被扶養者の年収要件には「130万円未満」であることという要件があります。
この中には、例えばパート収入や年金収入、失業保険も含まれてしまいます。
そこで、退職金をもらった場合はどうなるのでしょうか。
今回は、退職金の被扶養者の130万円要件について解説します。
目次
被扶養者に課される2つの年収要件
【被保険者と同一世帯の場合】
年収が130万円未満(60歳以上または障害年金を受けられる程度の障害を有する場合は180万円未満)であり、かつ、被保険者の年収の2分の1未満であることです。
【被保険者と別世帯の場合】
年収が130万円未満(60歳以上または障害年金を受けられる程度の障害を有する場合は180万円未満)であり、かつ、被保険者からの仕送り等による援助額よりも被扶養者の収入額が少ない場合には、被扶養者となります。
退職金は含まれるのか?
端的には一時的な収入であることは明らかですので、含めて考えません。
他に、不動産を売却したことによる一時的な収入や恒常的な収入とならないものは含めて考える必要はありません。
退職金は扶養の「130万円要件」に含めないだけでなく、失業保険の給付額を算定する際の基礎額にも含まれません。
扶養の130万円要件の考え方
被扶養者の過去、現時点での収入と収入見込みを今後の年収見込みとして判断します。
例えば6月末で退社をし、7月から扶養に入ろうと思ったが、既に年収130万円を超えている(例えば月収30万円の方)ということは一般的に起こり得ます。
この方の場合は退社というライフスタイルが180度変わる事実が確認できるので、7月以降の収入見込みを元に認定が行われます。
扶養の注意点
近年は子供とは別世帯と言うケースは少なくありません。
別世帯の子供の扶養に入るとした場合、客観的に仕送り等の状況を証明する資料を提出する必要があります。
この場合、手渡しで行っている場合、客観的な証明が難しいと言えます。
他方、銀行振り込みであれば振込通知書が出力可能ですので、扶養申請時に備えて保管しておくことが有用です。
注意点として
影響範囲は極めて大きいと言えます。
原則国内居住要件
2020年4月施行の改正健康保険法により、被扶養者は原則として「日本国内に住所を有する者または外国において留学をする学生その他厚生労働省令で定める者」という部分が追加されています。
退職金を原資とした短期的な海外旅行は住民票がなくならないので、この追加された要件には抵触しません。
この要件が問題になるケースの具体例としては外国人労働者を雇用して、両親を扶養したいがまだ母国に残っているというケースが考えられます。
本要件の追加された背景にはやはり健康保険の不適切使用問題が挙げられます。
海外療養ですと療養費請求等の確認までに多くの時間と労力を要します。
我が国の健康保険の財源も無限にあるわけではないので、時代の背景に合わせた法改正と言えます。
扶養に入る節約メリット
扶養の年収130万円未満要件を整理するにあたっては、失業保険や遺族年金などの非課税所得であっても定期的な収入源は「含めて」考えること。
退職金や不動産売却に伴う短期的な収入源は「含めずに」考えること。
残業等で一時的に130万円を超えてしまっても、今年だけであることが明らかである場合は直ちに扶養の認定から除外されるのではありません。
色々な論点が絡み合ってくるため難しく考えられることがありますが、扶養に入ることで保険料の納付が必要なくなるメリットも無視できないので、1つずつ内容をおさえていきましょう。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)