令和4年4月1日から、日本では民法の改正により成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
これによって、自分の意思で様々な契約ができるようになりした。
たとえば、クレジットカード、各種ローン、携帯電話、アパートの賃貸など、ですが、このなかには株式投資も含まれます。
その他、一般NISAやつみたてNISAについての年齢制限は、2023年1月から18歳以上となります。
ここでは、株式投資に関する知識を蓄えておくために必要な、
- 株式についての簡単な仕組み
- 最低限抑えておきたい銘柄選定
- 必要な企業の業績内容
- 基本的な株式指標
などについて分かり易く解説します。
目次
株式の簡単なしくみ
株式とは、企業がモノを生産・販売またはサービスを提供するなどの事業活動を行っていくために必要なものは、お金です。
企業が継続的に発展、成長するためには、新しい工場や設備の購入、あるいは営業所などの拠点を設ける必要がありますが、これにも多額のお金がかかります。
企業が儲けてきた利益だけでは足りない場合は、外部からそのお金を集めます。
これを資金調達といいます。また、こういった企業を株式会社と呼びます。
株式会社の資金調達方法
- 銀行などからの借入
- 社債などを発行
- 株式を発行
など主に3つの方法があります。
このうち、1. 銀行からの借入や2. 社債の発行などは、銀行や社債の購入者にいずれ返済しなければならない借金なので企業にとって避けたい方法です。
3つ目は株式の発行です。
株式とは、大口の投資家や一般の個人投資家などから資金を集めるために発行する証券(以下:株券)のことをいいます。
この方法で集めた資金は、企業にとって返済する義務がなく企業の資産となるため自己資本(株主資本)とよばれています。
上場会社と非上場会社
株式会社には、発行した株券を証券取引所において自由に売買する会社と発行した株券を売買しない会社がありますが、前者を上場会社、後者を非上場会社とよびます。
株式市場には2つの役割がある
株式市場には、
- 上場会社が証券会社の仲介によって新たに株式を発行するための市場(発行市場)
- 発行済みの株式を自由に売買する市場(流通市場)
の2つがあります。
株式投資はこの流通市場において取引が行われます。
株主の主な権利
株式を買った人は、株主と呼ばれ、その企業の所有者の一人となります。
株主の主な権利については、株主総会に出席して議決に参加できることや配当を受取ることなどがあります。
流通市場での基本的な売買取引はどうやって行うのか?
まず、株主は証券会社に注文をだします。
次に、注文を受けた証券会社は証券取引所に発注し、証券取引所は株式の売買を行います、売買が成立すると、証券会社にその結果が報告され、更に証券会社は株主にその結果が報告されます。
日本国内の株式市場
現在は、
- 東京証券取引所
- 福岡証券取引所
- 名古屋証券取引所
- 札幌証券取引所
など4か所にあります。
このうち、東京証券取引所には、
- プライム
- スタンダード
- グロース
- Tokyo Pro Market(プロ投資家向け)
の4つの市場が開設されています。
これら市場は、企業規模の程度や成長性の高い新興企業向け等に区分されています。
売買注文のしくみ
株の売買注文は、証券会社の窓口で直接注文するほか、電話や口座登録済みのネットやスマホ上でもできます。
注文の際、銘柄、売り、買いの区分、株数、値段(株価)などです。
値段については、取引条件をつけることができます。
代表的なのは、値段を指定する「指値」と相場の成り行きに任せる「成行き」注文などです。
株式の取引単位は?
これは、2018年10月以降、100株単位での取引に統一されています。
取引において最低限必要となる株数のことを単元株といいますが、「100株でもちょっと手が出ない」という人には、単元株未満の10分の1で購入できるミニ株投資もあります。
ネット証券などは1株から買えるものもあります。
株式市場の取引時間は?
東京証券取引所の場合、売買(立会い)は、午前9時から11時30分の前場と午後12時30分から3時の後場までの時間に取引が行われます。
受け渡し日は?
これは、売り買いの代金を決済する日のことですが、売買成立日(約定日)を含めて3営業日です。
売買代金の計算と税金
買付代金は、
で計算されます。
そのうち、約定代金は取引が成立した株価に株数を掛け算した金額です。
委託手数料は消費税が掛かりますが、証券会社および取引方法によっても異なります。
株の売却によって利益がでた場合や株式配当金についても所得税が掛かります。
計算は売付代金から買付代金を差引いた額または受取配当金に20.315%を掛算した金額です。
同一銘柄を複数回買付けした場合は総平均法に準ずる計算をして買付代金をだします。
株式取引を始めるための証券会社選びと口座の開設
証券会社には、大きく分けて野村証券、SMBC日興証券、大和証券、みずほ証券などの店舗型証券とSBI証券、楽天証券、マネックス証券、カブコム証券などのネット証券があります。
証券会社の選択については、手数料の安さを重視するのならネット証券、運用相談サービスを重視するのならコンサルティング機能が充実している店舗型証券がお勧めです。
複数の証券会社の口座をもつのもありです。
株式投資が初めての場合は、まず、証券会社を選んで口座開設を行います。
開設にともなう手数料は無料です。
口座の種類には特定口座、一般口座、NISA口座などがあります。
特定口座には、源泉徴収アリと源泉徴収ナシがあります。
源泉徴収アリは、証券会社が取引で発生した損益(受取配当金も含む)と税金を計算して投資家本人に代わり納税までしてくれるため、本人の確定申告は原則不要です。
この方法は確定申告の手間を省けるため一番多く選択されています。
源泉徴収ナシは、損益計算や税金計算については源泉徴収アリと同じですが、20万円以上の利益が出た場合は確定申告や納税は投資家本人が行う必要があります。
ただし、20万円以下の利益の場合でも住民税の申告は原則必要になりますので、利益の額に拘わらず確定申告(住民税の申告も含まれる)をするか市区町村に住民税の申告をするかの選択をしなければなりません。
一般口座は、投資家本人が損益を計算して確定申告の必要があります。
NISA口座は、毎年一定額の範囲内で購入した株式・投資信託・ETF(上場投資信託)などを売却した利益や配当金に対して税金(20.315%:所得税・住民税・復興特別税)がかかりません。
したがって、この口座に関しては確定申告が不要です。
1年単位で変更可能な各種口座
口座の選択については、それぞれメリット・ディメリットがありますが、1年単位(その年の始めの取引開始前まで)で変更が可能です。
所得額、投資額、投資の知識や経験などに応じて決めることをお勧めします。
株式投資を行う前に準備すべきことは?
株式投資において準備しておくことは、売買したい銘柄(株式の場合は企業名)を選ぶことです。
どんなことに視点をおいて判断するかですが、それは投資スタイルと株式指標などです。
投資スタイルは短期投資または長期投資
短期投資は、株式銘柄を数秒から1週間程度の間で売買を繰り返し小さな投資効果を積み上げていく手法です。
これは、チャートやテクニカル分析など可なり高度な技術や知識が要求されることから上級者向きです。
一方、長期投資は、投資対象の株式銘柄を長期間に亘り、保有し、大きな運用成果を目的とした手法で、主な投資判断のツールは、技術面において、短期投資のようなチャートやテクニカル分析などの専門的な知識はあまり必要なく、企業の基本的な財務データなどのファンダメンタルズ分析などを基に的確な投資判断を目指します。
相場全体が急落しても慌てて損切りをしなくて済む、などの利点もあります。
分散投資でリスクを軽減
1つの銘柄に投資資源を集中させるのではなく異なる業種や銘柄を選択してリスク分散を図ることもポイントです。
最低おさえておきたい企業の業績内容と基本的な株式指標
投資に必要な基本的な知識について簡単に触れておきます。
まず、売買したい銘柄の選定や的確な投資判断を行うためには、
- 企業の事業活動
- 経営方針
- 事業計画
などの事業内容および財務および業績状況、それを基とした投資指標のいくつかを
- 株主通信
- 月刊誌
- 会社四季報
- 証券会社のHP
などの情報媒体を活用し、掴んでおくことが大事です。
事業内容や業績面において留意すべきポイントをいくつか挙げると
・売上高・営業利益・純利益などは好調を継続しているか
・経営計画、新しい開発計画、機械や建物等の設備投資などは利益に繋がる内容か
・借入金などの負債総額は前期と比べ増えていないか
など、調べられる範囲で把握しておくことです。
次に、投資指標において注視すべき項目をいくつか挙げると、
【PBR(株価純資産倍率)】
割安株を判定する代表的な指標の一つで長期投資向き、1倍以下が銘柄選択の目安で、株価上昇の余地を判断できる指標
【PER(株価収益率)】
成長株を判定する代表的な指標の一つで、純利益に対して株価水準が割安か割高かを判断する指標で、15倍程度が平均値
【配当利回り】
1株当たりの年間配当金額を現時点の株価で割った指標ですが、実際は購入株価で割った方が現実的
【配当性向】
営業活動で得た純利益のうちいくら株主への配当に充てたか、株主重視をみる指標
【ROE(株主資本利益率)】
株主が出資した資金を企業が効率よく使って経営を行い、いくらの利益を上げたかを判断する指標
など、これらの指標が好調に推移しているかをチェックすることです。
株式投資を始めたいと考えている人で年齢がまだ18歳に達していない場合は、実践に備え株式をエアーで取引してみてはどうでしょうか。
その際にシミュレーションする銘柄は、良く知っている身近な企業を選んでみるのも良いかもしれません。(執筆者:CFP、1級FP技能士 小林 仁志)