銀行員による投資初心者や高齢者の人への勧誘トラブルは後を絶ちません。
銀行員のセールストークの手の内を知れば、主導権を握らせることなく、自分に有利な情報だけ手に入れることも可能です。
ここからの説明は、私が実際に銀行の研修で学んだセールストークをもとにしています。
銀行が目指しているのは、あくまで投資や運用商品の成約です。
しかも限られた時間のなかで、どのように有効な会話を使い成約までこぎ着けるかに重点が置かれています。
そこで、効率的かつ確実性を追求した4つのステップでセールストークは進んでいきます。
これは私の勤務する銀行のケースをもとにしています。すべての金融機関に当てはまるわけではありません。
目次
銀行のセールストーク:4つのステップ
1. 共感と親近感:相手の「ふところ」に入り込む
2. 問題提起:危機感をあおる
3. 解決策の提案:「解決にはこれしかない」と必然性を持たせる
4. 退路を断つ:「クロージング」
1. 共感と親近感:相手の「ふところ」に入り込む
相手が来店されたならその理由を、こちらからセールスの電話をした場合なら、取引に対するお礼などを申し上げて、会話のきっかけにします。
しかし、ここで相手に逃げられるなら深追いはしません。
最初の会話(ファーストコンタクト)から拒否反応を示す相手は、深追いしても良い結果にはならないからです。
呼びかけに答えてくれたら脈があるので、
・ お客様を名字で呼ぶ
・ なれなれしすぎない間合いで、ときには冗談も交えてなごませる
など、とにかく明るく元気に、スマイルで、好感度を与え、相手の緊張を解いていきます。
2.問題提起:危機感を掘り起こすキーワード
挨拶から始まる導入部に付き合ってくれた人は、時間がある、あるいはセールスしやすい人になるわけで、ここで目的に引き込むことになります。
「ところで」「話は変わりますが」「そうそう」など話題の転換が入るのが特徴です。
ここでのポイントは危機感をあおる発言を挟むことです。
「現在は定期預金の金利も低いですよね」などと相手の危機感を掘り起こすキーワードが重要になってきます。
3.解決策の提案:「解決にはこれしかない」と必然性を持たせる
危機感をあおるのは、提案に結び付けるためです。
ですから相手により、それぞれしっくりとくる危機感を掘り起こす必要があります。
たとえば高齢者なら、子供やお孫さんにお金を残したいと考えているかも知れないので、
と本題に入っていきます。
4.退路を断つ:「クロージング」
ここではことわる理由を考えさせない話法が重要になります。
このあたりで使う決め台詞は
「皆様に提案させていただいております」
「ぜひおすすめです」
などがよく使われます。
セールストークを知り自衛する

銀行員の手の内と狙いを知ることで、主導権を握らせないことが大事です。
主導権を持って聞けるなら、銀行員の商品説明も無駄にはならないでしょう。
たとえば運用提案を専門にしている銀行員達は、日夜投資に関わる情報収集に余念がありません。
顧客への勧誘に役立てようと、日々新聞やテレビ、ネットでさまざまな知識を得ています。
また、投資信託会社や証券会社、保険会社などその道のプロから定期的に商品知識、マーケット知識などを学んでいます。
銀行員から勧誘を受けるということは、投資・運用に役立つ情報を聞き出すことができる絶好の機会です。
勧誘に付き合っても主導権を握られていなければ、いつでも退席することができるでしょう。
銀行員セールストークの手の内を知れば、上手に利用できます。
相手の話を一方的に聞くのではなく、しっかりと自分の意思を持ち、大切な資産の運用に挑戦してください。(執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二)