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健康保険の「任意継続被保険者制度」の改正 退職時等の健康保険選択を計算例と共に解説

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健康保険の「任意継続被保険者制度」の改正 退職時等の健康保険選択を計算例と共に解説

すでにご経験された方もいらっしゃると思いますが、「退職時等に健康保険をどれにしたらいいか問題」について、「任意継続被保険者制度」の改正もこの1月にありましたのでそれを加味して、具体的は保険料計算を交えて解説させていただきます。

「任意継続被保険者制度」の改正

健康保険の任意継続保険者制度と改正内容について

健康保険の「任意継続被保険者制度」とは、退職してからもそれまで加入していた会社の健康保険にそのまま継続して加入できる制度のことです。

ただし、任意継続するには条件を満たす必要がありますし、最大2年間の加入という制限がありますので、その点にはご注意してください。

この制度の一部がこの1月から改正されたのです。

おもな改正内容は、下記になります。

任意継続を途中で辞められるようになりました

任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を保険者に申し出て受理された日の属する月の翌月1日に任意継続被保険者の資格が喪失します。

これまではルール上、任意継続を選択すると基本的に2年間その健康保険に加入し続けなければならなかったのです。

保険料を支払わないなどの強制的に辞める手段はありましたが、それがルール上認められました。

任意継続の保険料の計算方法等を健康保険組合である程度決められるように
なりました

任意継続被保険者の保険料の算定基礎は、「資格喪失時の標準報酬月額」又は「任意継続被保険者が属する保険者の管掌する全被保険者の平均の標準報酬月額」のいずれか少ない額となっていました。

ここに健康保険組合が規約で定めることにより、「資格喪失時の標準報酬月額」又は「当該健康保険組合における全被保険者の平均標準報酬月額を超え、資格喪失時の標準報酬月額未満の範囲内において規約で定める額」を当該健康保険組合の任意継続被保険者の保険料算定基礎とすることも付け加えられました。

なお、上記の範囲内であれば、例えば、標準報酬月額を多段階で設定するなど、組合の裁量により設定することも可能となりました。

退職時等に健康保険をどれにするかの選択肢は3つ

退職してすぐに、次の会社が決まってみえる方以外は、健康保険の選択肢は下記3つになります。

(1) 自営業者などが加入する国民健康保険等に加入する

(2) これまでの会社の健康保険に任意継続で加入する

(3) 親や配偶者の扶養に入ってその健康保険に加入する

金銭負担の観点からみれば、条件を満たして(3) ができるのであれば迷う必要はあまりないでしょう。

この場合は、金銭負担も無ければ、親や配偶者の保険料が増えることもないからです。

問題になるのは、(1) か (2) のどちらかを選択することになった時になるのではないでしょうか。

では、(1) と (2) をどう比較するのかを解説していきます。

(1) と (2) のそれぞれの保険料計算はこうなります

(1) 国民健康保険料の計算は概ね、下記になります。

自治体によって結構違いがありますので、正確にはお住まいの自治体のHP等でご確認ください。

保険料 = 医療分 + 後期高齢者医療分 + 介護分※ の合計

医療分・後期高齢者医療分・介護分※はそれぞれ、所得割、均等割、平等割、(資産割)の3区分もしくは、4区分(自治体により資産割があるかないか)から計算されています。

【具体例】

保険料率を下記とします。(資産割なし)


※介護分については40~64歳の方が、介護保険の保険料として納付する分です。

注)国民健康保険料は世帯で計算。均等割は人数分を上記の金額にかける。

注)所得割の計算は、基準総所得金額×上記の料率です。

注)調整額、特例軽減額等は考慮せず。

【計算例】

※介護分なし

(前年年収)500万円

(基準総所得金額)313万円

内訳 500万円-144万円(給与所得控除)-43万円(住民税基礎控除)

(保険料)313万円×(5.95+2.22)% + (2万1,400+7,500) + (2万5,500+8,900)

=約31.9万円(年間)

注)計算が面倒であれば、国民健康保険料の概算金額は、居住地の市区町村の健康保険課
などで確認できるほか、市区町村のサイトで自動計算できることもあります。

(2) 協会けんぽ 健康保険料(被保険者負担分)の計算は、

(退職時年収) 500万円 月給31.25万円 賞与62.5万円(1回分)年2回

社会保険 標準報酬月額23等級 32万円 被保険者負担は全国平均5%と設定

(保険料:被保険者負担分)32万円×5%×12か月+62.5万円×5%×2回=約25.5万円(年間)

これに任意継続保険の場合は、会社負担分も上乗せになりますから上記の金額の倍の
約51万円(年間)の負担になります

あと、この計算以外に「任意継続被保険者が属する保険者の管掌する全被保険者の平均の
標準報酬月額」が32万円より少なければそちらで計算します。

注)今回の改定により、組合健保の場合、規約で定められているときには、そちらの算定基礎額で
計算することになります。

最終的にどう選択すればいいのか?

保険料だけで比較して判断するなら上記計算で (1) と(2) の安いほうを選択すればいいでしょう。

ですが、保険料以外の違いがあるので悩ましいところです。

例えば、国民健康保険は、保険料の減免申請ができる場合がありますので該当した場合は又、違った判断にもなり得ます。

任意継続保険の場合は、原則2年間保険料は変わりませんが、給付については出産手当金と傷病手当金以外は従来の給付がそのまま受けられます。

組合健保などで給付内容等が手厚い場合などは判断が分かれるでしょう。

さらに、今回の改定により任意継続を途中で辞められることになったため、当初任意継続で加入して途中から国民健康保険に切り替えるという選択肢も公然にできることになりました。

前年年収がないもしくは、著しく低い場合はこの方法がいいでしょう。

今後の収入状況を予測して、個別に保険料、給付内容等を吟味して総合判断するしかないというのが結論です。

「なんだ、結局、明確な回答はないのか」とお𠮟りを受けそうですが、それだけ保険料の計算においても、給付内容においても個別要素で差が出すぎてしまうということなのでご容赦ください。(執筆者:CFP認定者、1級FP技能士 小木曽 浩司)

《小木曽 浩司》
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執筆者:CFP認定者、1級FP技能士 小木曽 浩司 小木曽 浩司

リップ ラボ 代表 1969年生まれ。大学卒業後、新卒で大手住宅メーカーに入社。約10年間、戸建住宅や賃貸住宅の営業に従事。その後、生損保乗合代理店に転職し、生命保険を使った企業の決算対策や退職金準備などを提案・営業する。そして、平成18年(2006年)6月にリップ ラボ(独立系FP事務所 兼 生損保乗合代理店)を開業し、独立する。現在は、生命保険・損害保険・住宅(不動産)・住宅ローンをひとつの窓口で、トータルにご相談に乗らせていただいております。また、専門家のネットワークを構築し、税金や相続、登記などの相談の窓口にもなっております。 <保有資格>:CFP認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、住宅ローンアドバイザー、ライフ・コンサルタント、損害保険プランナー 寄稿者にメッセージを送る

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