のタイミングは、いつがいいのか?というご質問を受けますが、そのタイミングは状況次第ですので、人それぞれです。
・ 親との関係性(親と話せる状況かどうかなど)
・ 親の考え(実家を離れてもいいのかどうかなど)
まずは、これらの状況がクリアで方向性が親と合致しなければ、「実家じまい」の話を前向きに進めるのは難しいでしょう。
親がその気にならなくて悩んでいる子供夫婦は結構いらっしゃいます。
親が健在で相談にみえる場合の多くは、健康に自信が無くなる事象があったとか、ご病気になられて不安になられたとかのきっかけがありました。
まだまだ今の親世代の理解はそんなに進んでいないということでしょう。
今後、相続手続きや空家を放置できる状況では無くなります
これまでは、相続手続きに期限がありませんでしたので、相続登記も行われずに空家のまま放置するということも建物の状況がよほどでなければできました。
しかし、近年の空家率上昇に伴う空家問題化によりその状況は難しくなってきております。
・ 「相続登記の義務化」が2024年を目途に施行見込み
とますます法整備が進んできている状況です。
相続手続きは、相続人間の関係性に問題があるとなかなか進まず、家裁調停でも多くの件数を占めております。
生前には問題がないと思ってみえた方が「蓋を開けたら難題が」ということが多々ありましたので、できれば親御さんがご健在のうちに話をしておくのがベストでしょう。
「実家じまい」の問題はタイミングだけでなく、どういった形でどのように行うのかなど、検討しなければならないことがさまざまあります。
その検討結果によっては、親や子供夫婦のライフプランに大きな変化が伴うこともあります。
また「実家じまい」には、ご仏壇やお墓の問題や遺産分割についても検討せざるを得ないことも考えられます。
できるのであれば親がご健在の早めの対応、複雑なケースでは専門家に相談し進めることもご検討ください。(執筆者:CFP認定者、1級FP技能士 小木曽 浩司)