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株価の下落が続いているのに、年金積立金の運用損が話題にならない理由

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株価の下落が続いているのに、年金積立金の運用損が話題にならない理由

公的年金(国民年金、厚生年金保険)の財源は、次のような3種類に分かれております。

(1) 保険料収入

現役世代が納付した公的年金の保険料の大部分は、各人が将来に受け取るためにどこかに積立されているのではなく現在の公的年金の受給者に対して年金として分配されます。

そのため保険料は公的年金にとって収入であり、これが財源に占める割合は、長期的な平均で見ると7割くらいになるため、公的年金の財源のほとんどは、現役世代が納付した保険料になるのです。

(2) 国庫負担

公的年金は他の社会保障制度と同じように、国庫負担(国の税金)も財源になっているのです。

国庫負担が財源に占める割合は、長期的な平均で見ると2割くらいになります。

(3) 年金積立金の元本と運用益の取り崩し

現役世代が納付した公的年金の保険料は、すべてを公的年金の受給者に分配しているのではなく、一部を年金積立金に回しているのです。

その理由としては少子高齢化などによって、保険料収入や国庫負担で財源を確保するのが難しくなった時に、年金積立金の元本や運用益を取り崩して、財源不足を穴埋めするためです。

年金積立金の取り崩しが財源に占める割合は、長期的な平均で見ると1割くらいになるため、他の財源を補助するような役割になります。

株価下落しているのに、 年金積立金の運用損は なぜ話題にならないの?

年金積立金の運用は国内債券の割合が減っている

年金積立金は2001年度から、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が市場運用しております。

こういった運用によって、取り崩せる金額を増やすとともに、年金積立金の延命を図っているのです。

ただ年金積立金の運用損が多くなると、財源としての役割を果たすのが難しくなるため、日本国債などの国内債券に対して、6割くらいの資産を配分した、安全性の高い運用を行ってきました。

これが2014年10月からは、次のような資産配分に変更されたため、国内か外国かを問わず、株式の割合が増えたのです。

・国内債券:「60%」から「35%」に減少

・国内株式:「12%」から「25%」に増加

・外国債券:「11%」から「15%」に増加

・外国株式:「12%」から「25%」に増加

・短期資産:「5%」から「0%」に減少

また2020年4月からは、次のような現在の資産配分に変更されたため、外国債券の割合が増えたのです。

・国内債券:「35%」から「25%」に減少

・国内株式:「25%」を維持

・外国債券:「15%」から「25%」に増加

・外国株式:「25%」を維持

いずれの変更についても、国内債券の割合が減っているため、

「金利低下による国内債券の利回りの低下を、他の資産で補おう」

という意図が感じられます。

ただ国内株式の割合が増加したのは、「株価を上昇させることによって内閣支持率を引き上げしたい」と考えていた、安倍元総理の影響もあったようです。

株価下落

外国債券が年金積立金の運用損を抑えている

2014年10月からは株式の割合が増えたため、年金積立金の運用成績は株価に左右されやすくなりました。

また株価が下落する局面では、四半期ごとの運用成績において、過去最大の運用損を記録したことが何度もあったのです。

そのたびにマスコミや野党は、安倍元総理を始めとする政府関係者を、厳しく批判したため、年金積立金の運用損が話題になったのです。

しかし2022年に入ってからは、世界各国の中央銀行による金融引き締めの影響などにより、株価が下落しているにもかかわらず、年金積立金の運用損は話題になっておりません

この理由が知りたいと思い、GPIFのウェブサイトの中にある、「2022年度第1四半期運用状況(速報)」を見たところ、2022年度の第1四半期(4~6月)の運用成績は、-1.91%になるようです。

やはり株価の下落を受けて、運用損は発生していたのですが、それほど大きなマイナスではなかったため、マスコミや野党は批判できなかったのだと思います。

また資産ごとの運用成績を見てみると、次のような結果になっておりました。

・国内債券:-1.31%

・国内株式:-3.68%

・外国債券:+2.71%

・外国株式:-5.36%

最近の急激な円安を受けて、外貨建て資産の価値が上昇しているため、外国債券だけは運用成績がプラスになりました。

これに加えて2020年4月からは上記のように、外国債券の割合を増やしていたため、年金積立金の運用損が抑えられたようです。

なお株式は国内か外国かを問わず、運用成績はマイナスになりましたが、意外にも国内の方がマイナス幅は小さかったのです。

こういった結果を見ていると、

「卵は一つのカゴに盛るな(値動きや性質の異なる複数の資産に分散して投資しよう)」

という格言の正しさを、改めて実感するのです。

年金積立金と同じような運用ができる4資産均等型

投資信託から生じた利益(売却益、分配金)に対しては、20.315%の税金(所得税、住民税、復興特別所得税の合計)が課税されます。

一方でつみたてNISA口座を通じて、投資信託を購入した場合には、年間40万円までの積立投資から生じた利益が、最長で20年間に渡って非課税になるのです。

またつみたてNISA口座を通じて購入できる、次のような4つの投資信託は、年金積立金と同じような資産配分(4つの資産に25%ずつ均等配分)になります。

  • eMAXISバランス(4資産均等型)
  • JP4資産均等バランス
  • つみたて4資産均等バランス
  • <購入・換金手数料なし>ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)

こういった債券が含まれたバランスファンドは、株式のみを投資対象にした投資信託より、基準価格(投資信託の価格)の上昇が緩やかになりやすいため、売却益は少なくなります。

しかし株価が下落する局面では債券の存在によって、基準価格の下落が緩やかになりやすいため、投資信託の含み損に不安を感じている方は、検討してみる価値があると思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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